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【2022年】出版業界の重大(と思った)ニュース【上半期編】

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先日、Voicyのハッシュタグ企画で「重大ニュース2022」というのがあったので、Voicyの「フォレスト出版チャンネル」で、ざっくりフリートークしました。

例のごとく、とくにたいしたことは話していないのですが・・・汗、どんな重大ニュースを取り上げたのか、ここで補足記事をまとめたいと思います。

出版社4社、2月から文庫用紙を共通化

角川春樹事務所、河出書房新社、筑摩書房、中央公論新社の4社はこのほど、王子製紙と共同で、「文庫用のオリジナル本文用紙」を開発した。2月に発売する新刊から順次、共通用紙を使用して出荷する。出版社が文庫用紙を共通化するのは業界初。

「新文化」2022/1/21記事より

最近は「文庫が売れない」と叫ばれています。

そんななか、「生産効率の改善」「在庫リスクの軽減」「安定的な資材確保」「調達価格の安定」を目指して、会社の垣根を超えた4社が本文用紙を共通化したというニュース。

資源価格が高騰する昨今の時代背景かと思いきや、出版社間で協議し始めたのは2019年3月とのことで、3年がかりで実現させた施策だそうです。

資源価格が高騰している今、こうした動きは増えそうです。

日販、DNP、PHP研究所、PODを活用した製造・流通スキームで成果

日本出版販売、大日本印刷、PHP研究所の3社による、デジタル印刷技術(POD)を活用した製造・流通スキームが安定稼働し、昨年12月末時点で受注出荷率が90%(前年同月から37ポイント増)と大幅に向上している。

「新文化」2022/2/24より

PODとは「Print on Demand」の略。要は受注生産のことです。

これまでは「うーん、この新刊は初版1万部だー!」と勝負かけてコケたり、「まあ、初版5000部かな」とスモールスタートしたら思いのほか初速がよくて、あわてて重版かける・・・なんてことが日常茶飯事なわけですが、PODとなると景色がガラリと変わります。

注文数に応じて部数を生産すればいいので、売り損じもなくなります。

PODという仕組みそのものは昔からありましたが、ここ1~2年注目を浴びているのは、その技術が向上したからでしょうか。実際にAmazonで絶版書籍のPODを購入したことがありますが、「絶版なのにこうして普通に読めるなんてすばらしい」と感じました。

日本出版販売、大日本印刷、PHP研究所の3社の取り組みの詳しい情報はこちら。

メディアドゥ決算、売上・利益が過去最高に 5年後には売上1500億円目指す

メディアドゥはいわゆる電子書籍の取次です。

メディアドゥの決算が毎年ニュースになりますが、たしか毎年右肩上がりではなかったでしょうか?

書店の閉店ニュースがほぼ毎週耳に入るなか、なかなか象徴的です。

トーハンとメディアドゥ、店頭で電子書籍を販売する実証実験開始

4月1日から9月30日まで行われた実証実験ですが、結果はどうだったのか、気になります。

実験店舗は八重洲ブックセンター本店、ブックファースト新宿店、同中野店の3店舗。

客がスマホで書籍やコミックスのバーコードをスキャンすることで、メディアドゥが運営する電子書店「スマートBookストア」を通じて当該商品の電子版を試読・購入できる。書店は電子書籍の販売数に応じた手数料を得る。対象とする電子書籍は約30万点。

「新文化」2022/4/1記事より

でも、これってどうなんでしょうか。わざわざリアル書店で電子書籍を買うのかな・・・と素朴な疑問がわきます。

ですが、トーハンさん、メディアドゥさんの意欲的な取り組みとして応援したいところです!

