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【フォレスト出版チャンネル#161】ゲスト/編集者|敏腕編集長の担当書籍から見える編集哲学

このnoteは2021年6月25日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

かんき出版注目のベストセラー『ボケ日和』を深堀り

渡部:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティの渡部洋平です。本日も昨日に続いて、かんき出版編集長の谷英樹さんをゲストにお迎えしております。谷さん、よろしくお願いいたします。
 
谷:はい。よろしくお願いいたします。
 
渡部:今日も編集部の森上さんとともにお届けしていきたいと思います。
 
森上:よろしくお願いします。
 
渡部:では、昨日はかんき出版さんで谷さんがどのような編集者としてご活躍されているのかという点についてお話いただきました。もし気になる方は昨日の放送もチェックしていただければと思います。
本日は谷さんがご担当されている書籍である、今年(2021年)の4月に出版された『ボケ日和――わが家に認知症がやって来た! どうする? どうなる?』についていろいろとお聞きしていきたいと思います。それでは、ここからは同じ編集者としての立場から、森上さんにこの本について、根掘り葉掘り聞いていただきたいと思います。

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『ボケ日和』は、実用書より実用的なほっこりエッセイ

森上:はい。ありがとうございます。まず『ボケ日和――わが家に認知症がやって来た! どうする? どうなる?』の内容についてザッと谷さんからリスナーの皆さんに向けて解説していただいてもよろしいでしょうか?
 
谷:はい。わかりました。著者は長谷川嘉哉という認知症専門医の方でして、認知症の進行具合を四季ですね。春夏秋冬に分けまして、長谷川先生がたくさんの患者さんを見てこられたんで、多数のエピソードを交えたエッセイになっています。なんとなくこういう本だと、実用書っぽくつくるっていうのが多いのかなっていう気がするんですけれども、今回は長谷川先生と話し合いまして、エッセイのほうが当たったらでかいんじゃないかっていうですね(笑)。
 
森上:なるほど、なるほど。ありますよね(笑)。
 
谷:そういう意図もありまして。ただ、この本は実用書よりも読みやすい感じになってるんですね。要するに、認知症初期にはどんなことが多いのかとか、どうすればいいのかみたいなことを、実用書って書くじゃないですか。この本はそれを「こんな人がいました。こんなことが起こりました。こう対応しました」みたいな感じで、実用書よりも実用的で読みやすくなっていて。
 
森上:なるほど。
 
谷:内容的にはすごく評価が高くて、本当に好評いただいている本で、今発売して1カ月ちょっとなんですけど、2万部くらいまでいっていて。
 
森上:すばらしい。
 
谷:で、表紙と中のイラストを『大家さんと僕』の矢部太郎さんにお願いしまして、読んでいてほっこりするような感じのつくりになっています。帯には梅沢富美男さん夫妻にご推薦をいただいておりまして、「この本に書いてあることを覚えておけば、一生安心だね」という梅沢さんのコメントをいただいています。6月に大きな広告を次々に出す予定をしていますので、親御さんの認知症が心配な方、あるいはご自身の認知症が心配な方が手にとっていただいて、役に立つ内容かなと思っていますので、ぜひ書店さん等でお手にとっていただければなと思っています。
 
森上:ありがとうございます。本当にカバーの矢部さんのイラストと本のタイトルの書体とかも、全体的にほっこり感があふれる、ボケと言うか、認知症と言うものをいい意味で、なんだろうな。
 
渡部:コミカルにしてるって言うか。

「自分や家族が認知症になったら……」の不安がなくなる

森上:そうそう。だから、ネガティブに捉えるっていうよりも、ポジティブに捉える。そういう感じの印象が、カバーを見るだけで伝わってくるご本になっていますよね。谷さんも私も同じ世代ですから、我々の親世代が認知症だとか、そこに対しての意識はあるけれど、「まだ大丈夫だろう」とか、妙に先送りしちゃう感じの人にいい意味で刺さりますよね。
 
谷:そうですね。長谷川先生もおっしゃっているんですけど、診察に来る方で「認知症を治してください」っていう方はそんなに多くないらしいんですって。そうじゃなくて、「これから何が起きるんですか?」と気にする方が多いみたいなんですよね。
 
森上:なるほど。まだなってない方が。
 
谷:もしくは初期の方とか。何が起こるかわからないっていう恐怖があるので、そこを解消していくのがこの本かなあと思うんですよね。要するに「こういうことが起こりますよ」っていうことが事前にわかっていれば、対応できるって言うんですかね。
 
森上:なるほど。安心もするしね。
 
谷:そうですね。例えばこの本にもあるんですけど、「将来、必ずあなたは“お金取っただろう”って言われますよ」って。「お金取っただろう」って言われるのは、認知症になった方が一番頼りにしている人なんだそうなんですね。だから、普通は「お金取っただろう」って言われると傷つくじゃないですか。だけど、それはあなたのことを一番頼りにしているからっていうことで、その裏返しで言われているっていうことを事前に知っておくと、「お金取っただろう」と言われて、多少怒るとは思うんですけど、それを恨みに思ったりとかはしないで、「あー、この人は私を頼りにしてるんだな。だから、こんなことを言うんだなあ」っていうふうになると思うんですよね。
 
