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民間の医療保険、入る?入らない?

「保険会社から医療保険の案内が来たんだけど、入ったほうがいい?」
「医療保険に入るくらいなら、保険料分を資産運用に回して積立投資をしたほうがいいって聞いたんだけど、本当?」

他にも似たような質問が連続してあったので、「実際、いるの?いらないの?」について考えてみたいと思います。


民間医療保険の不要論、いつから?

民間の医療保険の不要論が出始めたのは、いつぐらいからでしょうか。

わたしが20代だった1995年から10年間くらいは「医療保険は入って当然」みたいな風潮でした。

日本の公的医療保険には、高額療養費制度というとても優秀な制度がありますが、当時はこの制度のことを説明しているのは大病院くらいでしたし、今のような情報社会でもなかったので、多くの人はこの制度の存在を知りませんでした。ほとんどの人は、「公的医療保険といえば窓口での支払いが1割〜3割」くらいしか知らない印象でした。

この制度を知っていたのは、看護師さんや医療事務をされている方、そんな方々から教えてもらった人、くらいだったのではないかと思います。なので、高額療養費制度を申請することなく「病気や怪我で入院したら自己負担が大きいから大変!」という話になっていました。

わたしはFP資格で勉強したので、「どんな医療保険に入ったらいいか?」と相談を受けた時は、「もし入るなら、こういった制度があるので大きな保障はいらないですよ」と答えていました。

では、いつから民間医療保険の不要論が出始めたのかというと、肌感覚では2010年ごろからのように思います。

日本で2008年にiPhone3が販売され、2009年にはAndroidスマホが登場し、 その後、スマホが急速に普及しました。それとともに、インターネットに繋げば、いくらでも情報が取れる時代になったので、徐々に高額療養費制度や、会社員・公務員なら傷病手当金もある、といった情報が広がっていきました。高額療養費制度については、今はどこの病院でも入院時に教えてくれますので、安心して入院できます。

医療費には自己負担限度額が設定されているし、会社を休んでも傷病手当金がもらえる→病気やケガで入院しても、あまりお金はかからない

この認識の広まりと同時に言われるようになったのが「民間の医療保険に入っても、払った保険料の分だけ給付金が受け取れるわけではないので損」です。

個人年金保険はさておき、医療保険や死亡保険といった掛け捨てタイプは、みんなでお金を出し合って困っている人を助ける仕組みなので、自分が払った保険料を必ずもらえるかどうかはわかりません。

終身払いで最低限の保障にした医療保険だと、40代くらいまでなら年間の保険料は15000円〜25000円ほどです。平均寿命まで生きたとしたら、保険料の総額は100万を超えます。1回も入院しなければ給付金はゼロだし、度々入院した場合は数十万円ほどです。このようなことから、民間の医療保険は不要、という意見が多くなっているのだと思います。

加入の是非は「懐事情と気持ち」による

では、民間の医療保険は不要なのか、というと「あなたの懐事情や気持ちによります」としか言えません。

たとえば、怪我や病気で入院することになったとします。手術をして、その後入院したままリハビリもする。退院するのは2、3ヶ月後。

こんな場合、その間にどんなことが起こるか、金銭的に困ることはないかを想像してみます。

(例)

・病室は大部屋でも寝られる?
→2人部屋や1人部屋なら差額ベッド代がかかる
・着替えはどうする?→レンタルするならレンタル代は1日数百円の病院が多い
・病院食は自己負担1日1500円くらいかかるけど問題ない?
→元気でも食費はかかってるので問題ない or 普段の食費はもっと安いから高くついて困る など
誰か時々見舞いなどに来る?
→交通費はかかる?かからない?
・会社員なら休んだ分の給料は?有給使い果たしたらどうなる?
→傷病手当金の受給要件に該当すると、給料の3分の2がもらえる(月収30万円なら1日あたり6600円がもらえるイメージ)。給与の3分の1はなくても暮らせる?
・退院時には、窓口の会計での支払いをしても負担にならない?
→健康保険による治療なら高額寮費制度が適用されるので、平均年収くらいなら月9万円弱、3ヶ月入院なら27万円くらいかかるが、貯蓄を崩しても痛くない?
・子育て中なら自分が入院中は誰が面倒を見る?
→パートナーが全部できる or  食事や家事は民間のサービスを利用する or  親が助けてくれる など

