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一線クリエイターが語る、Shopify。

カナダ発の世界最大ECプラットフォーム「Shopify」。日本市場でも着実に広がりを見せている同サービスを、クリエイター達はどう見ているのか。今回は、Shopifyでのコンサルティングやデザイン、サイト構築に強みを持つ株式会社アーキタイプに、弊社代表兼Shopifyエヴァンジェリスト・河野が迫る。

EC業界になかった“オシャレ感”と
確かなバックグラウンドが採用の決め手に

河野(メイン写真左)
アーキタイプさんは元々web制作会社でしたが、現在はwebのコンサルやブランディングなど、さまざまな事業をされています。どのように仕事の幅を広げていったのでしょうか?

齋藤(メイン写真中央右):
会社を設立した2007年当時はFlashの全盛期。広告代理店経由で、Flash技術を駆使した特設サイトをたくさん作っていました。でも、iPhoneの出現によりFlashが落ち目になって。ちょうどその頃から、広告代理店からのお仕事もコーポレートサイトなどの制作依頼が多くなり、それに合わせて会社自体もコーポレートやサービス系の案件に重きを置くようにしていきました。
まあここまではよくある話で(笑)。ここ2〜3年で「デジタルマーケティング」という手法が一気に広がり、広告代理店もその領域に参入するようになりましたよね。でもクライアント自身がデジタルマーケティングに取り組むようになり、広告代理店を通さず僕らに直接ご依頼いただく機会が増えていきました。現在は、僕らのクリエイティブ力を活かしたサイト制作のほか、デジタルマーケティングで集客拡大を図ったり、サイト運用をしたり。「作って終わり」ではなく、PDCAサイクルを回してマーケティングを強化することにも注力しています。僕らの方で実績のない分野に関しては、お手伝いいただけるパートナーに協力してもらいながら、サービス領域や事業を広げています。

河野:
そもそもShopifyとはどのように出会ったのですか?

後藤(メイン写真中央左):
僕がアーキタイプにShopifyを紹介したのがきっかけです。僕自身はアイレットというシステム開発会社で働いていて、別会社の知り合いにShopifyを教えてもらいました。「サイト構築できるECプラットフォームだから、システムインテグレーター向きかも」と言われたんですが、実際見てみるとあらゆる機能が自動化されていて、むしろシステム開発の知識がなくても構築できるようなものだったので、アイレットの出番はなさそうだと思って温めていたんです。そして後日、ちょうど齋藤さんと話をしていたときにShopifyをご紹介しました。「ECは今後ますます勢いづいてくるし、Shopifyは全世界で認められている。それにデザインがなかなかいい感じ」と話をしたら、興味を持ってくれて。アーキタイプはクリエイティブやコンテンツ制作に強い会社だから、洗練されたデザインでブランドをよりよく見せてくれるShopifyとマッチするんじゃないかと思い、紹介しました。

齋藤:
しっかりとしたバックグラウンドや成功事例があるのと、Shopifyなら海外のサービスを日本版にして販売する「cloudpack」のようなビジネスモデルも実現できそう、と思いました。あとは何と言っても、デザインテーマ(テンプレート)がオシャレな(時代のトレンドにあっている)ところ。ECって売れてナンボの世界なので、どうしても“オシャレ感”から少し遠いところにあるんです。いくらデザインにこだわってECサイトを作っても、サイトを運用するのは別会社で、機能やコンテンツが追加されていくうちに当初のデザインが失われていく…というのはよくあること。でも初めてShopifyを見たとき、「あ、これなら全然アリだな」と。オシャレだけどサービスも機能もしっかりしていて、実際世界中でめちゃくちゃ使われている。僕的にShopifyって、Appleに近い匂いを感じるんです。センスがよくて、デザインに理解のある人たちがShopifyの中で働いている点も、採用の決め手でした。


構築工数も費用も減らせる分、
クリエイティブの強化に注力できる

河野:
先ほどの話にもありましたが、Shopifyのデザインテーマについてもう少しお話を聞かせてください。

齋藤:
フルスクラッチでECサイトを作るとなると、工数がかかる分、ものすごく費用が高くなることがあります。でもShopifyは、デザイン性の高いテーマが豊富なので、フルスクラッチレベルのデザインも簡単に実装できます。あとデザイナーの僕から見ても、デザインのセンスが本当に良い!Shopifyのテーマは、世界中のパートナーが作成したデザインの中から厳しい審査基準をクリアしたものだけを採用しているので、一つひとつのクオリティがすごく高い。特にテーマのコンセプトもしっかりしていて、それに沿った形でデザインされているので機能面も含めてクオリティが高いです。また、そのテーマもきちんとユーザーのフィードバックを反映しているのでデザインに対する信頼性も高いです。

