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本日の本請け(2023.8月)

読んだ本と、合わせてそのとき食べ飲みしたものを毎月記録しています。

『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光(新潮文庫)

紙だからこその仕掛けで話題!
というようなネット記事を見かけ、気になって購入。
帯が数種類あったのだけど、タイトルとも合っていてセンスある!と思ったこちらにしました。

透きとおった飲み物がいいよねとレモネードを作った

あまり本を読み慣れない人にこそ、読んでほしいと思った作品。
自分は中盤で出てきたヒント、あるひとの名前で「仕掛け」がわかりました。
本をよく読む人は、当てにいくつもりでいったら楽しいかも!

読みやすい語り口で、さらりと読めました。
唯一、異母兄弟の兄については、「本を読まない人間」として設定したのならもう少し好感の持てるキャラクターにしてもよかったんじゃないかな、「本を読む人間」がそんなに偉いのか、という後味が残りました。

先月読んだ『ハンチバック』で紙の書籍への愛を謳う人が憎かった、というのが出てきたけれど、自分は実はケータイ小説が流行ったときに、これでいろんな「仕掛け」ができるようになるなー!とむしろ思ったんですよね。

例えば、ミステリー小説で、紙の本だと後ろの方を開いてうっかり犯人が誰か見てしまうってこともあり得るけど、ケータイやパソコンで小説を読んで、ある一定のところまでスクロールして、さらにクリックしないと犯人の名前を表示しない、とかそういう仕掛けにすることもできる。
ホラー小説で文字を突然赤くしたり、勝手に文字列が進んで表示されて呪いの言葉みたいなのをずらっと出す、みたいなこともできる。文字が急に大きくなったりフォントが変わったりとか。

でも、そういう方向には進化せずに廃れちゃって、あれ、と思ってました。

電子でもそういうの、やったら面白そうなのになー、なんて。難しいのかな。

『心臓の王国』竹宮ゆゆこ(PHP研究所)

書店に行ったとき、表紙が印象的で帰宅した後結局電子で買ってしまった作品。

「せいしゅん」っぽい、色鮮やかなゼリーを選びました

思った以上の、全力疾走したかのような読後感!
とにかく文章に勢いがある。どういうことなのかは、最初のプロローグを読んでいるときなどでなんとなく勘付いたのですが、結末までジェットコースターで連れていかれた感覚があります。劇場版、見た〜!っていうような感覚。

ゼリーは「花火玉」という三色ゼリー。パチパチ飴っていうのがついていて、上に振りかけるとパチパチ音がするものでした。青春っぽいからチョイス。

『動物たちは何をしゃべっているのか?』山極寿一、鈴木俊貴(集英社)

ゆる言語学ラジオが好きでよく聴いているのですが、「動物言語学者」の鈴木さんが出ていた回がとても面白くて、購入を決意。

言語学のところにあるのか、生物系のところにあるのか、書店をうろうろし、結局検索機で見つけました。理科系のところにあった。

暑いので、クリームソーダ。表紙が黄色っぽいのでレモンソーダにしました

森に入ってゴリラと生活したことのある山極さん、山の中で鳥を観察して論文を書いた鈴木さん。どちらも自然の中で動物を研究してきたふたりならではのお話。対談形式で進みながらも、各章の最後にまとめがあり、冗長になっていません。

鳥や図がたくさんで、読みやすくできています。
カバー外したその下も、かわいいんだ。

これまで、人間にできて動物にできないことという視点中心に研究が行われてきたこと、人間の世界の見方だけではない研究をしなければ、これ以上は望めないかもしれないということが印象に残りました。

人間のコミュニケーションは今、文字だけに頼ってきているけれど本来はそうではなかったこと。これはひしひしと感じます。
この本を読んだ後、以下の動画を見たら実際の鳴き声や映像が聴けて、より理解が深まった気がしました。楽しかった!

