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延命治療といわれてどんな治療をするのか言えますか?

遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
詳しくはこちらのホームページから。

遺言作成の御依頼を受けると、相談のどこかで必ず「尊厳死宣言」のご説明をします。
自分が意識が無い中で、延命治療をどこまで希望するかについて、事前に文書の形にしておくものです。
内容はほぼ同じもので「リビング・ウイル」と呼ばれているものもあります。

尊厳死宣言や延命治療のお話しをすると、多くの人が自分の延命治療については「希望しない」ということをおっしゃられます。
ただ「希望しない」と話される多くの人が想像するのは、意識がない状態で、気管切開して人工呼吸器をつけ、色々な点滴のチューブが身体に取り付けられ、場合によっては胃ろうも付いている姿です。
気管切開までしないけれども人工呼吸器を付けるのはどうですか?とか、心臓が止まっても心臓マッサージや電気ショックによって回復する人もいますが、それも希望しませんか?と言われると非常に困った顔をされます。
つまり延命治療の認識がまちまちなのです。

また、自分自身の延命治療となると皆さん回答が早いのですが、配偶者が意識不明で搬送された場合、自分の子どもが事故に遭って意識不明で搬送された場合、と想像してもらうと回答に詰まられます。
お坊さんでもある私としては、そこで詰まられるのは「自分の命は自分のものだ」という意識があるからでは無いか、と感じます。
しかし、その自分のものである命はどこからやってきて、亡くなった後はどこに行くのでしょうか?
よく分かっていないのに、私のものだ、と考えて、勝手に取り扱って良い物なのでしょうか。

延命治療を希望しない理由として挙げられるものの一つが、一度始めると止めることができないから、というものがあります。
しかし、現在では医療機関が「終末期/末期状態における延命治療中止に関わるガイドライン」のような形で、基準を設けています。
九州大学のものを読みましたが、延命治療を希望しない場合も、中止する場合も、本人の希望が大きな要素となります。
ただ多くのケースでは意識がない状態でしょうから、意識がある時に文書で作成しておかないと、本人の希望として正しく伝わりません。

文書で作成するものとしては、公的には「公正証書」で作成することができます。
民間では財団法人日本尊厳死協会の「リビング・ウイル」や自分で内容を決めて書くこともできます。
公正証書で作成すれば、作成した本人の意思能力の証明にもなります。
一方で、医療措置の具体的な内容まで細かく書くことができます。

さて、そもそも回復の見込みがあるかどうか分からない中で、なぜ延命治療を行うのでしょうか?
延命治療を行うメリットとしては、三点あるかと思います。
一つ目は、回復の可能性を継続できること。医療関係者は常にベストを尽くされますが、それで意識が回復するかどうかは、様子を見てみないと分からないところがあります。
二つ目は、こうした意識のない患者に対しての治療は医療機関で行われるため、家族が看病や介護の負担から解放されることです。
三つ目は、患者さんが亡くなるまでに少し時間ができるので、葬儀や相続のための準備に時間が取れることです。

逆にデメリットも三点あると思います。
一つ目は、本人が希望していなくても行われる可能性があります。尊厳死宣言があったとしても、家族が希望したり、医師が治療を行うと決定すれば、延命治療が行われます。
二つ目は、医療費の負担が大きくなることです。保険診療であれば高額療養費の範囲内にはなりますが、それでも長期化すればそれなりの金額になります。
三つ目は、患者の意識が回復するかどうか分からないまま時間が過ぎていくので、家族が不安定な気持ちのまま長期間過ごすことになります。

メリット・デメリットだけで推し量れない部分もありますが、「もし書かなかった時」に、意識のない自分自身を前に家族がどう判断することになるのかを考えていただき、判断いただきたいと思います。

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