後藤:
構築の負荷が大きくて難易度の高いデザインも、テーマなら簡単に作れちゃうのでありがたいですね。

河野:
そこで浮いた工数を、クリエイティブのブラッシュアップに使えますしね。

齋藤:
そうなんです。ビジネスを加速させることに力を費やせるのがいいですね。特にサイトで使用するビジュアルは、売上にも大きな影響を与えるので。いいテーマを選んで、いいビジュアル(撮り下ろした写真など)を使えば、必然的にいいサイトは完成します。

後藤:
デザインテーマもそうなんですけど、そもそもShopifyのファンになったんですよ、僕ら。「ECサイトを民主化する」というコンセプトも分かりやすいし、共感できました。Shopifyを日本で売る方法を考えていたときに気づいたんですが、Shopifyみたいに「(ECサイトを)少額で始めて、大きく成長させられる」ビジネスモデルって、今どこにもないんです。そこで僕たちが考えたのは、「こだわりの強い中規模ブランドをターゲットにして、Shopifyを浸透させていく」ことでした。

河野:
確かに。日本の場合、少額で開設したECサイトが成長した場合、必ず「(サイト規模を拡張させたいから)プラットフォームを乗り換えたい」って話が出ます。でも会員パスワードが暗号化されているから乗り換えられず、ずっと同じプラットフォームを使っているECサイトは多い。でも…これ言っていいのかな、少額で始められるプラットフォームって、ぶっちゃけカート周りとか全然いじれないし、もう絶望的じゃないですか(笑)。その点、Shopifyは必要に応じて機能をカスタマイズできるからすごい。

齋藤:
あとShopifyパートナーの収益が上がるように、システム作りをきちんと行なっているところも素晴らしい。懐の広さを感じます。

後藤:
そう、「エコシステム」を作る意識が高い。デザインテーマを作る人、Shopifyで使えるアプリを作る人、サイトを作る人、みんなが得するような体制を意識的に作っている。利益率はもう少し上げたいけど(笑)。

河野:
近年は、そんなShopifyをベースにした「EC Capsule」を御社でリリースされましたよね。

神谷(メイン写真右):
EC Capsule」は、主にShopifyサイト開設のサポートやプラグインの設定、カスタマイズなどに対応するというものですが、どんなビジネスモデルで展開するか、4ヶ月ほど考えました。パッケージとしてリリースするまでに1年ぐらいかかりましたね。
EC Capsuleで手がけているのは、アパレル系のサイトが多め。「実店舗だけでなくECサイトも始めたくて」というご相談がほとんどです。あとはスタートアップ系。スタートアップブランドの担当者は意識が高く、「ブランドの世界観を大切にしたい」という方が多いです。デザインレイアウトや仕様変更など、さまざまな形のカスタマイズ要件にも対応できるので、そういうご要望のある方にもEC Capsuleは合うと思います。

齋藤:
その繋がりで言えば、僕らが携わった食品メーカーの実例があります。ずっと法人向けに商品を卸してきた会社が、BtoCに新商品を販売することになって。でも自社マーケティングを一切したことがなく、どう売ればいいか分からないからアドバイスがほしいとご相談いただきました。そこからさまざまなご提案をして、「デジタルマーケティングをしながらECで商品を売る」という方向性が定まり、現在はそのサポートとしてコーポレートサイト制作と商品開発の両方に携わらせてもらっています。ブランド力を重視している会社なので、いきなりモールで売り出すのではなく、自社ECの立ち上げを軸にプロジェクトを進めています。

河野:
EC立ち上げを軸にするという戦略は、クライアントと決めたんですか?

