【控除】とは?その意味や「所得控除」と「税額控除」の違いについてわかりやすく解説!
給与明細などで「控除」という言葉を目にすることがあるかと思います。
しかし、控除という言葉「控えて除く?なんだか分かりそうで分からない」という方は多いのではないでしょうか。
簡単にいってしまうと「一定の金額を差し引く」という意味で、大きく「所得控除」と「税額控除」の2種類があります。
所得控除:課税所得を減らせる制度
税額控除:所得税額そのものを減らせる制度
税金を算出する際に、一定の要件に当てはまる場合に適用され税負担を軽減してくれます。
しかしながら、これらはどのような制度なのかしっかりと理解している人は少ないかと思います。
そこで本記事では、まずは「控除」について、そして「所得控除と税額控除の違い」について、わかりやすく解説していきます。最後までお付き合いください。
控除とは
「控除」という言葉を理解している人は少ないかもしれません。
控除とは「一定の金額を差し引く」という意味です。
ですから所得控除であれば「所得から一定額を差し引く」という意味で、税額控除であれば「税額から一定額を差し引く」ということになります。
つまり、税負担を軽減できるということです。では、なぜ控除を設けるか。
その目的は公平性を保つためです。税制の根幹には、「公平・中立・簡素」という3つの原則があります。
控除制度は、このうち「公平」さを保つために設けられています。
たとえば、「独身の人」と「家庭を持つ既婚者」では、経済事情は異なります。この事情を考えずに同額の税金を徴収されたら、家庭を持つ方への生活は負担増となります。
そこで、本人をはじめ、家族構成といった「個人的な事情」を考慮した税額になるよう配慮されています。
つまり、生活が大変な人の税金を抑え、個々の経済力に応じて公平に税負担を課すということです。
そのため、控除制度にはいくつかの種類があり利用条件が設けられています。
所得控除と税額控除の違い
再三お伝えしたとおり控除には、所得控除と税額控除の2種類があります。
この2つの違いは、
所得控除:課税所得(税金計算ベース)を減らす
税額控除:所得税額そのものを減らす
つまり、差し引く対象が異なりますが、どちらも税負担を軽減してくれるのは一緒です。
では、それぞれの控除について詳しく確認していきましょう。まずは、所得控除についてからです。
所得控除
所得控除とは、「年収」から「給与所得控除」を引いた後の「給与所得」からさらに差し引ける制度です。
年収 - 給与所得控除 = 給与所得
給与所得 -「所得控除」= 課税所得
こうして求められた課税所得に税率(超過累進税率:5%~45%の7段階)を掛けて所得税額を求めます。
所得控除は全部で15種類もあり受けられる控除が多ければ多いほど、税金計算のベースとなる課税所得が減るため税負担が軽減されるということです。
■所得控除は全15種類
前述のとおり所得控除は、全部で15種類あります。
種類は多いですが、全部に当てはまることはありません。当然のことながら自分が適用となる控除だけを受けます。
そして、控除の対象であっても自動的に適用されるわけではなく、自分から申告しないと利用できないので忘れず申告しましょう。
また、サラリーマンなどの給与所得者が「年末調整で申告」できるものと、「確定申告での申告」の2種類があります。
多くは年末調整で控除できますが、「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」に関しては、自分で確定申告をしなければ適用されません。
それぞれの名称と内容を押さえ、自分に適用されるものがないか、ぜひこの機会にチェックしてみてください。
下図は、控除ごとの種類と差し引ける金額をまとめたものです。
■「人的控除」と「物的控除」に分けられる
所得控除には大きく分けて「人的控除」と「物的控除」に分けられます。
人的控除とは、本人や配偶者、親族などの個人的な経済事情が反映される控除です。つまり「人」に関することです
一方、物的控除とは、社会政策的な配慮から設けられる控除で医療費控除や寄附金控除などが該当します。つまり、個人の「支出」に対することです。
まとめると下図となります。
源泉徴収票には、下図の欄に記載されています。
税額控除
そして税額控除とは、課税所得に所得税率を乗じて算出した「所得税額」から一定金額を差し引ける制度です。
所得税額 -「税額控除」= 納税額
適用限度額は決まってはいますが、所得税額から直接差し引くことができるので高い節税効果が期待できます。
■税額控除の種類
税額控除にもさまざまな種類があります。
一般的に利用されることが多いのは、「配当控除」や「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」ですが、それ以外の主な税額控除についても知っておきましょう。
主なものは以下のとおりです。なお、これらの控除を受けるには原則として確定申告を行う必要があります。
その他、青色申告者のみに適用される「試験研究を行った場合の所得税額の特別控除」「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」などがあります。
ご自身が利用出来る控除を見落とさないよう注意しましょう。なお、詳しくは国税庁「No.1200 税額控除」を参考にしてください。
■住宅ローン控除
給与所得以外に収入のないサラリーマンが住宅ローン控除を利用する場合、入居した1年目は「確定申告」、2年目以降は「年末調整」での手続きが可能です。
源泉徴収票には、下図の欄に記載されています。
税金計算フローチャート
ここからはイメージをつかみやすくするために、
具体的に数字を使って「所得税額」はいくらになるか算出してみましょう。
たとえば、年収が800万円の方を例とした場合、条件としては、
給与所得者の所得税の計算は、以下のように4つのプロセス(税額控除がなければ3つ)を経て算出します。
【 計算方法の流れ 】
年収 - 給与所得控除 = 給与所得
給与所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 - 控除額 = 所得税額
所得税額 - 税額控除 = 納税額
まずは、【給与所得控除】を算出します。
1.給与所得控除 (下図:⑤):800万円 × 10% + 110万円 = 190万円
そして、【給与所得】を算出します。
2.給与所得:800万円 - 190万円 =610万円
給与所得は「610万円」になります。
つぎに、【課税所得】を算出します。
課税所得:610万円 - 200万円(所得控除) = 410万円
課税所得は「410万円」となります。
この計算から分かるように適用される所得控除が多ければ多いほど課税所得(税金計算ベース)を減らせることが分かります。
そして、【所得税額】を算出します。
所得税額 (下図:③):410万円 × 20% - 42万7,500円 = 39万2,500円
「39万2,500円」が納める所得税額となります。
しかし「住宅ローン控除」があるということなので、所得税額から【税額控除】を差し引きます。
39万2,500円 - 28万円(税額控除) = 11万2,500円
最終的に納める所得税額は「11万2,500円」となります。
税額控除があることで本来納める税額を大きく抑えることができます。
下図は項目ごとに金額をいれたフローチャートになります。
まとめ
「所得控除」と「税額控除」ですが、違いについて解説してきました。
まとめると以下となります。
控除とは、一定の金額を差し引くこと
所得控除:課税所得(税額計算ベース)を減らす
税額控除:所得税額を減らす
適用される種類が多ければ多いほど税負担が軽減されいきます。
しかし、控除にはたくさんの種類があり、人によっては活用「できる」ものと「できないも」のがあります。
まずは、自分が活用できる控除の把握をすることがとても大切です。なぜならば、支払う税金が大きく変わってくるからです。
ですので、最大限の控除を受けるためにも知識をつけて、適用できる控除はもれなく受けて、賢く節税していきましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?