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レタースペーシングをじっくり深める一冊
今回は読書の秋にじっくり読みたいデザイン本、
『レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方』をご紹介したいと思います。
こちら、まるまる一冊レタースペーシングについて解説したディープな本なのですが、今まで感覚で語られがちだった文字間調整の理論が図解とともにひとつひとつ紐解かれていてとても分かりやすいです。
見本帳ではなく「視点集」
❝ レタースペーシングは見る人によっても良しあしが変化します ❞
まず冒頭で語られるのは、レタースペーシングには人によって感覚のずれが存在するということ。その上で、最大公約数となりえるポイントをおさえ、自分なりのレタースペーシングの感覚を磨くことがこの本の目的です。
すなわち、「正しいレタースペーシングの見本帳」ではなく「目指すべきレタースペーシングの感覚をつかむための視点集」。
たとえば、文字のパーソナルスペースや文字に感じられる重力のこと、周囲の余白とカウンターの関係、欧文と和文の構造の違い、かな文字の成り立ちから考えるスペーシング…etc.
実に様々な角度から観察眼を鍛えるヒントを与えてくれます。
特に興味深かったのが、タイプデザイナーさんがフォントを設計する際に、錯視を補正したり黒みを整えるために施す工夫の数々。
著書の今市達也さんはグラフィックデザイナーでありタイプデザイナー。フォント開発事業も運営する、まさに文字のスペシャリストです。そんな著者ならではの、ひとつひとつの文字の形状に気を配る姿勢から学ぶものは大きかったです。
実践編をやってみた
最後の章は練習問題になっていて、手を動かしながらポイントをおさらいできます。図形のスペーシングに始まり、欧文、和文、和欧混植にもトライ。
どうでしょう…黒み均一に見えますか…?
表紙のイラストについて
最後に、表紙のイラストについて少し。
はじめはイラストを角版で置く装丁、変わってるな~くらいにしか思っていなかったのですが、読み進めるうちにこのイラストの意図がわかり、はっとしました。
↓ こちらの特設サイトのMVにもなっているので覗いてみてください。
イラストの中の人は大きな括りではみんな学生ですが、服装や持ち物、座り方、過ごし方は一人ひとり違う。重心や足の開き方は?荷物は重そう?くっつきたい人、離れていたい人、寄りかかりたい人。通っている学校も年齢も、生活のバックグラウンドもきっと違う。人を文字になぞらえると観察する視点がどんどん増えていく。ずばりレタースペーシングにおける観察眼が主題なのだと感じました。
さらに、車内広告がフォントベンダーや有名フォントの広告になっていてメタ的なところも面白いですね。
以上、おすすめの1冊をご紹介しました。
私はこの本を読んでから、シャンプーボトルのロゴやらお菓子の外箱やら身近なものの文字組みの観察が止まりません。。
先日パッケージデザインができるAIが話題になりましたが、レタースペーシングにおいては、視覚補正や黒みの調整は感覚的な部分・ケーススタディな部分が大きいという点で、まだこの先も人が手を動かす価値があるんじゃないかと思います。(どうでしょう…?)
文字詰めに自信のある方も、自分の癖を知るきっかけになるかもしれません。興味のある方、ぜひ読んでみてください!
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