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闖入者は笑う【オンガク猫団コラムvol.29】

ニューヨークのイーストリバーでは、釣糸にサメが引っ掛かることもあるそうだ。日がな一日ぼんやり過ごしていたマンハッタンの釣天狗は、さぞかしビビったことだろう。日本でも最近タマゾンとか言われている多摩川では、外来種だらけという話をよく耳にする。噛みつき亀、アリゲータ、なんとピラニアまでいるらしい。これじゃあ、おちおち川遊びなんてやってられない。

そこまで大袈裟な話ではないけれど、よく行くスーパーの買い物のバスケットに「クビキリギス」がとまっていたことある。レジで並んでいる時に、オイラの目の前の人が精算しているバスケットに、クビキリギスがしがみついていたのだ。当然、そのバスケットはリレーされて、買ったものがそこに突っ込まれ、オイラに渡されるという成り行きになる。

やばい、このままではオイラの手元に緑色のジョーカーが回ってくるぞ。大人になって虫が苦手になってしまったオイラとしては、それは是が非でも避けたかった。その時はたまたま買ったものが食パンだけだったので、バスケットを紳士的に断って難を逃れたのだった…。

クビキリギスとは、この時期、夕方あたりから鳴き始めるバッタである。夏になると、田舎の商店の軒先にある誘我灯が「ジー」という音を出すが、首切りギリギリスの鳴き声はその音とよく似ている。クビキリギスは顎の力が強力で、噛みつかれた状態で強く引っ張ると頭部がすっぽり抜けることが名前の由来になっていらしい。

そういえば、何年か前、ハイソサエティな食材を売っている某お洒落スーパーで、ブロッコリーに「タマナギウワバ」の幼虫がこびりついていたことがある。これ、要するに本気の青虫だ。けっこうでかいが、保護色なので目が悪い人はうっかり触っちゃう危険がある。あまりに気色悪かったので、オイラは店員さんに申告できず、見なかったことにしてしまった。あのブロッコリーを知らずに買った有閑マダムは、家に帰って失禁したのではないだろうか。

「オーマイガー!何故こんなところに、こんなものが!」という場違いのものが在って、おったまげてしまうことがある。よく散歩にいくことがある都内のありきたりな公園で、ついこないだは「コマドリ」が群れで何羽も飛来していた。何しろ、一度、奥多摩あたりに駒鳥ウォッチングしようかと、密かに思っていたくらいのレアな野鳥なのである。オイラは、ホントに驚いた。

数は不明だったが、輪唱のように彼らは鳴き続けた。しばらくその場で粘ったが、その姿をみかけることはできなかった。一度鳴き声を生で聴いてみたかったので、姿は見えなくてもオイラは超ハッピーだった。思わずスマホで録音までした。そして目を瞑って、彼らの鳴き声を楽しんだ…。彼らは渡り鳥である。可能な限りゆっくりしていって欲しいなあ。

オンガク猫団(髙田 ナッツ)

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