『失われたものたちの本』ジョン・コナリー、田中志文/訳(創元推理文庫)

「君たちはどう生きるか」を見た後、いろいろ調べていてこの本が出てきたので読んでみました。

抹茶白玉アイスと、煎茶。映画が戦時中の日本のものだったので

この本について、見つけた記事はこちら。

物語、が絶えかかっている気がする現代において、ここまで物語にどっぷり浸からせてくれるのがすばらしかった。子どもの読む児童書だと思うんですが、けっこう長いし、残虐。
中高生くらいのときに『本当は恐ろしいグリム童話』を読んだのですが、それを思い出しました。

人生についての本だった。よかった。

映画のタイトルが『君たちはどう生きるか』だったのも、納得。
そして映画抜きに、この本だけでもかなり読み応えがあり、人生や生き方をどう捉えるか、名言も多くあり、とても面白かったです。

『1Q84―BOOK3〈10月-12月〉後編』村上春樹(新潮文庫)

ついに最後まで辿りつきました。長かったなと思いつつ、最後の方はほぼ2倍速で聞いてたので、なんかさらりと終わった印象になりました。

函館に行ったお土産にもらった林檎パイ

村上春樹を最初に読んだのは学生のときだったのですが、「うーん」と思っていて、それがどうしてだったのか、今になり何が「イヤ」だったのか、よくわかった気がします。
物語の役割を登場人物や舞台装置に振るときに、自分にとって耐え難いものを使われるのが辛抱ならなかった、そういうものの感性が圧倒的に合わないんだなー。

でも、手をつなぎあったふたりがそれだけでどんな孤独も生き抜いてきた、というのはロマンだなーとも思う。

これからも村上作品は読むかもしれないし、面白いと思うところもあるけれど、両手をあげて好きだとは言えないしそれは自分の感情の問題でもう仕方ないなー、と思いました。

『ナイフをひねれば』アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳(創元推理文庫)

ゲラ版先読みキャンペーンに当選し、一足先に読了いたしました。
いやあ、面白かった〜!ゲラ版ってどうやって来るんだろう?と思ったらA4の紙の束が送られてきたのでなるほどそうか!とちょっと笑ってしまいました。
しばらくリュックサックに常に持ち歩き、チャンスがあれば広げて読んでいました。本よりも減っていく量が如実にわかるので、「ああ、もう、真相が目の前!」と楽しかった。

ブルーベリーレアチーズケーキとコーヒー。紙の束、地味に重かった

謎めいた探偵ホーソーンと、その手腕を小説にするためついていく語り手の小説家、作者と同名のアンソニー、ふたりの凸凹コンビが事件を解決するシリーズ4作目です。

なんだかずっと仲の悪いふたりの付き合いも、なんといっても4作目。しかも今作は、アンソニー自身が殺人事件の容疑者となってしまいます。
いつもいつも余計なことを言ったりやったりして、事件に巻き込まれてしまう語り部の主人公。最初の頃、そういうところにひやひやさせられっぱなしだったのですが、今回はいつもに増してピンチ過ぎて一周回ってなんだか愉快になってきます(笑)。

アンソニー・ホロヴィッツは絶対に、手がかりをしっかり示しているはず。注意深く読めば、あるいは……と犯人を当てようと意気込んでいたものの、(今思えば)わかりやすい誘導に乗っかってしまった!
最後まで読んだときに「はー、面白かった!」と言える極上のエンターテイメント。早速次作が楽しみでなりません。

『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』坂井豊貴(岩波新書)

『世界のいまを知り未来をつくる評論文読書案内』に出てきた本を読もう!という個人的挑戦のうちの一冊。
今ある現実が「こう」だから、「これ」が民主主義っていうものなんだ、というなんとなく受け入れてしまっている現実をよく考えてみることのできる一冊でした。

ぶどうとスイカをもらったのでサングリアにしました

主権って何?選挙に行って、国民の代表として国会議員を選ぶことで、本当に自分たちの生活に自分の意思が反映がされるの?
モヤモヤしても、結局は公民は覚えればいいんだー、なんて結論で通り過ぎてきてしまいました。
主権とか、民主主義ってわかろうと思っても、雲を掴むような話な気がしてきます。自分がわかっていないのかな、と思いもするしそれもあるだろうけれど、現実において現行の制度で「民主主義」が達成されていないからこそ、もしかしてそういう気がするのかも。
そのモヤモヤ、おかしさがどこにあるのかが読んでいるうちに解きほぐれていきました。

「小平市の都道328号線問題」が興味深かった。
今まさに、札幌のオリンピック問題について、住民投票はやらないのか、民意が反映される得るのかと気になっていたので、身につまされました。メカニズムデザインについて、詳しく知りたいと思う。

飲み物は自分で作ったサングリア。憧れていて、いつか自分で作ってみたいと思っていたので、果物をもらったことを契機に挑戦してみました。参考にした(あくまで参考)のは以下のレシピ。

