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<なつみの本紹介> #13 夜のピクニック/恩田陸

あらすじ

 高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。

感想

 この本は、新潮文庫の100冊で本屋においてあり、どこの本屋に行っても一押しというような雰囲気を纏わせていたので、とりあえず読んでみようと思って手に取りました。

 初めて恩田陸さんの作品を読んだのですが、読み始めて思ったのは、話の中の情景を表現するのがうまいなということです。うまいというのはなんだか上からになってしまって嫌なのですが、僕の好きなタイプの文章を書く作家さんだなと思いました。森沢明夫さんもそうなのですが、自然の様子を言葉できれいに表現する作家さんが好きなんです。もちろん物語の内容も大事なのですが、僕はそれよりも、読んでいて心地のいい言葉を体で感じたくて、読書をしています。これに共感していただける方いないですかね笑。

 読み終わって僕を襲ったのは、激しい後悔でした。この作品に高校時代に出会いたかった!!登場人物の西脇融が、高校生活もっと青春すればよかったと言っている場面がありますが、まさにそう思いました。というか、この物語を読んだら、誰もが高校生に戻りたいと思うことでしょう。「ザ・青春」という感じの話ではないですが、高校生たちが、夜のピクニックを通して徐々に変わっていく様子は、胸にくるものがあります。まだ遅くありません。この本で、高校時代に戻ってみませんか。

グッとワード

 「あえて雑音をシャットアウトして、さっさと階段を上がりきりたい気持ちは痛いほど分かるけどさ。もちろん、お前のそういうところ、おれは尊敬してる。だけどさ、雑音だって、お前を作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。お前にはノイズしか聞こえないだろうけど、このノイズが聞こえるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思った時にはもう聞こえない。おまえ、いつか絶対、あの時聞いておけばよかったって後悔する日が来ると思う。」

 この言葉、高校時代に聞きたかった。でも、これは人生のどんな時でも共通して言えますよね。僕はこう捉えました。人生に無駄な時間は1秒もない。その全ての経験が、自分を輝かせるんだと。これを雑音と表現する恩田陸さんに感心してしまいました。確かに無駄だと思うことはこの世にたくさんあります。しかし、それを無駄と捉えない心の余裕が必要なのではないでしょうか。


 だけど、今はなんだか彼の言っていたことが分かるような気がした。
 今は今なんだと。今を未来のためだけに使うべきじゃないと。

 これは、親友に上の言葉をかけられた、主人公の言葉です。これを読んで、感じたことがあるので書かせてください。

 今世界は、新型コロナウイルスによって、生きづらい世の中になっています。国は、不要不急の外出はするなと言いますが、それは何が基準なのでしょうか。もちろん、今全国民が自粛をすれば、将来的にウイルスの蔓延は防げるので、国の言っていることは正しいと思います。しかし、未来のために今を失いたくないというのが、僕、いや大学生の意見なのではないでしょうか。もっというと、人生に無駄な時間は1秒もないと僕は思っています。だから、不要な外出などありません。なんなら、大学生という時間のある間にしかできないこともあります。これは不急でもありません。ただの屁理屈だというのはわかっています。ただ、その線引きをどうすればいいのかわからないから困ってるんです。僕がどう判断して、どんな行動をしているかは書きませんが、いち若者が何を考えているかを知っていただきたいです。

 本の内容とは関係なくなってしまいましたが、久しぶりにビビッとくる本に出会えたので、是非読んでみてください!

2021/9/7~21

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