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ワインの時事通信 2022年の10大ワインニュース

こんばんは。
とっくに新しい年が明けてしまいましたが、フランスのフィガロ紙にて2022年に起こった10大ワインニュースが取り上げられていましたので、ご紹介します。


1.ボルドー:サン・テミリオンの格付け見直し、新たに1シャトーが昇格

Château Figeac /Le Figaro

2022年9月、ボルドーのサン・テミリオン地区のAOCのひとつ、サンテミリオン・グラン・クリュの格付けの見直しが10年ぶりに実施された。今回、新たにシャトー・フィジャック(Château Figeac)が最上級となるプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに昇格。
プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに格付けされているのはこのシャトーのほかに前回(2012年)昇格したシャトー・パヴィ(Château Pavie)の2シャトーとなる。

※サン・テミリオン地区の格付けは10年毎に見直しが行われているが、評価の仕方など関して毎度騒動が起きている。これまでプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAにあったシャトー・オーゾンヌ(Château Ausone)、シャトー・シュヴァル・ブラン( Château Cheval Blanc) 及びシャトー・アンジェリュス(Château Angélus)は今回格付けの申請をせず(この格付け制度はシャトーからのエントリー制)、除外となった。

サン・テミリオンの格付けについては下記記事参照

2.ブルゴーニュ:ルイ=ファブリス・ラトゥール氏が死去

Louis-Fabrice Latour Jean-Christophe Marmara/Le Figaro

ブルゴーニュ地方の老舗メゾンのひとつ、ルイ・ラトゥール(Louis Latour)を守り続けてきたメゾンの当主、ルイ=ファブリス・ラトゥール氏が9月5日に死去した。
ルイ・ラトゥールは1797年創業、ラトゥール一族によって2世紀に渡って守り続けられたブルゴーニュの屈指ネゴシアンのひとつ。ルイ=ファブリス氏は11代目の当主だった。

3.ビールはお好き? 

Quelles sont les marques de bières qui valent le plus cher sur le marché mondial ? / Adobe Stock

今年はビールがよく売れ、ビール産業に追い風が吹く1年だった。
ブランドの価値評価を行う戦略コンサルティング会社のブランド・ファイナンスが、毎年実施しているビールメーカーの価値評価ランキングを発表した。
1位はメキシコのコロナビールで、かの「新型コロナウィルス」の風評被害にも屈せず4年連続で首位となった。

※ビールメーカートップ10の結果及び価値(ユーロ換算)
1. Corona : 6,9 milliards d’euros
2. Heineken : 6,80 milliards d’euros
3. Budweiser : 5,52 milliards d’euros
4. Bud Light : 4,43 milliards d’euros
5. Modelo Especial : 3,84 milliards d’euros
6. Snow : 3,54 milliards d’euros
7. Kirin : 3,15 milliards d’euros
8. Miller Lite : 2,85 milliards d’euros
9. Coors Light : 2,85 milliards d’euros
10. Asahi : 2,46 milliards d’euros
※太字(日本のメーカー)は私が勝手に付けました

4.シャンパーニュ:クロード・テタンジェ氏が死去

Claude Taittinger , ancien président du groupe et du champagne Taittinger /  SDP

シャンパーニュ地方の老舗メゾン・テタンジェ(Taittinger)の一族で3代目当主を務めたクロード・テタンジェ氏が1月5日に死去した。テタンジェは1932年に創業、現在にいたるまで家族経営が行われているシャンパーニュ地方の名門メゾン。
クロード氏はアメリカでのマーケティングでテタンジェの知名度を上げることに成功。その後もアーティストとコラボした「テタンジェ・コレクション」や「ピエール・テタンジェ(クロード紙の父親で初代当主)国際料理賞コンクール」を始めるなど、独自のクリエイティビティを開花させた。
一方、業界では上品で教養豊か、情熱的にシャンパーニュを愛した男としても知られていた。

5.フランス人が好きなワインは・・・

Rouges, blancs, rosés, que préfèrent les Français ? / © Adobe Stock

フランス発、ブドウの栽培からワインづくりまでをゲーム感覚で楽しめるアプリ・Hundred Daysのローンチ時にワインを常飲しているフランス人2,000人を対象に実施されたアンケート調査によると、フランスのワイン愛好家は意外にも「生産地」より「品種」でワインを選んでいることが明らかになった。好きなワインはシャルドネが1位(45%)、次いでボルドー(33%)、ピノノワール(25%)、ロゼ(24%)となった。
※この質問は「あなたの好きなワインは何ですか」で、これに対する回答方法は選択式ではなく自由記述形式と思われる

