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うつを治すには?――心理アプローチよりも大切なこと

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先日、音楽が心を癒す秘訣について簡単にご紹介しましたが、今日は「心理アプローチ」についてです。

参考にする書籍はハモショウこと橋本翔太さんの『聴くだけうつぬけ』です。

心理療法はマイナス状態には効かない!

 うつの回復に心理学のメソッドが役立つのは言わずもがなで、カウンセリング中によく行われる「認知行動療法」も心理学のメソッドのひとつです。うつによって歪んでしまった認知(考え方)を少しずつ修正して、新しい考え方を身につける方法論です。
 ところが、この認知療法(あるいは他の心理療法)を行うには、うつからある程度回復していることが大切です。ズンと重いマイナス状態にいて、起きるのもやっとの人は、心理面に取り組むのは早すぎます。
 心理メソッドに取り組むにはある程度のエネルギーが戻らないと効果も出
ません。

 身についた心のクセ(考え方のクセ)や傷を治すには、自分と向き合えるくらいにまでエネルギーが回復していることが大切です。
 それを知らずにうつのつらいときに認知行動療法や心理療法をやろうとしても無理が出てきます。「自分を変えることができない」と自分を責めてしまいがちです。
 回復の過程に応じて心のアプローチを取り入れましょう。

橋本翔太『聴くだけうつぬけ』
イラストレーション:髙栁浩太郎

完全に落ち込んだときは、無理に心理療法で改善しようとしても空回りしてしまって、よけい落ち込んでしまう。

つまり、心理アプローチは少しだけ元気になったときに取り入れると、うまくいくというのです。

このほかにも橋本さんは本書で次のような警鐘を鳴らしています。

  • アドラー心理学はうつの人にはきつい

  • アドラー心理学は、元気な人が取り組むことでより効果を発揮する。どちらかというと自分を鼓舞するための自己啓発に近い心理学。一歩間違えると自責の念が強くなって、余計に自分を責めてしまう。

  • 東洋的で日本人にもあった哲学的なアプローチである森田療法は「ガマン療法」になってしまうことがある

結論として「この心理メソッドが絶対!と断定しないこと」と説かれています。

それよりも大事になるかもしれないのが、次のような考え方です。

日本人に根強い「他者優先」があなたを苦しめる

 うつの回復に大切なのは、自分優先に切り替えることです。不調だった頃に海外の友人から「ショウタは他人を優先しすぎる。いつだって『I come fi rst』なんだよ!」と何度も言われました。ほら、「I come fi rst」って言ってごらん、と。
 自分が先にくる、自分自身を誰よりも何よりも優先しなくちゃいけないんだよ、と友人は繰り返し教えてくれました。
 日本では、相手を尊重して優先すること、周囲に迷惑をかけないことが、何よりも大切とされがちです。相手を思いやり譲り合い、期待に応えることが素晴らしい……。
 これは日本の文化でもあり、日本人の美しさでもあると私は思います。
 その一方で、むしろ自分をないがしろにして自己を犠牲にすることが美化される風潮もありますよね。これが行き過ぎると心が苦しくなります。この行き過ぎた他人優先の発想が、海外の友人たちにはないんです。ほぼゼロです。
 日本人どっぷりの私から見ると、「ええ! そんなのわがままだよ!」と最初は思うこともありましたが、彼らは自分の身を守り、自分に優しくするのが第一優先で、自分の身を削ってまで他人にエネルギーを使おうとはしません。
 相手を押しのけて自分が利得を得る「ジコチュー」ではなく「余ったエネルギーを他人に使うのはOKだけれど、自分を満たすのが当然何よりも先でしょ。自分が満たされてないのに誰かを助けられるわけないじゃん」と基準が明確なのです。
 他者優先の人は、自分を優先するとものすごく罪悪感を覚えます。
 これを少しずつ変えていきましょう。

橋本翔太『聴くだけうつぬけ』

私としてはいつも「自分中心」なので、日本の純正な文化にふさわしくない人間かもしれません……。ともあれ、他者を優先する人、利他的な行動をとる人は私の周りでも少なくありません。

うつになる人は、心がとてつもなく優しい人なのかもしれません。

そういえば、私の周りの心の病にかかった人たちはみんな、心根が優しい人だったなと気づきます。

でも、橋本さんはそんな人々に向かって「自分を満たすのを優先しなさい」と言います。

まずは自分のコップを満たすこと

 あなたの心にエネルギーを溜めるコップがあるとします。自分のコップを先に満たしてから、溢れてきた分を他人に使う。
 そうしないと自分が枯れてしまう。
 それを海外の友人たちはわかっているのです。
 日本では、自分のコップを満たすことを優先すると、それをわがまま、自己中心的、非常識、大人気ない、自分勝手と非難されることがありますが、自分優先にして何が悪いのでしょうか。あなたの面倒をみてくれるのは、あなた自身なのです。その大切な人を優先して何がダメなのでしょう。しかし私は日本を出て海外の友人たちの態度を見るまで、そんなことはしてはいけないと信じていました。
 自分のコップを減らさないこと、自分のコップを満たすことを第一優先と
し、自分優先でいることを責めてしまう癖を意識して減らしていく。
 この練習があなたのうつ、心の不調を軽くしてくれます。

橋本翔太『聴くだけうつぬけ』

「あなたの面倒をみてくれるのは、あなた自身なのです」って、いい言葉ですね。だから、まずは自分のコップを満たそう。自分のコップからあふれた分を他人に分け与えればいい。

そういえば、別の企画で「人を見る目を鍛える」というテーマの取材のときに、面白い話がありました。

組織や社会で成功していく人物には「サイコパス」が意外と多いという話があったのです。サイコパスとうつ病は対極のような気がします。とにかく自分中心で他人を蹴落としていく人生に疑いを持たないサイコパス気質。かたや、自分を殺して他人優先で生きて病んでしまううつ気質。

どっちがいい悪いとか、正しい正しくないではなく、生まれ持った性質や役割がそれぞれあるんだと思います。

橋本翔太著『聴くだけうつぬけ』では、今回紹介した話以外にも・・・

  • 「自分原因説」はもうやめよう

  • 自分を責めることをやめるとうつは消える

  • 感情のフタを外していくことがうつ回復につながる

  • 思い切って「許し」と「感謝」を手放そう

  • 「怒り」がうつを吹き飛ばす突破口になる

  • 「よい子」は実は「自分には悪い子」

  • 怒りを解放する具体的方法

などなど、心理アプローチにおける解決策の数々を紹介しています。

『聴くだけうつぬけ』は、もともと重度のうつで苦しんだ橋本さんが、回復する過程で手に入れたメソッドをまとめています。うつで苦しんでいる読者に救いの光を与えたいと願う著者の想いが詰まっている本です。

こちらのnoteでまた改めてご紹介したいと思います。


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