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楽しんでもらえるリモート授業のコツ

リモート授業が増えていますが、受ける側(学生側)に聞くと「たいくつ」「配信で済む内容」「ミュートしてる」等々、あまり評判のよくないことが多いようです。そこで今日は「参加者に楽しんでもらいつつ、学習効果を高める」リモート授業のコツをお話します。

■対象年齢
フォーマットは共通で、アレンジレベルを調整すれば中学~専門学校くらいまでは対応できると思います。(私がファッション専門学校や声優養成所でのリモート授業時に実際に行っている内容です)

■オープニング
講師の名前以外の自己紹介は不要です。どうしても必要な理由がある場合、授業の中盤or最後に行うか、PDF添付資料等で配布しましょう。他人のひとりしゃべりを集中して聞くことができるのはせいぜい最初の5分、10分だけです。貴重なその5分を、あってもなくてもよい講師の自己紹介に使うのはもったいない。ここぞ!というときに重要な話を叩きこむためとっておきましょう。ちなみに少人数クラスの場合、学生に順に自己紹介させるのも同じ理由でよくありません。ただし、初対面のクラスメート等のアイスブレイクは必要なので、少し工夫した自己紹介ゲームなどはやるべきです(後述)

■双方向参加型を常に意識する
一方的にしゃべって知識を押し付けていくスタイルは、特に気が散りがちな自宅でのリモート授業には不向きです。参加者全員が常に「私も参加しているんだ」という実感を感じさせないと、どんなに良い授業でもすぐ飽きてしまいます。以下に、アレンジしやすい簡単な双方向参加型のゲーム例を挙げてみますので、これらを間に挟みつつ講義を進めていくと中だるみしにくい授業が展開できます。始める際には「今からこういうことに役立つゲームをする」というように、授業内でやる必然性を軽く説明してから始めると「突然学生のご機嫌取りに来た感」が薄れます。息抜きではなく、あくまで授業の一環というスタンスを崩さないまま、みんなで楽しんでやるとよいでしょう。

1)『答えをそろえましょう』(協調性ゲーム)・・・例えば「秋の果物といえば?」というような問題を出し、全員で答えを同時に出す。全員の答えがそろったらOK!10人前後の少人数クラスなら全員一致目標、それ以上のクラスならいくつかのグループに分けてグループ対抗戦で。
問題を工夫することで色々な授業、年齢層に使えます。例えばファッション専門学校なら「スーツといえば何色?」「安くてかわいい服といえば?」等。あまりマジメすぎたり専門性の高い問題ばかりだとこれも飽きてしまうので、2、3問おきに「初デートで行く場所は?」「ディズニーランドのアトラクションといえば?」など、ターゲット層に刺さりやすそうな砕けたお題を差し込むこともコツです。

2)『いい線行きましょう』(洞察力、フェルミ推定ゲーム)・・・例えば「日本中に車は何台走っている?」等の数字で応えられる問題を出し、全員で数字を書いた答えを出す。その中でちょうど真ん中の答えを書いた人に2ポイント、最大値と最小値を書いてしまった人は-1ポイント。
これも問題の内容を各授業に合わせたテイストにすることで、関連性を持たせられる。例えばファッションの授業なら「このクラスのみんな、月の洋服代は平均いくら?」「私(講師)の今日の服装は全身トータルいくら?」など。これは正解を当てるゲームではなく、あくまでも「参加者全員の真ん中を狙う」という、洞察力と推理力のゲームであると理解すること。もちろん、ある程度の知識があれば有利(的外れな答えを書きにくくなるため)。
※偶数人数の場合、講師も参加して奇数人数にする。
※人数が多い場合はいくつかのグループに分けてやる
※同じ答えが複数でた場合はうまいことやる

3)『漢字とカタカナ』(発想力、語彙力)
・・・例えば「ゴリラ」というお題に対し「漢字2文字+カタカナ3文字」でそれを表現するゲーム。「黒色ウッホ」「大猿ムキキ」など、お題そのものを指す言葉を使わなければ造語でOK。一人が書いて他全員でお題を当てる形式の他、一人回答者を決めてそれ以外全員で漢字カタカナを書いて順番にひとりづつ見せていって回答者に当てさせる形式など、参加人数によって形式はアレンジして欲しい。
これもお題を授業に即したものにするとよい。ファッションなら「Tシャツ」「ユニクロ」「ビーチサンダル」など。

