何故ビジネスに”アートが必要”なのか?
音楽とか文学とか、いわゆる芸術と言われるものが好きで、そのうちの一つが絵画鑑賞ーーとりわけ、世紀末のフランス絵画ーーーなのですが、「なんだか難しそう」と流されてしまうことも多いのです。
欧米ではビジネスの場で「アート」を語れるというのは教養の一つとして非常に重要で、その影響を受けて日本では最近、ビジネスパーソンに向けたアートを手ほどきする書籍も増えてきている、
のであるのですが、それでもなお、「週末何するの?」「美術館へ行く?高尚な趣味だね・・・」と言われることが多いのに変わりないのです。
そこで今日は私個人として、「自分が仕事をする上で、こんな形でアートが役立っているな」ということをまとめてみます。先に断ると、私の仕事は芸術関連ではなく、そういったものを専門的に教育機関で学んだこともありません。あくまで素人目線で書きます。
①自分なりの美の哲学をもつ、トレーニング
と、書くとストイックな響きですが、実際はもっと簡単で「目の前のことに対してなにか思う」を積み重ねることが、日々の仕事のためにも必要だと思うのです。
なぜ必要?
より良い仕事をするには、確認、議論、交渉といった大小様々なコミュニケーションが必要です。ではより良いコミュニケーションには何が必要かというと、「何が良くて、何が悪いのか」という自分なりの哲学を持っていることだと思うのです。
つまり「自分なりの意見を持つ」が必要で、その助けとして「美の哲学」が必要なのです。
それ(美の哲学)がないとどうなる?
私たちは毎日大量の選択をしているのですが、例えば「確認お願いします」と言われてもらった資料。「何かちがうんだよな〜」ではもらった方も、提出した方もモヤモヤする。お互いフラストレーションが溜まるし、結果として良い仕事が生まれません。
それ(美の哲学)があったらどんな世界が待っている?
自分なりに「こう在りたい」という「なにが良い(美しい)のか」という哲学を持っていれば、物事がもう少しなめらかに進むのではないでしょうか。
「自分としては、こんな風に改善したい。なぜなら〇〇に価値を感じていて、こんな姿を目指したいから。」
自戒をこめて書きますが、こんなコミュニケーションは、より良い仕事ーーというかより良い生活を生むと思います。
ではいきなり、一つの絵画に対して意見を述べる練習をしていくのかというとそうではなく(そんな難しいこと私もできません)、最初の一歩は「素直に目の前の一つの絵画に対して何か思う」だと思うのです。
最初は「かわいい」「綺麗、」「すごいなぁ」、そんな曖昧な言葉だけかもしれません。私も最初はおそらく「すっごーい」「きれい〜」しか言っていませんでした。決してそれは悪くありません。見方は人それぞれですから。
でも鑑賞量が増えてくると、「ちがい」や「ストーリー」がわかってきて色んな「感想」が出てくるようになりました。
たとえば「このボナールの花瓶の花の絵、ルドンの花の絵とそっくりな構図・・・何か関係があるのかな?」とか
(自室のデスク前壁に貼ってあるポストカード。左がボナールで、右がルドン)
画家ローランサンが描いたココ・シャネルの絵に関しては、シャネルが気に入らなかったのか、受け取りを拒否して二人は不仲になった、というエピソードがあって、面白いなぁと思ったり
「〇〇学派と〇〇派が18○○年代に〜〜」なんて見方ももちろんあるのですが、そうじゃなくても、まずは単純に「目の前のものに対して何か思う」だけで自分の審美眼というものは鍛えられていくんじゃないでしょうか。
②”今ここの自分”へ戻ってくるため
目の前の一つの芸術に集中することで、私は「自分に戻る」という感覚になることがあります。
なぜ必要?
より良く働くためには「自分をよく知ること」が必要です。どんなことが得意で、何でミスしやすいのか。自分の強みを最大限発揮できると、良い仕事にもつながりますよね。
①で書いたものが物事を見極める「審美眼」のようなものであるとするなら、②の「今ここの自分に戻ってくる」はその審美眼を正しく使いこなせるような自分で在る、というイメージかもしれません。
ないとどうなる?
気づいたときには、「本当の自分」と「仕事」の間に大きなギャップが生まれていると私は考えています。今は、大量の情報が溢れていて、仕事も日々忙しいから一杯一杯になりやすい。つい自分で選択したものではないことに知らない間に「流されている」ことがあると思います。
例えば私もよくありますが、忙しい日々、「AとBどっちが良い?」と聞かれ「Aです!」と答えたとします。でも後日、珈琲を飲みながらリラックスしている状態のとき、ふと「あれ、よくよく思えば自分の方針的にはBだよな?」と、気づくのです。
忙しいからちょっとハイな自分になっている、というか、落ち着いて本来の自分として考えられていないなぁ、と思うことがあります。
それができたらどんな世界が待っている?
グッとストレスが減る気がします。(笑)
「いつも同じ自分」であるのは、人間である以上、感情や体調もあるので難しいと思いますし、ある程度「勢いで流れついた先でやってみよう!」が大事なときももちろんあります。
でも「本来の自分」として自覚してやっているのと、そうでなのとでは心地良さが全然ちがう、と思っています。
「なんかキレイ」だけがアートじゃない
私の思う、2つの「ビジネスにアートが必要だと思う理由」を書いてみましたがもちろん、何もビジネスに限ったことではなく、アートは生きるために必要だと思っています。
もっと言うと、アートは生きるうえでのプラスな感情だけでなく、時として負の感情を持った「強烈な武器」となったりもします。
私も、たくさんの言葉を並べて「わかりやすく」スライドの資料を作ったりする日々なのですが、例えば「なぜ戦争はいけないのか?」という問いが与えられたとして、もちろんたくさんの言葉を並べることもできるけれど、
たった一つの写真や絵画が、その何百倍も強烈だったりすることもある、
ピカソの『ゲルニカ』
このあたりのお話は、原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』がとってもわかりやすく楽しんで読めるのでおすすめです。
いつもより長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。
読んでいただきありがとうございました😊 素敵な一日になりますように!