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赤ワインが中心のドイツの産地

【ドイツワインの白赤比率】

ドイツのワインといえば、リースリングを中心とした白ワインのイメージが強い。
実際、ドイツ全体の品種構成を見ると、白ワイン用のブドウが約3分の2(66.9%)を占め、赤ワイン用のブドウを大きく上回る。また、ドイツワインの輸出を見れば、実に82.3%が白ワインである(いずれもDWI統計資料の2019年の計数)。

しかしながら、ドイツに13ある指定生産地域(bestimmte Anbaugebiete)の中には、赤ワイン用ブドウの生産が白ワイン用ブドウを上回る地域が2箇所ある。アール(Ahr)とヴュルテンベルク(Württemberg)である。
※ 2019年の統計では、赤の比率は、アールでは82%、ヴュルテンベルクでは68%であった。

本稿では、両地域が赤ワインの産地となった歴史的経緯を概観する。


【アールにおける赤ワインの発展】

アールも中世までは白ワイン用のブドウ生産が中心だったようで、赤ワイン用のいわゆる黒ブドウが持ち込まれたのは17世紀、30年戦争の後とされている。
ただ、当初は、黒ブドウからも醸しは行わずにAhrbleichart(アールブライヒャルト)と呼ばれる薄いロゼ色のワインを造っていたとのこと。
18世紀の終わりからアールは一時期フランスの領土となるが、このときに果皮から色素を抽出する赤ワイン造りが持ち込まれ、赤ワイン中心の産地になっていった、ということのようである。

19世紀になると(1815年~)アールはプロイセン領となり、プロイセンがフランスワインに高関税を課したことで、価格競争力を得たアールの赤ワインが人気となり、市場を拡大する。そこからの約20年間は、アールのワイナリーにとって幸せな時期であった。
ところが、1833年にプロイセンがドイツ関税同盟に加わると、アールのワインはファルツのワインとの競争に晒されるとともに市場としてのベルギーを失うことになる。収穫不良にも悩まされたアールのワイナリーは苦境に陥り、一部の生産者は故郷を捨ててアメリカに移住。一方、残った生産者は互助組織を設立することとし、1868年、マイショス(Mayschoß)にドイツ最古の協同組合が設立されることとなる。

ただ、赤ワイン中心という状況は変わらず、1928年には、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)等の赤ワイン用ブドウが88.3%を占める(シュペートブルグンダーが67.7%)のに対し、白ワイン用ブドウは11.7%という統計も残っている。

アールは比較的早い時期から赤ワイン産地としての地位を確立していた。


【ヴュルテンベルクにおける赤ワインの発展】

アールに比べると、ヴュルテンベルクのワイン生産が赤ワイン中心となり、とりわけ現在の品種構成となったのは、比較的最近のことといえる。

ヴュルテンベルクも他の生産地域と同様、ワイン生産はローマ人によって持ち込まれキリスト教会によって拡大した。
中世には、ネッカー川沿いで生産されたワインは、中央ヨーロッパ各地に輸出されるに至り、16世紀には名声を博していた。当時の中心品種はクレブナー( Klevner)であったようだが、ヴュルテンベルクでこの名前で呼ばれていたのはシュペートブルグンダーの変異種であるフリューブルグンダー(Frühburgunder)である。フリューブルグンダーは、最近の統計では、アールで一定量の生産があるものの、ヴュルテンベルクの主要品種としては姿を消している。

30年戦争でヴュルテンベルクのワイン畑は荒廃し、収入を得ようとする生産者によって収穫量の多い品種が植えられていった。領主である諸侯は、より高品質の品種への植え替えを命じたりもしたようだが、必ずしもうまく進まなかった。

19世紀初めにこの状況に変化をもたらしたのは、ヴュルテンベルク王ヴィルヘルム1世であった。より高品質のワイン生産を目指して品種や醸造の研究を行わせるとともに、リースリングをヴュルテンベルクに持ち込んだのである。

1880年代になると、ベト病の流行により、カビ耐性のある交配品種の利用が増えるとともに、協同組合による互助が進んでいく。

ヴュルテンベルクの品種別生産量統計を見ると、早くから赤ワイン用品種が過半を占めていたとはいえ、1964年で54.3%、1979年で51%と、白ワイン用品種とほぼ半々に近かった。
また、赤ワイン用品種として、最近ではトロリンガーとレンベルガーが各々ブドウ生産全体の2割弱を占める中心品種となっている(シュヴァルツリースリング=ムニエとシュペートブルグンダーが1割強で続く)が、1964年には、トロリンガーは3割弱を占めていたものの、レンベルガーは6%に過ぎなかった(シュヴァルツリースリングは5%、シュペートブルグンダーは1%)。ポルトギーザーが1割強で、赤ワイン用品種第2位であった。
1979年には、トロリンガー2割強、レンベルガー5%、シュヴァルツリースリング11%、シュペートブルグンダー3%であった。
赤ワイン用品種比率が約7割まで高まり、レンベルガーの比率が全体の1割にまで増加するのは、2000年と比較的最近になってからである。

(参考)
アールの歴史
https://www.kreis-ahrweiler.de/kvar/VT/hjb1965/hjb1965.35.htm
ヴュルテンベルクの歴史
https://weingeschichte-n.tour-de-kultur.de/2018/07/04/weinanbaugebiet-wuerttemberg/

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