今は急性期病院なら2週間ほどで退院を促されるので、1ヶ月以上入院することは少ないですが、病気やけがの治り具合や重症度によっては、数ヶ月間の入院期間になることもあります。

ですので、念のために重めの病気やけがで3ヶ月くらい入院した場合、貯蓄からどの程度までならお金を出しても生活できるか、そのお金を出しても安心して生活できるかを想像してみるといいと思います。

もし、会社員・公務員で平均年収くらいをもらっている人なら、入院時に「30万円+1ヶ月の生活費」が難なく出せて、生活費の6ヶ月〜1年分が緊急予備費として手元に残るなら、医療保険に入らなくてもいいと思います。

それくらいのお金がある人は入らなくてもいいのですが、貯蓄額だけでは割り切れないのが、医療保険の加入の是非なのです。

不思議なもので、仮に貯蓄が5000万円あっても「貯蓄を崩したくないから医療保険に入っておきたい」という人もいます。一方で、貯蓄が100万円でも「保険料がもったいないから資産運用に回したい」という人もいます。

お金があっても心の安定のために入りたいなら、入っておいた方がいいです。お金がほとんどない人でも、入りたくないなら入らない方がいいと思います。

つまり、医療保険に入った方がいいかどうかは、懐事情だけでなく、その人の気持ちにもよるのです。

これって、医療保険だけじゃないですよね。

たとえば、家電製品の延長保証。保証料を払うと5年とか10年とかの保証がつきます、自然故障なら何回でも無料で修理が受けられます、と謳っています。製品の寿命はわからないし、故障するかも、修理代がいくらかかるかも、その時が来ないとわかりません。

貯蓄額や気持ちで、保証に入るかどうかを決めている人は多いのではないでしょうか。

わが家の場合は・・・



わが家は、というと、夫と私は民間の医療保険に入っています。
息子たちは医療共済に入っています。

私たち夫婦が加入した理由は、当時は貯蓄があまりなく、家族が増えればお金はあまり貯められないだろうと思ったからです。

私はこれまで何度か入院や手術を経験しているので給付金をもらっています。入院時は、知らない人が隣にいると眠れないので1人部屋にしてもらいますが、給付金が受け取れるとわかっていると気持ちが楽です。
夫はというと、入院や手術の経験は全くありません。損得勘定で言えば、今のところ入り損です。

今なら、夫婦ともに医療保険を解約して、入院時にかかる費用は貯蓄で賄う選択肢もあります。ですが、私は国民健康保険加入なので傷病手当金がありませんし、2人の支払い保険料は負担になっていないので、まだしばらくは入っておこうと思っています。

それから、息子たちを医療共済で契約したのは、男の子なら怪我が多いかもしれない、と思ったからです。医療保険は通院しただけでは給付金が出ませんが、共済だと18歳までは怪我による通院も給付金が出ます。息子2人とも怪我による通院、手術、入院をしているので給付金を何度かもらいました。

次男が怪我で入院した時は、付き添い入院のため個室料金がかかりました。それに、家と病院の往復の繰り返しで疲れてしまい食事をテイクアウトで済ますことが多かったので出費がかさみました。お財布からお金が消えていくと不安になりましたが、給付金が入ると思うと気を取り直すことができましたし、実際に給付金のおかげで家計の負担が軽減しました。

彼らの医療共済については、社会人になったらそのまま続けるか医療保険に入り直すか、解約するかは自分で決めてもらおうと思っています。

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私が今まで会った人の医療保険・医療共済への加入の賛否は、大きく分けると次の2つです。

・入院や手術の経験がない→掛け捨てだからもったいない。入る必要はない。
・入院や手術の経験がある→医療保険、医療共済のおかげで助かった。入っていてよかった

合理的に考えるなら、お金があまりない時は加入して、ある程度お金が貯まったら解約して、貯蓄で入院時の費用に備えるのがいいと思います。あとは、自分の気持ち次第、というところでしょうか。


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