見出し画像

国民年金、改正後どうなる(年金#3)

マクロ経済スライド、少子高齢化や4月から年金額改定がおこなわれ、老後資金を年金以外で準備・検討される方が増えてきています。

年金に関するニュースや記事を読んで、受給額が実際どの程度なのか気になる方は多いのではないでしょうか。

本記事では、国民年金を主にし受給額の計算方法・受給開始時期の拡大・平均月額について解説していきます。

1.老後にもらえる公的年金は2種類

日本の公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2種類に分けられます。

・1階部分
国民年金:20歳以上60歳未満の全ての国民が加入します

・2階部分
厚生年金:会社員や公務員など、組織に属している人が国民年金とあわせて加入します

自営業(第1号被保険者)に関しては、2階部分の厚生年金がないので私的年金は3階部分にあたります。

なお、専業主婦(夫)など(第3号被保険者)は、会社員など(第2号被保険者)に扶養されている配偶者のことをいい、国民年金は加入となりますが、扶養されているため保険料を支払う必要はありません。

出所:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」日本の公的年金は 「2階建て」より

1-1.基礎年金:国民年金(1階部分)

国民年金は「基礎年金」とも呼ばれるもので、対象は「日本在住の20歳以上60歳未満」です。

原則65歳から受け取ることができ、納付した期間に応じて納付額が決まります。

令和4年度の年金額
・年金額(満額)= 年額777,800円(※月額64,816円)

※1円未満の端数は切り捨て

■国民年金(老齢基礎年金)の計算方法

引用:老齢年金ガイド 令和4年度版 日本年金機構
※1円未満は四捨五入

20歳から60歳の40年間すべて保険料を納付すれば「満額」が受け取れます。納付期間が足りない場合はその割合を満額から差し引く計算方式をとっています。

すべての期間を納付することが出来なくても、条件を満たせば受給対象となります。

2017年7月末以前においては、25年間の納付期間がなければ国民年金を受給することはできませんでした。

しかし、制度変更により、2017年8月以降は「10年間」の納付期間があれば年金を受け取れるようになりました。

参考元:老齢年金ガイド 令和4年度版 日本年金機構

1-2.受給開始時期の拡大

20歳から60歳までの全期間において保険料を納めた人の場合、老齢基礎年金の受給開始は65歳からになりますが、受給開始の時期をずらすことも可能です。

今回の改正により2022年4月より、「繰り上げの減額率の変更」「受取開始時期」の選択肢が広がりました。

・繰り上げ受給をした場合の減額率
1か月あたり0.5% → 0.4%に変更

・繰り下げの上限年齢
「70歳」→「75歳」に拡大

引用:厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」より一部加工

■「繰り上げ受給」は65歳になるのを待たずに60歳から老齢年金を受給することです。※繰り上げる場合は早くもらう分、1か月につき0.4%減額

(1)60歳で受給した場合(24%減)
77万7,800円×76%(24%=0.4%×60か月)=59万1,100円
年間=▲18万6,700円ダウン
 
(2)63歳で受給した場合(9.6%減)
77万7,800円×90.4%(9.6%=0.4%×24か月)=70万3,100円
年間=▲7万4,700円ダウン

(3)65歳の基準額=77万7,800円(令和4年度)

■「繰り下げ受給」は66歳から75歳までの間に受け取りを開始することです。※年金は受け取りを1か月遅らせるごとに受取額が0.7%増額。

(4)66歳で受給した場合(8.4%増)
77万7,800円×108.4%(8.4%=0.7%×12か月)=84万3,100円
年間=6万5,300円アップ
 
(5)70歳で受給した場合(42%増)
77万7,800円×142%(42%=0.7%×60か月)=110万4,500円
年間=32万6,600円アップ
 
(6)75歳で受給した場合(84%増)
77万7,800円×184%(84%=0.7%×120か月)=143万1,200円
年間=65万3,200円アップ

年金給付額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げます。

■65歳を基準に受給額を比較

・60歳で繰上げて年金を受給すると、約170万円少ないです。
・70歳で繰下げて年金を受給すると、約260万円多いです。

・60歳で受け取った場合
繰上げ受給してしまうと受給額が減額し年金とは別に資産運用などで補填する必要がでてきます。繰上することで後々変更、取り消しができません。

・70歳で受け取った場合
繰り下げ請求をした時点により受給額は増額されますが、早めのリタイヤを視野にいれつつ有意義な時間を過ごすためにも資産運用を検討することをお勧めします。

■90歳時点での差額を比較

・60歳からの受給額:59万1,100円 × 30年 = 1,773万3,000円
・65歳からの受給額:77万7,800円 × 25年 = 1,944万5,000円
・70歳からの受給額:110万4,500円 × 20年 = 2,209万円

60歳から70歳の10年間の金額差は約450万円です。
のちほど詳しく説明いたしますが、この金額差をうめるだけではなく、それ以上の資産価値を作り出し、なおかつメリットもついてくる資産運用について説明したいと思います。

1-3.老齢基礎年金の平均月額

厚生労働省年金局が公表する「令和元年度(2019年)厚生年金・国民年金事業年報」によると、国民年金(基礎年金)の平均月額は以下の通りです。

出典:厚生労働省「令和元年度(2019年)厚生年金・国民年金事業年報」より作成

国民年金(全体)平均年金月額:5万6,000円

・(男性)平均年金月額:5万9,000円
・(女性)平均年金月額:5万4,000円

国民年金の1番多い受給額は、月6~7万円です。
全体平均が5万6,000円であるのと比べると若干高い水準ですが、国民年金は国民の義務とされているので、「6万円以上~7万円未満」となります。

国民年金の平均額は男性5万9,000円、女性5万4,000円と、差額は5,000円ですが、年間にすると6万円となり10年・20年と長期でみると女性の方が受け取れる受給額が少ないです。

そして、国民年金のみ(平均額:5万6,000円)となる自営業や専業主婦(夫)の方など、充実した老後生活を送るためにも国民年金以外の老後資金を準備しておくと安心です。

2.まとめ

老後の生活を支えてくれるはずの国民年金受給額は毎年調整が加えられているため、現状の受給額と違う場合があります。

国民年金だけに頼るのではなく資産運用を始めるなど老後に備えておく必要があります。

実際、国も自助努力による老後資産を推進しています。

人生100年時代に対応するために、今回の年金の改正法をきっかけに老後と真剣に向き合ういい機会ではないでしょうか。

次回は、厚生年金について解説していきます。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?