森上:なるほどね。受け止め方が変わってきますよね。それを事前に知っているか、知らないかでね。
 
谷:そうですね。
 
森上:うん。大事かも。
 
谷:あと、暴力的なことをするようになってしまう方もいるらしいんですけども、それにはちゃんと今は適切な薬があるとか、そういうことも事前にわかっていると、慌てたりしないで、適切に対応できるっていうことですかね。
 
森上:そうですよね。そういう意味では、それこそ本人が認知症になる時の不安っていうのも解消してくれるだろうし、周りの家族、介護する可能性がある側にとっても、今お話していただいたことを知っておくだけでも、全然変わってきますよね。関係性がね。
 
谷:そうですね。患者さんっていうよりは、介護者さんの目線に立っているという感じですね。それは、やっぱり長谷川先生が自分のおじいちゃんが認知症になって、忙しかったりとかで、あまりかまってあげられなかったっていう後悔があって、それで認知症の専門を目指したっていうこともあって。
 
森上:そうですか。その思いというのが全部、今回のご本に。そういう意味では本当にほっこりするつくりになっている理由も、今の話でわかりますよね。認知症に対する受け止め方とか、その辺の部分の考え方、捉え方で、それに対する愛があるというか、それがもう全面に出た本だっていうことですね。
 
谷:そうですね。長谷川先生のおじいちゃんの場合はお母さんが介護したそうなんですけど、当時は介護保険とかもない時代だったんで、すごく大変な思いをされたそうなんですけど、今の時代はそんなことする必要はない、介護保険もあるんだし、デイサービスとか、そういったものを積極的に使ったりして、介護する人がやっぱり幸せになれないと、愛のある介護もできないんじゃないかっていう、そういうことですかね。
 
森上:いやぁ、本当にそうですね。渡部さん、ご自身の親御さんの認知症とかって意識されたことありますか?
 
渡部:目先の必要性っていうのはまだ感じたことはないんですけども、確実にくるでしょうし、自分はさることながら、日本全体の問題ですからね。超高齢化社会、老老介護みたいなところは。そう意味で多くの方がこういう情報を知っておくだけでかなり違いますし、すごく社会的に意義のあるテーマで、それも切り口として、エッセイというかたちで知るべきことを知っておくっていう。たくさん売れると、日本のためにもなるんじゃないかなと思ったので、興味のある方はぜひ読んでいただきたいですね。

敏腕編集者の編集哲学とは?

森上:ですよね。URLも貼っておくので、ぜひご興味のある方はお読みいただきたいんですけど。谷さんが担当された本で、もう一冊どうしてもお聞きしたい本があるんですよね。『起業1年目の教科書』という本なんですけど。あれって2015年ですよね、出たの。

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谷:そうですね。もうそんなになりますかね。『起業1年目の教科書』は、著者の今井孝さんのデビュー作だったんですよね。今、確か単体で6万部いっていて、合計で3冊出させていただいているんですけど、シリーズで10万部は超えているんですけど。
 
森上:すばらしい。
 
谷:私よりすごいベストセラーを出している編集者の方も、森上さんもそうですけど、たくさんいらっしゃると思うんですけど、私の今までの編集した本を改めて見直してみて、何か特徴あるかなと思ったら、デビュー作が結構多いなというのがあって。私は元々、きこ書房というところにいたので、いわゆる著者のプロデュースって言うんですかね。要するに、本を取っ掛かりにして、その著者さんのビジネスが上手くいくっていうような、そういうところに考えがいくと言うか、そういうのを前提にして本をつくってるのかなっていう気はしていて、他にすごい編集者さんはたくさんいらっしゃるんですけど、その辺は自分の特徴なのかなぁっていう気はしていますね。
 
森上:昨日お話をさせていただいた千田琢哉さんの場合は、デビュー作ではないにせよ、スターになったのは、やっぱり谷さんのご本がきっかけだろうし、今回お話を伺った『起業1年目の教科書』、これだって2015年からずっとロングセラーで売れ続けて、今井孝さんのお名前がこの本をきっかけにどんどん広がっていったっていう印象があって、もう定番書になっていますもんね。
 
谷:そうですね。棚に結構残していただいている書店さんが多くて、ありがたいことに定番になっている感じですね。

著者をプロデュースする醍醐味

森上:そうですよね。うちもビジネス書でやっぱり起業、副業系の本をちょっと企画しようかなと思って、類書を調べると、絶対まず出てくるのがこの今井さんのご本ですからね。
 
谷:ありがとうございます。
 
森上:本当に勉強させて頂いているご本です。渡部さん、この本はご存知ですか?
 