齋藤:
そうですね。ECの立ち上げは当初のご要望にはなかったのですが、僕たちから提案して決まりました。今回は事業の組み立てから携わっているので、リソースを考慮するとどうしても金額が高くなるんです。でもShopifyなら作られたプラットフォームをセットアップして、予め用意されているデザインテーマを使うこともできるから、構築工数がグンと下がる。浮いた工数を、クリエイティブのブラッシュアップや企画を考える時間に回せるのがとてもありがたいです。

河野:
ECのシステム開発に数百万かかるのって、考えてみれば本末転倒かもしれないですね。本当なら戦略立案やプロダクト開発、撮影などに時間とお金を使うべきなのに。アメリカなんかはそういうやり方でサイトを作っていますよね。Shopifyで安くサイトを立ち上げる分、有名人を起用したり、撮影技術にお金をかけたりして。

齋藤:
いきなり大金を出してサイトを作るのは、勇気がいりますよね…売上の目処が立ってようやく「じゃあ次はここにお金をかけよう」となるのが理想的。

河野:
大金かけてサイトを作ったのに、「なかなか商品が売れないのでこういうマーケティング機能を入れましょう!200万です!」って言われても、担当者だって困りますよね。Shopifyはサイト立ち上げ後にカートの仕組みを再考したり、安価に色んなマーケティングもできるから、精神衛生的にもいい(笑)。

神谷:
そうですね。ブランドによっては「(供給が対応しきれないから)いきなりバカ売れされても困る」というところもありますからね。まずは小さく始めて、ECが軌道に乗ってきたら成長レベルに合わせて機能を追加できるのもShopifyのいいところだと思います。

齋藤:
制作側としても、損失リスクが少ないのはありがたいです。EC Capsuleに関して言えば、基本的に僕たちがアートディレクションをやらせてもらって、撮影などはプロジェクトの予算に応じて外部ブレーンをアサインします。ご要望に合わせてフレキシブルに対応できるので、気軽にご相談いただきたいですね。


日本市場活性化の手段としても
Shopifyの認知度を高めたい

齋藤:
少額でサイトを開設できる分、正直軽い気持ちでShopifyを使い始める人も多いのかなと思っていたんです。でも話をしてみると、意外と本気度の高いクライアントが多い。特にEC Capsuleは初期費用の30万円がいい意味でカギになっているようで。ECを成功させたい気持ちの強い人が、Shopifyを選んできている感じはします。

河野:
このインタビューを掲載するのが「note」というメディアで、読者層はクリエイターが中心です。読者の中には、自身で生み出したプロダクトやサービスの販売を考えている方もいると思いますが、Shopifyはそんな方たちにもオススメだと思われますか?

後藤:
オススメですね。ECのゴールは「自分のプロダクトを売ること」なので、そこを進める近道になるというか。デザイン機能が豊富で、ブランドイメージを効果的に訴求できるので、安心感はあると思います。例え話で言う“巨人の背中に乗る”みたいな。一回乗っちゃえば楽勝でECを始められる。そんなプラットフォームだと思うので、そういう意味では合いそうですね。

齋藤:
写真や音楽データなどのデジタル商品を売りたい人ともマッチしそう。

河野:
noteは記事を「購読」するから、物販思考のある方も多いんじゃないかな。だからShopifyとくっつきやすいだろうし、仰る通り相性もいい気がします。

齋藤:
あとこれは僕たちみたいな制作側の話ですが、Shopifyはパートナープログラムがあるので、色んなパートナーと組めるのがとても新鮮。ECの配送システムに強いパートナーや、倉庫を抱えているパートナーなど、自分たちの専門外の方たちと組むことができたり、EC関連のコンサルティングなら河野さんに相談できたり…横の繋がりを広げながら仕事できるのは嬉しいですね。

後藤:
パートナーの人とは、一緒にShopifyを盛り上げていきたいと思っています。国内シェアがそこまで高くない分、Shopifyを扱っている人を見かけると「今度話しましょう!」という流れにもなりやすい。ライバルではなく、仲間意識がありますね。

河野:
Shopifyのイベントでも、パートナー同士の仲の良さがうかがえます。

齋藤:
カナダで開催されたShopify Unite(Shopifyパートナー向けの公式イベント)は、日本のUniteとはまた少し違いましたよね。規模が大きくて、会場もゲームセンターを貸し切って行うなど遊びゴコロ満点でした。他のEC会社と比べても、イベントの勢いはShopifyがダントツじゃないかな。あの雰囲気を日本に持ってこれたら最高ですね。