メディアドゥ、出版物以外にNFT付商材を拡大

これまた、メディアドゥの話題です。今年、出版業界でも踊り出てきたのが「NFT」でした。

NFTに関しては今年はなかなか話題花盛りで、漫画をNFT化したこんなケースもあるようです。

NFTに関しては2023年も新たな動きがありそうですね。フォレスト出版でも水面下でいろいろ考えているところです。

国立国会図書館、「個人向けデジタル化資料送信サービス」開始

個人的にいちばん「マヂか!」と思ったのが、このニュースです。

5月19日、国立国会同図書館がデジタル化した資料のうち、絶版などの理由で入手困難であると確認された152万点をインターネット経由で個人に送信するサービスを始めた。昨年5月の著作権法改正で個人ヘの資料送信が可能になった。
対象となる152万点の内訳は、1968年までに受け入れた「図書」55万点、明治期以降に発行されて刊行後5年以上経過し、商業出版していない「雑誌」82万点、「博士論文」13万点、「その他」4万点。漫画は含まれない。
同サービスでは当面、閲覧だけにとどまるが、来年1月をめどに、コピー防止機能を施しながら印刷機能を提供する予定。出版社関係者からは、「民業を圧迫するサービス」という声もあったが、送信中の書籍でも、出版社が電子化をきめた銘柄については除外することができるようにした。著作権者などの申出を受けて、3カ月以内に入手困難な状態が解消できると認められたものは、同サービスの対象外となる。

「新文化」2022/5/19記事より

「昨年5月の著作権法改正で個人ヘの資料送信が可能になった」というのも、知らなかったなー、と。

かつて、国立国会図書館で情報を得ようと思うと、書籍館と雑誌館が離れたところにあって、ものすごい延々としたループで丸1日潰れたものです。

【昭和の国立国会図書館の過ごし方】
書籍館で閲覧したい書籍を申し込む→出てくるのを待つ間に雑誌館へ移動→雑誌館で閲覧したい雑誌を申し込む→出てくるのを待つ間に書籍館へ移動→出てきた書籍のコピー依頼する→コピー出力が出てくるのを待つ間に雑誌館へ移動→出てきた雑誌のコピー依頼する→・・・いつ終わるんじゃい!

この延々ループがなくなる。いや、そもそも国立国会図書館に行かなくても情報が取れるんです。これって、すごい。

小学館、オーディオブック市場に本格参入

いやー、このニュース、一般の方々にとっては「こんなことがニュースになるの?」と驚きかと思いますが、出版業界では「オーディオブックがアツいらしい」というのが、コロナ以降のもっぱらの話題でして。

小学館のような大手が本格参入というニュースは、業界的にはニュースなわけです。

2018年からオーディオブックの製作を開始して定期配信体制を確立していたが、23年度には計1000点の製作・配信を目指してラインアップを拡大していく。
これまで、「文芸」「新書」「ライトノベル」「児童書」など、様々なジャンルでオーディオブック市場に作品を投じてきたが、今後はとくに、文学作品を中心に掘り起こす方針。「近代文学」「現代文学」「古典文学」の3時代別に分けて展開する。明治・大正時代に書かれた「近代文学」の作品群は、「小学館の名作文芸朗読」シリーズとして、年内中に300点の配信を開始する。
今回の決定に際し、大手声優事務所をはじめ、音声コンテンツ制作会社と連携。小学館グループ会社のヴイ・フォークによる自社製作も強化する。

「新文化」2022/6/24記事より

このニュースには裏メッセージが読み取れます。

それは・・・オーディブルに依存しない、自社制作による著作権の自社管理という側面です。

通常、Amazonのオーディブルに出荷する場合、Amazonサイドがオーディオブックを制作しますが、その代わりAudibleでしか販売できません。しかし、自社制作の場合は自社で販売できる旨味があり、いま業界的にホットなのはこちらの動きだったりします。

以上、2022年上半期の出版業界重大ニュースでした。

下半期はまた改めて。

※ここで言う「重大」はきわめて恣意的です。もっと重大なニュースがあるかもしれません。重大かどうかのご判断はお任せいたします。

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