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ワイン法令におけるグローセス・ゲヴェクス等の規定の新設

ドイツワインにおいて、特級、一級に相当するグローセス・ゲヴェクス(Großes Gewächs)、エアステス・ゲヴェクス(Erstes Gewächs)の表示については、これまで、有力ワイナリーによって構成された業界団体であるVDPによってルール化されてきた(エアステス・ゲヴェクスについては、州法レベルではヘッセン州で規定がある)。
現在進められているワイン規則(ワイン法の下の行政規則)改正によって、これらの表示は法令上の位置付けを獲得する見込みである。

ワイン規則改正案に関し、連邦参議院農業・消費者保護委員会による修正提案が公表された(2021年3月11日付)が、そこには以下のような規定案が盛り込まれている。
(注:グローセス・ゲヴェクス等以外の箇所の修正提案については追記予定。)
規則についての最終的な議決は、3月26日の連邦参議院本会議で予定されている。
なお、立法技術的に見ると、この修正案は、今のワイン法及びワイン規則(改正案を含む)で明確に定義されていない用語を無定義のまま用いるなど、必ずしもこなれていない部分があり、最終的には更に(特に言葉使いの面で)修正が加えられる可能性があると思われる。

ワイン規則 第32b条
※ 実は、この条にグローセス・ゲヴェクス等の規定を置くことについては、かつてうまくいかなかったSelectionの規定があった条だからという理由で、VDPは反対していた。また、VDPのグローセス・ゲヴェクスは畑の格付け(グローセ・ラーゲ:VDP.GROSSE LAGE®)が前提となっているが、今回の規定案ではグローセス・ゲヴェクス等を名乗れる畑の指定については、第4項にあるように、産地の原産地呼称保護管理組織に委ねられている。

第1項 エアステス・ゲヴェクス
エアステス・ゲヴェクスの表示は、白ワイン又は赤ワインであるクヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein)で、以下の条件を満たす場合に限り許される。
① 単一の品種で造られていること
② 生産地域の特徴にふさわしい品種で造られていること
③ 収量は1ヘクタール当たり60ヘクトリットル(シュタイルラーゲにあっては70ヘクトリットル)を10%を超えて超過しないこと
④ ブドウは健全性・成熟度の観点から選別して収穫されていること
⑤ 潜在アルコール度数が11%以上の果汁であること
⑥ 単一畑(Einzellage)又はより狭い産地表示であること
⑦ 収穫年表示であること
⑧ 辛口(trocken)であること
⑨ 甘みに関する味わい(辛口等)の表示は行わないこと
⑩ 収穫翌年の3月1日よりも前には販売しないこと

第2項 グローセス・ゲヴェクス
グローセス・ゲヴェクスの表示は、白ワイン又は赤ワインであるクヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein)で、以下の条件を満たす場合に限り許される。
① エアステス・ゲヴェクスの規定の①、②及び⑥~⑨の条件を満たすこと
② 収量は1ヘクタール当たり50ヘクトリットル(シュタイルラーゲにあっては60ヘクトリットル)を10%を超えて超過しないこと
③ ブドウは手摘みであること
④ 潜在アルコール度数が12%以上の果汁であること
⑤ 公的品質検査番号(A.P.Nr.)付与後6か月以内に産地及び品種の特性を確認する特別な官能検査に合格すること
⑥ 収穫翌年の9月1日よりも前には販売しないこと。赤ワインの場合には更に9か月後とする(すなわち、収穫の翌翌年の6月1日以降の販売)

第3項
原産地呼称の管理に当たる組織(Schutzgemeinschaft等)は、各々の生産基準明細(Produktspezifikation)で、産地にふさわしい品種と満たすべき官能面での特徴を規定する。

第4項
エアステス・ゲヴェクス及びグローセス・ゲヴェクスの表示に関し、原産地呼称の管理に当たる組織は、産地の特性に鑑み、必要に応じて、果汁の最低潜在アルコール度数、最大収量、生産可能エリア等についてより厳格なルールを定めることができる。

第5項
生産者団体によって既に用いられているエアステス・ゲヴェクス又はグローセス・ゲヴェクスの表示は、第1項から第4項の条件を満たしている場合に限って引き続き使用できる。

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