神谷:
ECってめちゃくちゃ理系のイメージがあるじゃないですか。Shopifyはなんというか、すごく文系なんですよ(笑)。テクノロジーはしっかりしているけど。

河野:
まさしくそうだと思います。僕がShopifyのエヴァンジェリストになった理由が、EC-CUBEでそういうことをやりたかったからなんですよ。ちょうど8年前くらいかな、僕がEC-CUBEを初めて触ったとき、「今後ECの世界ってめちゃくちゃイケてる世界になるな」と思って。その当時、アーキタイプさん含め、Flashに強い会社がたくさんあったし、ECもそうなればいいなと思ったんです。で、そこから僕なりにECのデザインの重要性を発信していたんですけど、みんなどこか消極的で。さっきの話にあったように、(ECは)売れてナンボだという考え方や、ECサイトで凝ったデザインをするのは技術的に面倒臭いというのがあって、なかなか広まらなかったんですけど、今やっとその素地ができたと思っています。日本のShopify UNITEも、色んな制作会社の人を集めて、大きなイベントとして開催できればきっと面白いですよね。ShopifyやECをやっている人たちが“イケてる感”を出したいです。

神谷:
ですよね。Shopifyの認知度向上のためにも、僕たちとしてはやっぱりお客様にEC Capsuleを広めていきたいです。リリースして1年経ち、色んなニーズが集まってきたので、そこを考慮しながらサービスをアップデートしていきたいと思います。

河野:
僕としては、アーキタイプさんのようなクリエイティブディレクションに強い制作会社さんがEC分野でたくさん活躍されることが、日本のEC業界の発展には重要だと思っています。お客様と話していて思うのは、相談しながら一緒にECサイト構築を進めてくれる会社、そしてクリエイティブ面や運用面を二人三脚で考えてくれる会社って、本当に少ないということ。ECはリリースしてからが本当の勝負どころなのに、作って終わり!というパターンは結構多い・・・だからアーキタイプさんが、そういったビジネスモデルの先導者になってもらえると、日本のShopifyはもっと伸びると思います。

後藤:
今後、Shopifyで「マーケティングやるにはどうしたらいいの?」とか「ブランディングってどうやるの?」という相談がたくさんくるようになると思います。そこをアーキタイプのような制作会社が担えるようになっていけば、ビジネスの可能性が広がって良いですよね。ホームページしか作っていなかった会社が、ブランディングから商品開発まで担当する。そんな事例が、Shopifyを通して今後たくさん出てくると面白いですよね。

齋藤:
僕が最近いいんじゃないかと思っているのは、農業や漁業の生産者側が加工から流通・販売まで請け負って経営する「6次産業化」の手段として、Shopifyを使うこと。街中で行われる物産展って、運営元は結局どこかのイベント会社だから一時的な盛り上がりで終わることが多いらしくて。「商品もお金もこれだけ出したのに…」という農家の方の声をたびたび耳にします。でもそんな人たちもShopifyで商品を売れるようになれば、今まで農協任せだった「売り方」を自分たちで考えられるし、商品の魅力を発信する文化が生まれると思うんです。そうすると地方の名産も、海外にだって直接売れる。Shopifyは越境にも強いから、彼らがノウハウを蓄積していけば、色んな制約に縛られることなく、もっと上にいけるんじゃないかと。自社商品のブランディングが身近なものになれば、損する人もいないと思うし。Shopifyで日本市場が活性化するようなシステムが作られることを期待していますし、僕たちもそのお手伝いができればと思っています。

河野:
そのためにも、今後さらに国内でShopifyの認知度を高めていきたいですね。

齋藤:
Shopifyはあくまでも、一つの事業を成功させるためのツール。なので極論、会社を知ってもらうために名刺を作るような感覚で、ECサイトを作ってもらえるようになれば素敵だなぁと思います。

河野:
ECサイトを作ることを、もっと楽しんでもらいたいですよね。実際にお店を作るときって、みんなワクワクするじゃないですか。フルスクラッチでサイトを作るなら何千万かかっていたところを、Shopifyだったら…って思うと、夢があるし。
僕からアーキタイプさんにお伝えしたいのは、本当にあと1、2年したらECは体験の場になると思います。なので普通のECの枠に縛られず、Shopifyで今以上に面白いサイトを作っていただけることを期待しています。僕も引き続き、ガンガンShopifyをPRしていくので!

齋藤:
嬉しいです。ありがとうございます!

Webビジネスに関するUI/UXデザイン | 株式会社アーキタイプ
https://www.archetyp.jp/
Shopify導入・構築・運用パッケージ | EC Capsule
https://cpsl.jp/ec/
ブランディング・アズ・ア・サービス | 株式会社フラクタ
https://fracta.co.jp/