蟻のままに語る

公共図書館が大好きです。知的で文化的で、それでいて誰もが自由にいつでも気軽に利用できる…

蟻のままに語る

公共図書館が大好きです。知的で文化的で、それでいて誰もが自由にいつでも気軽に利用できる本当に素敵なところです。 けれども、今その公共図書館がおかしなことになっています。経済の論理に巻き込まれ、職員の非正規化も止まりません。 このおかしさを言語化するところから始めてみよう思います。

最近の記事

保証のない雇用なら、補償があって当たり前!

以前にも書いたことですが、フランスの公共図書館にも、いわゆる公務員ではない形で勤めている職員がいらっしゃいます。ただし、この事態は、何も図書館に限ったことではありません。たしかに、他の部署に比べて図書館には、そうした職員の割合が多いとも言われています。けれども、日本と同様にフランスでも、図書館に限らず、その他の公的機関にも、いわゆる公務員ではない形で勤めている職員がいらっしゃいます。そして、その不安定(précaire)な立場が大きく問題視されています。 とはいえ、それら

    • なぜ「蟻」なのか?

      「蟻のままに語る」。この表現は、フランスで発行された、ある事典から着想を得たものです。「図書館:まさに勤勉な仕事」という題名で、対象はフランスの図書館員なのですが、あちこちに蟻が登場するのです。蟻という言葉も記されているのですが、それに加え、表紙はもちろん、そこかしこにそれは魅力的な蟻のイラストが描かれています。というのも、この辞書は、図書館員を〈蟻〉に準えているのです。  図書館員と蟻との間に、いったいどんな関係があるというのでしょうか。その説明をする前に、まずは、この事

      • Biblis en folie ランチキとしょかん

        フランスでは、来る9月、つまり2024年9月28日と29日の2日間が、第1回目の全国図書館デーに指定されました。名付けて乱痴気図書館(Biblis en folie)。フランス中の図書館が、これらの日に合わせて一斉に、お祭り的な無料の催し(événement festif et gratuit)を実施するのです。とはいえ、すべての図書館が参加するというわけでもないらしく、また、具体的に何をするのかについても、それぞれの図書館に委ねられています。例えば、ニューカレドニアやレユニ

        • 1980年代の公共図書館:業務の委託と職員の非正規化

          周知の通り日本では、1980年代より、いわゆる第二臨調の方針に従って行政改革が進められていきました。もちろん、公共図書館も例外ではありません。この時代には、公共図書館の管理を外部に委託する動きが相次ぎました。また、各地の図書館で、図書館職員の非正規化が進められていきました。 公共「図書館の管理委託は、地方行政改革や都市経営論の影響を強く受けて、1981年の京都市中央図書館を皮切りに、広島市、和光市、足立区などで実施されて」[1]いきました。  1981年7月号の『図書館雑

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          1970年代の図書館委託

          以前にも書いたことですが、日本の場合、公共図書館はすでに多くが外部に委ねられています。この事態は、日本の図書館界に大きな影を落としています。 日本の図書館界で、この問題に関する本格的な議論が開始されたのは、1980年代になってからのことだと思われます。1981年には、京都市を皮きりに、各地において公共図書館の管理運営を公社や財団等に委託する動きが相次ぎました。とりわけ京都市では、管理運営を含めて図書館業務の全てが委託されたことで、大きな話題となりました。 けれども、残され

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          「公共図書館」と「公立図書館」

          「公共図書館」という用語について、少しだけ細かいことを書いておきます。  日本の図書館界では、都道府県や市町村など、地方公共団体が設置する図書館に対して、「公共図書館」ではなく「公立図書館」という用語を使用するべきだと主張する人が多くいます。この主張が間違っていると言いたいわけではありません。それでも、「蟻のままに語る」では、あえて、「公共図書館」という用語を使おうと思います。 その理由は、主として以下の二つです。 一つ目は、「公共図書館」と呼ぶのか、それとも「公立図書

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          〈読書〉をみんなの手の届くものに

          公共図書館の存在意義について考えたことはありますか。公共図書館は、たまたま通える立場にある人や、一部の本好きの人たちだけが、楽しむために存在しているわけではないのです。 フランスには、公読書という言葉があります。公読書は、公共図書館が担うべき最も重要な役割の1つとされています。なお、ここでいう「読書」には、そのための能力や機会、あるいは環境といった意味も含まれます。いわゆる書を読むことだけに留まらない、もっと広い意味をもつ言葉として使用されています。文字だけではなく、例えば

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