見出し画像

ワインの時事通信 2023年の10大ワインニュース

こんばんは。

2024年もとっくに明けてしまいましたが、昨年に引き続き、フランスのフィガロ紙にて2023年に起こった10大ワイン&蒸留酒に関するニュースが取り上げられていました。面白かったのでご紹介します。

1.シャンパーニュ:メゾン・マムのローラン・フレネ氏が死去

シャンパーニュを背にするローランさん
(画像をクリックすると元記事に飛びます)

シャンパーニュメゾン「メゾン・マム(G.H. Mumm)」の醸造責任者を務めたローラン・フレネ(Laurent Fresnet)氏が2023年5月31日に病により死去した。賢明で厳格でありながらも晴れやかな性格の持ち主だったフレネス氏は、ニュージーランドや南アフリカ、ポルトガルや南フランスでの修行を積んだ後に地元シャンパーニュ地方に戻り、いくつものメゾンとコラボし、クロード・カザル(Claude Cazals)やアンリオ(maison Henriot)を経て、2020年にメゾン・マムに仲間入りし、地域の発展に貢献した。彼は特にピノノワールの栽培に注力し、仲間たちからは「天才醸造家」と呼ばれていた。

2.スコッチウィスキーが史上最高価格で落札

マッカラン

2023年11月にイギリスの老舗オークション会社、サザビーズでザ・マッカラン(Macallan)の1926年生製スコッチウィスキーが約219万ポンド(約4億1千万)で落札され、2019年の落札(同年のマッカラン)価格の記録を更新した。このウィスキーは1926年に醸造、オーク樽で60年間熟成され後に瓶詰めされたもので、生産数は40本。外観は非常に黒みを帯びている。サザビーズによると、この落札はワインや蒸留酒を併せてもオークション史上最も高価な取引となった。

3.チャットGPTが生成した「世界で最も優れた10のワイン」は・・・・・・

シャトー・マルゴー

世界で最も優れたワインを10銘柄選ぶ場合、有識者であればなおさら個人の主観に寄ることが大きいために意見が割れることが多い。しかしこの質問をChatGPTに問いかけた結果、「ワインの好みについては人によって異なる」という前提を長々と踏まえた上で、醸造技術や生産地、ぶどうの品種、収穫年等の要素を客観的に判断した結果、10のワインのうちフランスのワイン(シャトー・マルゴー、ロマネ・コンティ、シャトー・ディケム、シャトー・ラトゥール、シャトー・オー・ブリオン)の5銘柄を取り上げた回答を生成した(それぞれ銘柄とヴィンテージも記載あり)。
残りはアメリカ、オーストラリア、イタリア、スペイン(詳細は元記事もしくはチャットGPTもしくはこの記事にコメントをお寄せください)。

4.ボジョレー:ナチュールの次世代を担っていた若き生産者、ジュリー・バラニー氏が急逝

笑顔が素敵なバラニー氏

ボジョレーのフルーリーで自らのドメーヌを立ち上げ、ナチュールワインを手掛けていたジュリー・バラニー(Julie Balagny)氏が2023年7月1日に45歳の若さで急逝した。パリ出身の彼女はペルピリニャンやカオール、ニームなど南仏のぶどう畑に従事後、マルセル・ラピエールやイヴォン・メトラとの出会いを経て、2009年にボージョレー地方に活動拠点を移した。フルーリーの美しくも誰もが手をつけたがらないような急勾配の丘のぶどう畑を手に入れ、手作業でぶどう栽培を開始。自身を「パリジェンヌの中のパリジェンヌ」としながらもボジョレーの地で自然派ワインの生産に貢献。突然の死を迎えたのは知人の結婚式に参列している最中だった。

5.2023年フランス最優秀生産者50人

1位はボルドーの
レ・カルム・オー・ブリオンのギヨムさん

フランスには優れたワイン生産者は数百人もいるが、その中でも、ワインを専門としたコンサルタントや記者などからなるフィガロ紙のワイン部門が選んだ50人は、フランスワインの卓越性と多様性をしっかり反映している。彼らはワインの品質やテイスティングに基づいて選ばれただけでなく、人としての個性やカリスマ性、真正性、活力、イノベーティブな精神、そして多様な世界自己主張し、ますます不安定になる気候変動に対処する能力を基準に選ばれた(生産者リスト(記事)は画像をクリックすると表示されます。ご不明な点があればコメント欄等にて承ります)。