■ゲームの答えを全員一斉に出す方法
人数がそれほど多くなく、PCなど大き目の画面で実施可能な場合は各自フリップ(画用紙やミニホワイトボード)を用意して画面に映す形式でも可能だが、ZOOMであればチャットを使って同じことができる。チャット画面に全員が答えを打ち込んだら、エンターキーを押さずに待機。講師の合図で全員が一斉にエンターキーを押せばOK。
上記3)等でひとりにだけこっそりお題を伝えたい場合も、ZOOMのチャットで個人を指定してチャットを送る「プライベート送信機能」を使えば可能。

■自己紹介ゲーム
少人数クラス(おおよそ10人前後)の場合、クラスメート同士の連帯感の有無もリモート授業の盛り上がりに影響を与えます。たとえば質問が出やすい空気感や、講師の話にリアクション(自然なうなづきや笑い)が起きやすい、等。リモートの場合、特に参加学生のリアクションが薄くなるため講師としてもやりづらいです。学期始めやまだクラスメート同士よそよそしさがある場合にはぜひ授業開始直後に実施してみてください。

1)『勝手に他己紹介』
・・・まず講師がクラスの誰かひとりについて、想像で勝手に他己紹介をする。それを聞いたクラス全員が誰について紹介しているのかを当てる。当たったら今他己紹介された人が次の紹介相手を自由に選んで想像で勝手に他己紹介する(一度紹介された人は避ける)。全員に回ったら終わり。

2)『こう見えて実は』・・・「こう見えて実は」で始まる自己紹介をする。聞いてる他のクラスメートは「意外だ」「ギャップがある」を感じた場合、チャットで「いいね」と送る(画面上で親指を立てるジェスチャーをするでもOK)。一番多くのイイネを獲得した自己紹介をした人が意外性No.1

■合間に話して伝えたいことを伝える
このように、双方向コミュニケーションが必須となるゲーム形コンテンツを盛り込んでいくことで、明らかに参加学生たちに表情やリアクションに良い変化が出てくるはずです。そんないわゆる「ととのった」状態を感じたら、座学系の講義をしても大丈夫です。ただし、そのときも常に学生サイドからの反応、サインを見逃さないこと。質問や気になることがありそうな学生からは目線や口元などでサインが出るはずですから、見逃さずしっかり指名して学生側の発言機会を積極的に与えましょう。先ほどの自己紹介やゲームにより講師⇔学生間のアイスブレイクも完了している今なら、名指しで学生を指名してもいい意味で緊張感無く答えてもらえるはずです。
授業開始時は学生にとって、講師は赤の他人のおじさん・おばさんにすぎません。そんな人からいきなり名前を呼ばれて指名されても、答えてあげる気にはならないのが普通です。前段のアイスブレイクを経て、講師を含むクラス内に一体感が出てからであれば学生の授業参加姿勢も格段に良くなっていますので授業のやりやすさも段違いです。

■授業展開例

入室、挨拶
→講師名前を名乗る(5秒)
→すかさず自己紹介ゲーム(10分)※考える時間を与えない
→この講義の概要、流れと目的解説(10分)
→協調性ゲーム(15分)※合間に出て来た専門用語の解説を適宜入れる。
→ゲーム内に出た用語や学生の解答を引き合いに用語解説・業界説明・進路について講義(15分)
→講師の略歴とそれが学生にどんなメリットを与えられるか解説(5分)
→質疑応答(5分)
→講義終了(計60分)

■おわりに
リモート授業がやりにくいのは講師だけでなく学生も同じです。やはりコミュニケーションがとりにくく、ともすれば一方的に話をするだけの「単なる動画配信と変わらない」と思われがちです。コツをまとめると、以下の三つです。

①双方向コミュニケーションの機会を積極的に作る
②アイスブレイク後は学生のリアクション、話したいというサインを見逃さない
③クラスの空気を良くすることに全力を注ぐ

特に③、ゲームやワークショップを通じて学生同士がお互いにつながりを感じられると、一気にクラスの空気が良くなり学生がフランクに発言・質問しやすくなります。オンライン授業では特に学生ひとりひとりが孤立しやすく(物理的にはひとりで参加しているわけですし)、それがたいくつ感や集中力欠如につながります。そこでまずは画面の上でも「他のクラスメートとちゃんとつながってる」ことを体感させることが最重要です。これができるまで、授業は始められないと言っても過言ではないと思います。
逆に学生同士の連帯感「共に授業に参加してる感」が生まれてしまえば、バーチャルとはいえそのクラス内が居心地の良いホームとして認識されるため、そこにいる講師をも親密に感じてもらえるのです。ここまで来れば、あとはどんな内容の授業であっても一定の手ごたえ・成果は得られるはずです。

以上、一専門学校講師の経験に基づくノウハウですが、突然のオンライン授業に苦労なさっている同業者の方々の一助になれば幸いです。何かリクエストやご質問がありましたらお気軽にコメントいただければと思います。