見出し画像

ライバルが失笑したフェラーリのハードタイヤ装着——ハンガリーGP

ハンガリーGP決勝でのルクレールのハードタイヤ装着による自滅について、あれこれタイム分析を書こうかと思ったが、下のたった5秒の映像がすべてを表していると感じたため、書きかけの文章を放棄した。

 ハミルトン「フェラーリ、ハード履いたの!?」

 フェルスタッペン「うんw」

 ラッセル「うんw(失笑)」

彼らの反応を見ると、いかにハードタイヤがドライバー目線で「ありえない」選択だったかがわかる。彼らは決勝前のレコノサンスラップでハードの感触を試している。表彰式前の控室でハミルトンとフェルスタッペンには微妙な距離感があったが、この件は3人の意見が完全に一致した。

あくまで聞きかじった知識だが、勝負ごとでは、消極的な安全策を取る側よりも、積極的に攻撃を仕掛ける側に運が向くことが多い。入念な下調べも重要だ。同時に、自分が戦い方を間違えたと悟ったときに焦って一発逆転を狙うとドツボにはまることが多く、運がないと自覚したなら早く戦いの場を離れるか、それが不可能ならその場をじっと耐えることが「最悪のなかの最善」となることが多い。

今回のレースではそんな場面が次々と現れた。

フェラーリ、「脊椎反射」のハード装着が致命傷に

レーススタート時は小雨がぱらつく天候。ポールポジションのラッセルや、予選中のトラブルで10番手スタートのフェルスタッペンがソフトタイヤを選んだのに対し、フェラーリ2台と7番手スタートのハミルトンはミディアムタイヤを選択した。

フェラーリのミディアム選択はソフトでのグレイニングを心配したのでは、との推測が成り立つ。しかし、スタート時の加速が期待できるうえ、小雨の中でも比較的タイヤが冷えずに走れるソフトの方が理にかなっているのでは、と思われた。

レース序盤はラッセルが逃げて、サインツとルクレールが続く展開。ルクレールが1回目のタイヤ交換のタイミングでサインツの前に出ると、ラッセルを一気に追い詰めて、31周目の1コーナーで豪快にアウトから追い抜いた。ここまではフェラーリのレースのように見えた。

このとき10番手スタートから4位まで追い上げたフェルスタッペンは、上位勢の1回目のタイヤ交換が終わった段階で3位サインツの2秒後方。15周ほどの間、つかず離れずで不気味に前の様子をうかがった。

各ドライバーのタイヤ戦略

レッドブルが動いたのは38周目。フェルスタッペンが2回目のタイヤ交換へとピットに飛び込む。アンダーカットだ。フェラーリも脊椎反射のように翌39周目にルクレールをピットに入れ、ハードを履かせてフェルスタッペンの前を塞いだ。

このフェラーリの反応は致命傷だとすぐに分かった。小雨で路面が冷えるなか、ハードではまったくグリップしない。同じくハードに替えたアルピーヌやハースがグリップ不足に悩むのを見ていなかったのか。

レースが残り31周あるためソフトを履く選択肢がないなら、フェルスタッペンのアンダーカットを甘受してミディアムタイヤで周回を重ねることはできなかったのだろうか。結果論だが、同様にミディアムタイヤでスタートしたハミルトンは19周目にミディアム、51周目にソフトに交換し、終盤ペースが上がらないラッセルを抜いて2位でゴールしている。

「待ち」と「戦い」を切り替える王者の風格

ルクレールのペース不足を見て取るや、フェルスタッペンはそれまでの「待機モード」を捨てて猛然とスパート。41周目に1コーナーのイン側をこじ開けるようにルクレールを追い抜いた。フェルスタッペンは直後に最終コーナー手前でスピンを喫して順位を落とすが、45周目に今度は1コーナーアウト側からのクロスラインでルクレールを追い抜いた。

その後、後続を10秒程度引き離したとみて、フェルスタッペンはクルージングモードに入った。「戦闘モード」と「静観モード」の切り替えができるのが今年の彼の強みで、修羅場をくぐった王者の風格を感じさせる。残り32周のロングスティント。フェラーリの対応によっては順位を失う危ない賭けだったが、レッドブルは見事に戦略を立て、フェラーリの失策を引き出した。

ハンガリーGPで優勝、シーズンのリードを盤石にしたフェルスタッペン

一方のフェラーリ・ルクレール陣営はレース54周目にハードを捨ててソフトに交換するドタバタを演じた。負けている状況をどうにかしようとジタバタして、余計に墓穴を掘る状況。タイヤ交換で失った3つのポジションを1つも取り戻せぬまま、ルクレールは6位でレースを終えた。ハードで走り続けても終盤の小雨で順位を守ることは厳しかったかもしれないが、それにしても徒労感が残った。

(※8/5放送のフジNEXT「F1GPニュース」の川井一仁氏の見解では、「ハードを履いたときのルクレールは1周0.7秒フェルスタッペンに離されていたため、タイヤ交換は正解」とのことだった)

鈴鹿タイトル決定マジック「33」でサマーブレイク

ハンガリーGPは夏休み前の「チェックメイト」の瞬間だったかもしれない。フェルスタッペンは今季8勝目で通算ポイントを258点に伸ばし、2位ルクレールへのリードを80点に広げた。残り9戦で3勝分以上のポイント差、と書いてしまうと、あまりの絶望感に気が滅入る。

ハンガリーGP終了時点のポイントランキング

万一、フェルスタッペンが点差を113点に広げて日本GPを終えた場合、鈴鹿でチャンピオンが決まってしまう。残りは33点。鈴鹿でのタイトル決定は2011年以来で、ホンダを引き継いだHRCのパワーユニットによる王座なら鈴鹿は沸くに違いないが、1年通じての激戦を期待した者としては「なんだかなぁ~」という気分になる。

サマーブレイク明けは引き締まった戦いが戻ってきますように!

(結構長い文章になってしまった)

最後に、今回笑えたツィートを2つ。ともに画像の上下が隠れているかもしれないので、ぜひ元の画像を表示してほしい。

アロンソとペレスのアクションはどこかで見たような。。。イケメンな角田の後ろには「Traffic Paradice」と書いてある。ノリスはなんでヘルメット姿??ボッタスはもっと尻を出さなきゃダメじゃないか!

サインツのゴルフボールが向かう先はギュンター・シュタイナーじゃなく、ゴルフボールとルクレールのバレーボールがまとめてビノットに飛んでいく絵にしたほうがいいんじゃないかな!?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?