渡部:知ってます。ここはストレートに使えないんですけど、今井さんがすごく成長していかれるのを、ちょっと僕が見ていたところもあったので。一気に10年、15年ぐらいですごい先生になられたなっていうイメージがあります。この本がきっかけだなって。まさに谷さんがおっしゃっていましたけど、新人のデビューのきっかけを作ってスターにしたっていう1冊なんだろうなってすごく感じますね。
 
森上:いや、ほんとですよね。
 
谷:この(Voicyの)お話をいただいたときに、会社の本棚を改めて見て、どんな本をつくったっけなぁって思って見ていたら、やっぱほんとにデビュー作とかが多くて、例えば世古詞一さんっていう著者で『シリコンバレー式 最強の育て方』って本があるんですけど。
 
森上:ありますね。あれ、谷さんなんですね!
 
谷:ええ。副題が「人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング」なんですけど、瀬古さんはやっぱりこの本をきっかけに、「1 on1の研修講師ならば、世古さん」みたいな。
 
森上:第一人者ですよね。1 on1と言えばという。
 
谷:ええ。うちの会社がそういう研修事業をやってるっていうのもあるんですけど、今、そちらの研修事業でも本当にもうエース級の活躍をしていただいているっていう感じで。あと、浅川智仁さんっていう著者もデビュー作をつくったんですけど、『電話だけで3億円売った伝説のセールスマンが教える お金と心を動かす会話術』
 
渡部:私もちょっとお会いしたことがあります。
 
谷:これはデビュー作ではないのかな。わかんないですけど。私としてデビュー作のつもりでつくったんですけど(笑)。
 
森上:そういうことですね(笑)。まあ、表舞台に出てきたってことですよね。
 
谷:これも、この本をきっかけに、セミナーとかを中心にご活躍されていて、研修とかもされているので、そういう著者さんのプロデュースの一環みたいな、そういうことができているのかなあというふうには。もちろん著者さんに力があるから、できているわけであって、本はきっかけに過ぎないんですけども。
 
森上:いや、いや、いや。
 
谷:なんとなく自分の仕事を顧みると、そういうことをやってきたのかなっていう気がしてます。
 
森上:なるほどね。いや、本当におっしゃるとおりだと思いますね。端から見ていてもそのあたりは、さすが谷さんって感じで。ちょっとお時間がなくなってきちゃったんですけど、『起業1年目の教科書』のURLリンクもこのチャプターに貼っておくので、ぜひリスナーの方々にもチェックしていただけたらなと思うんですが。渡部さん、ちょっとお時間がないですよね?
 
渡部:そうですね。では、最後に谷さんからリスナーの皆さんにメッセージをいただいて、今日の放送を終わりにしたいと思います。
 
谷:はい。主にどういう方がお聞きになっているかわからないんですけれども、ひょっとしたら著者になりたいっていう方も聞いてらっしゃるのかなって気もするので、今言ったとおり、私は基本的にデビュー作をつくることが多いので、もし何かご自身のコンテンツに自信があって、ビジネスを大きくしたいとか、そういう方がいらっしゃるようであれば、お声かけいただければお役に立てることもあるかもしれないので、よろしくお願いしますということですかね。
 
渡部:ありがとうございます。本当に今のメッセージを聞いていても、谷さんが新人著者と言うんですかね。デビューから一緒に、本をつくっていこう、ビジネスをつくっていこうっていうお考えをお持ちなんだなとすごく感じました。
僕の勝手な感想なんですけど、やっぱり著名な編集者こそ、有名な方が紹介で来るみたいなことが多いのかなって思って、「1から自分のコンテンツがいいと思ったら一緒に本をつくろう」っていうメッセージを出す方って僕はちょっと初めてだった気がするので、谷さんの編集者としてのスタンスをすごく垣間見た感じがしました。
 
谷:ありがとうございます。ただ、デビュー作の方がいいときもあるんですよね。結局、持っているものを全部出せるわけですからね。あと、1冊目ってやっぱり著者にとってもすごく大事なので、著者さんが売る気があるって言うんですかね。なので、売れている著者さんもすごく大事だとは思うんですけど、初めて本を出す人っていうのはやっぱり売れる可能性があるのかなというふうには思っています。
 
森上:おっしゃるとおりですね。伸びしろが未知数ですもんね。伸びしろが無限大と言うか。おっしゃっていることにすごく納得しますね。
 
渡部:音楽で言うとデビューアルバムみたいな(笑)。
 
森上:ほんとそうだよね(笑)。
 
渡部:ありがとうございました。ということで、今日はかんき出版・編集長の谷さんにお越しいただいたんですけれども、すごく刺激のあるお話をしていただきました。谷さん、今日は本当にありがとうございました。
 
谷:はい。どうもありがとうございました。
 
森上:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
 

 

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