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便利な時代の創造的な学びかた | 自由大学 メールマガジンVol.525

「独学ができる時代に、なぜ学校に通うのでしょうか」

自由大学を運営していることもあり、よく聞かれる質問です。優れた本もあれば、YouTube動画もある。これだけ情報が溢れていれば、意志さえあれば独学だけで十分に可能かもしれません。

学校に通う理由その1は、「自分に合った最適ルートを教えてくれるから」。実際にぼくも、無料動画だけでもDIYでの電動工具の使い方を学び、作りたいものが作れている実感があります。でも、明らかに先生に教わったほうが早かったです。こちらが何をやりたいのかをヒアリングしてくれて、目的を理解して、ぼくの個性も加味した上で「なるほど。だったらこれ」と上達する最短距離を教えてくれるから。

コンクリート壁に棚を取り付けたいのだけど、穴を開けるには、電動ドライバーを買います。一口に電動ドライバーと言っても、振動ドライバー、ドリルドライバー、インパクトドライバーのどの種類がいいのか。YouTube動画を観て学びましたが、何時間もかかりました。それでもわからないことがたくさんある。

棚の重さに耐えられる強度を出すには、何ミリの直径と深さの穴を開ければいいのか。適切なネジは? 大は小を兼ねるので、大きめに穴を開けておけばいいのですが、大きくなると開ける労力とコストが跳ね上がるのです。

1人でたくさん失敗して、試行錯誤して学ぶのも無駄ではないけど、ぼくは別に大工のプロを目指しているわけではありません。そこまでの時間を投資する余裕はない。なので、マンツーマンでこちらの質問に対して目的に沿ったことを教えてもらうのがよかったです。ウエイトトレーニングもカメラも動画編集も、マンツーマンがぼくにとっては一番良い学び方でした。ウエイトトレーニングだとすると、一人ひとり骨格が違うので自分に合ったフォームを客観的にみてもらえるのは助かります。

学び方としては「マンツーマンが最高」と言いたいところですが、足りないところもある。それが学校に通う理由その2、「仲間」です。縦からの学び以外に、横からの学びも必要なんですね。

ともに学ぶ他者がいるから、より自分の個性を客観視できるのです。「比較は必要ない。自分は自分であればいい」のも確かですが、自分がそれにどのくらい才能があるのかないのかは知っておくといい。まわりより上達が早いということは才能があるので、どんどん伸ばせばいいでしょう。遅いのであれば、仕事としてではなく趣味で楽しもうとか、根気よく長く続けようとか、自分を知るには比較する仲間の存在が必要なんです。

才能だけでなく、嗜好の偏りも自覚できる。会社や友人だけの付き合いだと、似た属性の人たちに囲まれてしまいます。ネット情報も受信者の好みに合わせて、カスタマイズされて表示される時代ですから、ますます多様性への耐性が衰えてくるんですね。

「多様な人たちとうまくやる力」は、今後ますます重要になります。なぜなら、変化の時代は、よく前提がひっくり返るから。花形だった職業がある日、突然必要とされなくなる。そんなことが頻繁に起きてくるんですね。

組織の同質性が高まると、絶滅リスクが高まるのは歴史が証明していることです。医者、弁護士だって公務員だって、ある日、激減する時代もありえます。自分も含めて友人知人みんなが同じ職業だったらみんな沈むわけです。何が起きても、どんな場所でも、どんな人とでも協力して乗り切る力。これこそ今、学ぶべきことなのですが、独学ではできません。

自由大学のクラスには、年齢もさまざま、キャリアもメディアで取り上げられるような有名人もいれば、海外や山奥から通う人や、一度も働かずに生きている人もいます。出版だったら出版、ヴィーガン料理だったらヴィーガンに興味がある、というニッチな共通点のみであとはバラバラな属性。実に多様な人たちが集まります。少人数での共同作業もあるので、対話が必ず生まれます。

そこで価値観がひっくり変えることもある。出版という分野で言えば、必ずしも仕事のできる優等生だけが世の中から評価されるわけではありません。変わり者の変わった知見も需要がある。出世競争には勝ってきたけど、いかに自分というものが無かったか。メンバーのおかげで気付かされたという人もいます。

短期や長期いろいろ検討しながら、自由大学はいいところどりをして、「マンツーマン」で個別フィードバックも可能な「少人数クラス」を基本としています。できないことができるようになる喜びは、何にも代えがたい。さて、今年は何を学ぼうか。

TEXT:自由大学 学長 深井次郎 (自分の本をつくる方法教授


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