また、回答者の半分は自分の好きなワインや過去に飲んだことのあるワインばかりを選ぶ傾向にあるが、9割以上の人は今後もっと新しいワインを開拓したいと回答。その一方、大多数がワインの醸造方法の違いを理解するといった新たなワインを開拓するための努力をしていないことが明らかになった。フィガロ紙はこれを新しい「フレンチ・パラドックス」と指摘している。

6.ベルナール・アルノー氏がイーロン・マスク氏をしのぐ

Bernard Arnault, président-directeur général du groupe de luxe LVMH. ERIC PIERMONT / AFP

世界長者番付にて、高級ワインブランドをはじめ数多くの名だたるラグジュアリーブランドを持つLVHMグループのオーナー、ベルナール・アルノー氏がテスラ社やツイッター社のオーナー、イーロン・マスク氏を超えて1位となった(実際は株価の兼ね合いでしのぎあっている状態)。
ワインにおいてはベルナール氏の方が圧倒的に優位。アルノー氏本人が高級ワイン愛好家であり、シャンパーニュやボルドー、ブルゴーニュの各地に特級畑や名門ドメーヌを所有しビジネスを展開‥‥‥とはいえ、彼はワインの分野でも、マスク氏のような「ところ構わず」な手法を取ってはいないことはいうまでもない。

7.フランス人の飲酒の傾向に変化

Quelles sont les tendances actuelles des consommateurs de vin ? Georges Gobet / AFP

ワインの調査・マーケティングを手掛けるSoWine社が4月に行った調査によると、フランス人の「ビール消費」が顕著に増えていることが分かった。
ビールへの関心の高さがますます高まっており、ビールに費やす支出も増加している。
その他の傾向としては、簡潔に「消費者のワインや酒に関する教養への関心の高まり」「ワインを選ぶ決め手は(質や産地よりも)価格」「好みの産地はボルドー、ブルゴーニュ、ついでシャンパーニュ」「若者中心に「ビオ」がキーワード」「オンラインショップでの購入の増加」「カクテルの人気が上昇」が上げられている。

8.ペルノ・リカーグループ、ロゼ市場に進出

Alexandre Ricard, PDG du Groupe Pernod Ricard, ici dans son bureau, au siège de sa société, à l'occasion d'un entretien avec Le Figaro. François BOUCHON/Le Figaro/SDP

ワイン・スピリッツメーカーの業界2位のペルノ・リカーグープが5月、フィガロ紙のインタビューにてシャトー・サント=マルゲリートに参画したことを公表。今後はロゼの世界的な流通にも力を入れていく意向を示した。

9.ドメーヌ・アルテミスがアンリオと合併

Avec cette fusion, Henriot accélère sensiblement sa montée en gamme. Maison Henriot Mémoires


ワイン業界にとっては青天霹靂の出来事。9月30日、フランスのラグジュアリー・ブランドのオーナーで億万長者のフランソワ・アンリ・ピノ―の関連グループ、ドメーヌ・アルテミスが、19世紀創業以来一貫して家族経営を行ってきたシャンパーニュの名門メゾン、アンリオと合併することが発表された。今後はアルテミス・ドメーヌがアンリオの主要株主となり、アンリオはこの資金でブランドのアップセリングに力を入れていく。

10.国内スピリッツ消費量、ラムがウィスキーを上回る

Whisky Live Paris 2022 Partager Imprimer

ジンやラムをはじめとするスピリッツ(蒸留酒)の消費が増加の傾向に。
特にジンとラムの増加が顕著で、ラムはフランス国内スピリッツ消費量が最多いウィスキーをしのいだ。
これらは単体での消費が増えているというよりも、カクテルの人気が復活してきていることにより需要が増えているもの。

感想

ワイン大国のワインのニュースにワイン以外のネタが結構上がっているのが面白いと思いました。また、ワインは高級品ととられることが多く、実際、億万長者が絡んでいるネタが散見されるので、やはりおいしいワイン作りを守り続けるには先立つもの(お金、コネ等)がないと難しいのだろうと改めて思いました。

参考:ちょっと似た話


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