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【書評・要約】ハウ・トゥ アート・シンキング

今回は若宮和男さんの『ハウ・トゥ アート・シンキング』を紹介しようと思います。

この本はタイトルや構成が非常に面白いものになっていますので、気になった方はこの記事だけでなく本も読んでみてください。

結論を一言で

アートシンキングとは今の時代に必要な、ちがいを生み出す思考法だ

ただ、この本に結論らしい結論はないので、強いて言えばということになります。以下本書からの引用を交えて解説します。

「おなじ」と「ちがい」

今の時代は「ちがい」が必要と書きましたが、少し前までは「同じ」が大切でした。それは、高度経済成長といわれる時代です。人口が増え、常に供給が足りないため作れば売れるような時代です。著者はこれを「工場」パラダイムと呼んでいます。

工場では「おなじ」が価値 です。たくさん おなじ製品 をつくれるのがよい工場であり、一方で「ちがい」が生まれるとそれは不良品 とされ、欠陥として扱われます。

しかし今の時代は違います。人口は増えず、需要はある程度満たされて多様化しています。だからイノベーションが大事とか言われているのですが、ともかく作れば売れる時代は終わり、「おなじ」に価値を感じなくなってきたのです。著者はこれを「アート」パラダイムと呼んでいます。

「工場」パラダイムとはまったく反対に、「アート」パラダイムでは「ちがいが価値で、おなじは悪」 なのです。

アートで同じだったらパクリと言われてしまいますからね。

「おなじ」の「工場」パラダイムから、市場の飽和と情報・モノの過剰によって「ちがい」の「アート」パラダイムにシフトしている、というのが今の時代に必要だといえる理由、背景です。


箱ティッシュになるな

「ちがい」が必要な例として、本書ではこんな質問があります。以下の引用文について、実際に考えてみてください。

確認はせずに、記憶だけで答えてください。  
Q1:いまあなたが使っているスマートフォンはなんですか? (       )     
またそのメーカー名は? (       )  
Q2:いまあなたの部屋で使っている箱ティッシュはなんですか? (       )     
またそのメーカー名は? (       )

Q1は自信をもって答えられる反面、Q2についてはほとんどの人が答えられないと思います。スマホもティッシュも同じくらい必要なのにここまで差が出る理由が、「ちがい」なのです。

いつも使っている箱ティッシュが無かったから、もしくは他がもっと安かったからという理由でいつもの箱ティッシュ以外のものを買った経験があると思います。

しかし、iPhoneが欲しいけどGalaxyのほうが安かったから、もしくは在庫が無かったからという理由でほしかったiPhone以外を買うことはあまり想像できませんよね?

この2つのちがいは、「代替不可能性」によります。これじゃなきゃいやだという明確なちがいによるものですね。この明確な違いがあるからこそ記憶にも残りますし、市場でも生き残れます。

ところで、ティッシュでもこたえられるブランドがあると言います。それは「鼻セレブ」です。鼻セレブは値段は高いかもしれませんが、他のティッシュとの明確な違いがあるため覚えてもらえるのです。言い換えれば花粉症患者市場というニッチな市場を独占しているのです。これはピーターティールの考えとも似てますね。こちらもぜひ読んでみてください。


このように「おなじ」ものは飽和市場ではともすると「なくてもいいもの」になってしまいます。それに対し、「ちがい」があり、他で代替できない価値がつくられればそれこそが 存在事由 となり、なくなっては困る事業として社会から応援してもらえるのです。


アートシンキングはどうやって身に着ける?

じゃあそんな「ちがい」をもつ商品を生み出すアートシンキングは、どうやって身につければいいのでしょうか。本書ではあとがきに驚きの文言があります。

この本には、「ハウ・トゥ・アート・シンキング」という、あたかも答えを教えてくれそうなタイトルがつけられていますがこの本は、答えをくれません。

これを読んでびっくりしたとともに、自分を恥じました。なぜなら「ちがい」を求めているのに正解と呼ばれる画一的な方法を教わろうとしていては、その正解の方法から生まれる答えは「おなじ」だからです。そして本書は次のように続けています。

あなたがこの本を読んで、「触発」からどんな「自分」を見出すのか、そしてこれからの長い人生、どんなworkをつくりどんな「自分」を生み出していくのか、
それは畢竟、あなたにしかわかりません。ひょっとすると、あなたにもわからないでしょう。

触発」からの動きは各人違って当然です。そんな気持ちを著者は想起させたかったのでしょう。「自分」は誰とも同じではないですから、その自分だけの「ちがい」を大切にすべきだと思います。

強いて言えばアートシンキングの身につけ方は自分を見つめなおし、自分を表現することから始まるのかもしれない、と個人的には思っています。もちろん正解はないですが「ちがい」を信じて進む人が幸せになる時代なのかもしれません。まるで評価されなくても自分のアートを作り続けるアーティストのように。

まとめ

・パラダイムが「おなじ」から「ちがい」へとシフト

・違いを生み出す思考法がアートシンキング

・アートシンキングに正解はない


以上が若宮和男さんの『ハウ・トゥ アート・シンキング』の個人的感想と要約です。

ちなみに私は最近オンラインで美術館を見たり雑誌で現代アートを読んだりと自分なりにアートに触れています。今までの学校教育を全部忘れ、自分が感じたいように感じ、考えたいように考えるようにしています。

本書は要約では魅力を全く伝えきれていないので是非読んでみてください。



これからも本の要約をメインに発信していこうと思うので、おすすめの本や要約してほしい本がありましたらコメントください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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