『平家物語 犬王の巻』古川日出男(河出書房新社)

アニメ映画になったものの、見に行きたい!と思っているうちに公開が終わってしまい残念に思っていたのですが、オーディオブックで発見!
比較的短い長さだったこともあり、早速聴きました。

暑くて自家製レモネードばかり飲んでいました

室町時代を舞台に、世阿弥と人気を二分したといわれている能楽師・犬王の実話をもとにした小説。犬王と盲目の琵琶法師・友魚(ともな)を中心とした物語になっています。
文体がとても変わっていて、まるで謡うよう。
オーディオブックで聴くと、他の小説とかとはまるで異なっていて面白かった!
お話自体は、神の視点によって物語られているので、犬王と友魚がどのように友情を深めていったのか具体的な詳細な描写はありません。映画にはそのへん、出てくるのかな?やっぱり映画見たくなってしまいました。

『マロニエ王国の七人の騎士』岩本ナオ(小学館)

『金の国、水の国』が好きで、購入を始めた漫画。8巻が出たので、1巻から全部読み直しました。

自分は漫画が好きなのですが、伏線を回収していたり、コマ遣いが素晴らしかったりと「すごーい!」と思ってぐっとくることがたくさんあります。ただ、岩本さんの作品ではそういう……理屈を抜きにして、いきなり胸にずどーん!と来て、自分でもなんで泣いてるのかわからない、というときが多くて。とても沁みます。

今回は36話のラストでぶあーっとなってしまいました。

チーズとはちみつを使ったパンを探して買ってきて食べました

最後の話でさらに続きが楽しみになりました。
試し読みもできますので、ぜひ。

『姑獲鳥の夏』京極夏彦(講談社文庫)

新作の発表を見て「えー!」と大きな声を出してしまいました。
大学生の頃、どっぷりハマっていた京極堂シリーズ。17年ぶりの最新作!

よよよよ読み返さなきゃ!と思いましたが、実家に置いてあったものは処分されてしまっていました……。というわけで、思い切って電子書籍35冊を大人買い!

9月18日までに最新刊まで読めるかな?と思いながら読み始めたら、一気に行ってしまいました。

京極さんといえば、ノベルスでも文庫版でもその読みやすさ重視の版組みが有名ですので、電子書籍版が同じようにぐわっと読めるか不安だったのです。文字の大きさ、表示のさせ方によって切れ目が変わってしまうし……でも心配は無用でした。元から読みやすい表現、文章だったんだなあ、と再確認しました。

丘珠空港のオリジナルコーヒー。私は関口と違って、珈琲の味がわかる、はず

電子書籍だと、わからない漢字の読み方がさっと調べられて便利でした。

内容びっくりするくらい覚えてなくて普通に真相がはっきりとわかるまでぞくぞく楽しみました。真夏に読めたのも大きい。

そして今になって、自分の中でのお化けや幽霊、その他の出来事についてとても影響を受けてるなあって思いました。例えば絶対あとで痛い目見るうまい話やそんなことあるわけがないおいしい儲ける方法なんかがあったとして、そういうものの被害を今まで避けてこられたのは、かなり、このシリーズに影響を受けたためなんじゃないかなって。

『魍魎の匣』京極夏彦(講談社文庫)

勢いのままに、シリーズ2冊目も読了。

白桃のスムージー。雨に降られて入ったお店のもの。とてもおいしかった

シリーズで一番好き!と思っていたのが『魍魎の匣』ですが、なんで好きだったのかすっかり忘れていました。自分、木場修が好きなんです。特に今作の独白が好きでした。

この言葉、この説明、大学生のときに読んだけど、果たして意味をわかっていたのかな?
ああ、この土地は旅行で行ったから多少脳内で思い浮かべる景色が変わったかも、といろいろ感慨深いものもありました。

『狂骨の夢』京極夏彦(講談社文庫)

シリーズ3冊目を再読。
電子書籍の書影は、本当は色が本ごとに違うのですが、Kindleで見ると全部白黒なので今どれを読んでるのかわからなくなります(笑)。

冷たいものばかりじゃいけないと、カモミールティーを飲みました

一度読んでいるのでなんとなくのトリックは覚えているのですが、その状態で読むと物語の作り方のうまさが際立つというか。
複数の登場人物たちが配置されていて、有り得ないような事態の説明に一役買っているのがうまいな〜と思いました。

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