齋藤 通雄

退職国家公務員。現役時は、国債発行、PE・VCファンド業務(出向)や、金商法の企画立案…

齋藤 通雄

退職国家公務員。現役時は、国債発行、PE・VCファンド業務(出向)や、金商法の企画立案・執行など、マーケット周りの経験が長い。ハイデルベルク大学留学、ドイツ滞在歴通算7年。ワインエキスパートエクセレンス、ドイツワイン上級ケナー。小型船舶1級、レスキューダイバー

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ドイツの2024年のブドウ収穫~少量だが良質

10月25日、ドイツ・ワインインスティテュートが2024年のブドウの収穫見通しを公表した。 以下はリリースの概要を訳したものである。 2024年は、遅霜、多めの降水量、そして収穫期における変わりやすい天候で、ワイン生産者には仕事量の増加と高い柔軟性が要求される年だったが、それを克服して全国的に高品質のブドウが収穫された。 地域により大きく異なる収穫量 極端な気象条件の結果、2024年の収穫量は、生産地域、品種、自然環境の異なる局地毎に大きな差が生じた。平均的な収穫量を得

    • ドイツ最北のブドウ畑

      【序】 ドイツワインを少し本格的に勉強したことのある人なら、ウェルデラーナー・ヴァハテルベルクという畑名を耳にしたことがあるかもしれない。ドイツワイン法におけるクヴァリテーツヴァイン(英語にすればクォリティ・ワイン)に分類される高品質ワインを造ることができる最北のブドウ畑である。ベルリン近郊のポツダム(あの「ポツダム宣言」のポツダム)の近くに位置する。ここでは中世からワインが生産されてきた。  一方、ワイン法での格は下がるが、ラントヴァイン(地酒)を産み出す畑としては、国土と

      • ドイツのブドウ栽培(品種別及びワイン生産地域別)の近況(2023年)

         本年6月終わりから7月初めに、ドイツ・ワイン・インスティテュートが、2023年のブドウ品種別及び13のワイン生産地域別の栽培面積の速報をプレスリリースしている。要約すれば以下のとおり。 1.ブドウ品種のトレンド新品種の栽培が増加 新しい品種であるソーヴィニエ・グリ(Souvignier Gris)は、栽培面積が183ha増加し、増加面積は全品種の中で第2位であった。ソーヴィニエ・グリの栽培面積は388haとなり、2023年に46ha増加して306haとなったカベルネ・ブ

        • 日銀の国債買入れ減額の評価

           2024年7月31日、日本銀行は金融政策決定会合において長期国債の買入れの減額計画を決定し、公表した。  決定の内容は、毎月の買入れ額を四半期毎に4,000億円ずつ減額するというものであるが、その減額の規模感と国債市場への影響をどのように考えるべきか、整理したい。 1.決定の具体的内容  減額を始める前の買入れ額は、5.7兆円/月であったが、2024年8月分から減額を開始し、8月・9月は5.3兆円/月、10月~12月は4.9兆円/月、2025年1月~3月は4.5兆円/月

        ドイツの2024年のブドウ収穫~少量だが良質

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        記事

          新ドイツワイン規則の施行

          5月7日のドイツ連邦法令官報(Bundesgesetzblatt)において、新しい(第24次改正)ドイツワイン規則改正の内容が公布された。 「この規則は、公布の翌日から施行する。」と書かれており、新しいドイツワイン規則は5月8日から効力を発することとなった。 改正部分を織り込んだワイン規則の全体は、連邦法務消費者保護省が運営する政府の法令公開ページで公開されている。 【参照】※いずれもドイツ語のみ 連邦法令官報(改正部分のみ。PDFファイルは印刷不可となっていることに注

          新ドイツワイン規則の施行

          グローセス・ゲヴェクス等の基準管理組織について

          ワイン規則改正に関する連邦参議院修正で、グローセス・ゲヴェクス(Großes Gewächs)等の規定が追加されたが、この規定の中で、ドイツワイン法・ワイン規則でこれまであまり用いられることのなかった用語が登場している。 すなわち、"Schutzgemeinschaften"(:複数形。単数ではSchutzgemeinschaft。直訳すれば「保護共同体」)と"Branchenverbände"(複数形。単数ではBranchenverband。直訳すれば「業界連合団体」)であ