※この中に去年訪れたボルドーの生産者さんもリストアップされていました。なんと1位に輝いています。このワイナリーでは多くのことを学んできたのでこれから記事にしますが、それにしても私、見る目あるなぁ(偶然の賜物です)

6.ワインの栄養成分表示が義務化に

ワインの例外はだんだん少なく

ワイン生産者は、伝統的にフランスの市場(今ではEU市場へ拡大)で販売される食品に適用される多くの規則から免除されてきた。しかし去年12月にワインと蒸留酒のラベル表示に関する法律がEUにて施行され、これまで免除されてきた原材料やカロリー、糖分などの明示が義務付けされることに。ただしラベルに直接表示する代わりにQRコードのみ貼付し、スマートフォンから情報提供する仕様の選択肢も可能となったことが物議をかもしている。食に対する消費者の関心が高まる中、この透明性の要求は良くも悪くも業界全体に影響を与えることに。

7.ワインよりもビールが売れた(かも)

スーパーには様々なビールがワインと並ぶ

ブラウン、ホワイト、ブロンド、レッド……フランスでも(ワインではなく)ビールへ関心が高まっている。スーパーマーケットの棚にはビールが溢れかえり、これまでフランスはワインの国として知られてきたが、ビックデータ解析に強い民間会社の調査によると、スーパーにおけるビールの売上高が2023年に初めてワインを上回る可能性がある。何年にもわたってフランス人のアルコール嗜好を調査しているsowine/Dynataが実施した調査によると、好きなお酒について55%のフランス人がワインと回答したものの、56%の人がビールを選択しており、ビールがワインをしのぐ結果に。続いてシャンパンが37%、カクテルが29%、シードル22%の順位(回答は複数選択可)。ビールについてはとりわけ最も軽いラガービールが人気の模様。

8.自然に振り回された一年

2022年はフランス国内の多くの生産地にとって恵まれた一年となった。しかし2023年は収穫直前に各地で激しい霜の被害や長きにわたる酷暑と水不足、ベト病の感染拡大といった不幸が起こり、コルシカやアルザスなど一部の地域以外は不運なヴィンテージになるかもしれないが、結果は瓶を開けてから。

9.ボルドー:耕作放棄畑対策に補助金

畑は手入れしないと大変なことに

昨年11月、欧州委員会がボルドー地方(ジロンド県)の耕作放棄されたままのぶどう畑からぶどうの木を除去する費用を補助する計画を承認。これにより約千の生産者が委員会や国等から直接補助金を受け、畑を整備する。ぶどうは適切なタイミングで収穫されないとflavescence doréeというバクテリア由来の感染性の病気が畑にまん延する場合がある。この計画はこの感染拡大を阻止することを主たる目的とするも、ぶどうの栽培を減らすことで消費が減っているワインの生産量を間接的に減少させることも狙いとされている。

10. ジャン=クロード・ヴァン・ダムがウイスキー事業に参画

誰かに似ている

ベルギー出身のハリウッド俳優、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは当初、アメリカでバーボンウイスキーに投資するつもりだったが、「とある出会い」がきっかけでアイルランドのモルトウイスキーメーカー「オールド・オーク(Old Oak)」への参画を決意。投資だけではなくこのメーカーの新商品の共同責任者として商品造成にも携わる。なお、現在アメリカではアイリッシュ系のウイスキーがブーム。

感想

コロナ禍が落ち着いた今、いろんなところで世の中の変化を実感していますが、ワインを取り巻く世界もきっと同じで、「世界のスタンダード」に合わせることが一方では好まれ、一方では余儀なくされる状況にあり、個性や古き良き伝統が失われている感じがして寂しい気持ちになりました。たとえれば日本の住宅も世界のスタンダードに合わせる形が好まれ、余儀なくされ、昔はよくあった茅葺屋根の家は、今は維持をするにもお金がかかるから選ばれず、そうすると手入れができる職人さんもいなくなるので、このような家はもうだれも見向きもされなくなっていく、みたいな(なんか違うか)。

参考 2022年の10大ニュース


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?