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<なつみの本紹介> #25 TUGUMI/吉本ばなな

あらすじ

 病弱で生意気なつぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った。。。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。

感想

 最近吉本ばななさんが好きだ。読んでいて心が柔らかくなる、そんな作品が好きだから読みたくなる。今回の作品は、夏の海辺の街が舞台である。

 今は秋、もうすぐ冬を迎えようとしているが、夏はほんの少し前だった気がする。友達と旅行に行って、海で遊んで、川で遊んで、語り合った。そんな夏が両手の本の中で蘇ってきた。

 主要な人物はいとこ同士のつぐみとまりあ。この二人、性格は正反対のように見える。つぐみは生まれつき体が弱く、過保護に育てられたため、わがままで自分勝手である。口も悪いし乱暴で、いわゆる問題児である。一方まりあはつぐみを理解している唯一と言っても過言ではない人物だ。言葉を交わさずともどこか通じ合っている様子は羨ましい関係である。当の本人たちはそんなことを言われるのは嫌であろう。

 あとは海辺の街が舞台というわけで描写が美しい。海辺というのはどこかゆったりしていて、穏やかで、全てを忘れてしまいそうになる。また夏の海に飛び込みたいものだ。

 夏休み、サークルで大勢の飲み会やらバーベキューやらをするのもいいが、この本を読んでこんな夏休みもいいよなと思えるような友人をたくさん持ちたいと思う。この前の夏休みに戻りたい人も、来年の夏休みが待ち遠しい人も、この本を読んでTUGUMIという名の夏に飛び込んでみよう。

2021/10/21

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