          グローセス・ゲヴェクス等の基準管理組織について

          ドイツワイン規則の最終的な改正内容

          1.序 3月26日、ドイツ連邦参議院本会議においてワイン規則改正案への同意が決議された。ワイン規則(Weinverordnung)は、ワイン法(Weingesetz)の下の行政府が定める規則(日本でいえば政令とか省令)だが、ドイツでは、州レベルの行政に影響がある場合、連邦参議院(ドイツの参議院は各州の代表によって構成されている)の同意が必要とされる。 今回のワイン規則の改正については、原案作成段階から色々と議論があり、議会においても、政府(連邦食糧・農業省)が連邦参議院に提

          ドイツワイン規則の最終的な改正内容

          ワイン法令におけるグローセス・ゲヴェクス等の規定の新設

          ドイツワインにおいて、特級、一級に相当するグローセス・ゲヴェクス(Großes Gewächs)、エアステス・ゲヴェクス(Erstes Gewächs)の表示については、これまで、有力ワイナリーによって構成された業界団体であるVDPによってルール化されてきた(エアステス・ゲヴェクスについては、州法レベルではヘッセン州で規定がある)。 現在進められているワイン規則(ワイン法の下の行政規則)改正によって、これらの表示は法令上の位置付けを獲得する見込みである。 ワイン規則改正案に

          ワイン法令におけるグローセス・ゲヴェクス等の規定の新設

          赤ワインが中心のドイツの産地

          【ドイツワインの白赤比率】 ドイツのワインといえば、リースリングを中心とした白ワインのイメージが強い。 実際、ドイツ全体の品種構成を見ると、白ワイン用のブドウが約3分の2(66.9%)を占め、赤ワイン用のブドウを大きく上回る。また、ドイツワインの輸出を見れば、実に82.3%が白ワインである(いずれもDWI統計資料の2019年の計数)。 しかしながら、ドイツに13ある指定生産地域(bestimmte Anbaugebiete)の中には、赤ワイン用ブドウの生産が白ワイン用ブド

          赤ワインが中心のドイツの産地

          VDPによるゼクトの新しい格付け

          (2020年12月にFacebookで一部既報の内容) VDPが新たに、ゼクトの格付けとその基準を定めたようだ。 ドイツワイン法では、ゼクトは9カ月以上の熟成でタンク内二次発酵も可であり、その上級のものとして瓶内二次発酵が義務付けられたWinzersektとCrémantが位置付けられている。 VDPは、更に厳格化して、自家栽培のブドウを原則手摘み、全房圧搾で、瓶内二次発酵を義務付けた上で、熟成期間別に、最低15ヵ月熟成(ヴィンテージ・ゼクトの場合最低24ヵ月)のVDP.S

          VDPによるゼクトの新しい格付け

          ドイツワイン法及びワイン規則の改正

          今次制度改正の狙い ドイツワイン法(Weingesetz)改正案は、2020年11月26日に政府案を一部修正の上連邦議会で可決され、同年12月18日に連邦参議院の同意を得た。 この法改正に伴い、その下位法令であるワイン規則(Weinverordnung)も改正が行われる。 (訳注:Verordnungは日本でいえば政令(○○法施行令)又は省令(○○法施行規則)に当たるが、「令」の訳語を当てると戦前に制定された勅令(「○○令」の名称だが法律相当)との紛れが生じる恐れがあるため

          ドイツワイン法及びワイン規則の改正

          ドイツワイン輸出市場としての日本

          (データ出典:Deutscher Wein Statistik `20/`21 , WANDS誌2020年4月号) 日本への輸出 ドイツワインの日本向け輸出は、2019年には金額ベースで1,200万ユーロ、数量ベースで27,000ヘクトリットルと、いずれも2018年の1,100万ユーロ、23,000ヘクトリットルから増加した。 増加率は金額で9.1%、数量で17.4%と、ドイツワインの輸出全体の伸び(金額△0.7%、数量3.2%)を大きく上回り、ドイツワインの輸出先とし

          ドイツワイン輸出市場としての日本