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議員・公務員はどんだけ稼げるのか?

先日、2021年卒の大学生の就職人気ランキングの調査結果(文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所調べ)をみて、びっくりしました。

第1位 伊藤忠商事
第2位 明治グループ
第3位 大和証券
第4位 日本生命保険
第5位 丸紅
第6位 博報堂
第7位 損害保険ジャパン
第8位 三菱商事
第9位 大日本印刷
第10位 ソニー

正直「ええええええ!!」と思ってしまいました。1990年代に大学を卒業した自分からしたら「当時のランキングみたいじゃん!」と。たしか当時は旅行代理店のJTBが人気でランキング上位の常連でしたが、あれやこれやで消えましたね。

それよりもなによりも、トップが伊藤忠で、よりによって商社が3社(伊藤忠・丸紅・三菱商事)も入っているのが意外でした。

大学を卒業してフラフラした末に、編集プロダクションにバイトで潜入して出版業界というやや特殊な世界に忍び込んだ自分としては、まったく異世界な話ではあるのですが、学生時代の同級生には有名な一部上場企業に勤める輩も多いです。彼らの「大企業に勤める悲哀」みたいな愚痴めいたものを聞いたり、「俺は定年まで逃げ切る」なんて話をよく聞きます。

社会的ステータスと高給の引き換えに背負ってしまった何かに苦しんでいる彼らをみると、「ああ、やっぱり大学時代ちゃんと就活しないでよかったな」なんて思う自分がいたりします。

一方、いまの若者は違います。もっと超現実的にキャリアをイメージしていて、その最たるものは「公務員志望の若者が多い」という事実です(私が学生だった時代には考えられない!)。

法人向け与信管理サービスを提供するリスクモンスター(東京都中央区)が2020年2月28日に発表した「就職したい企業・業種ランキング」によると・・・

1位 地方公務員
2位 国家公務員
3位 グーグル

・・・という結果だったそうです。

これって、けっこうリアルな調査結果ですね。

では、公務員、国家に奉仕する職業がどんだけ稼げるのか。『なぜ、カノジョは原価100円の化粧品を1万円で買ってしまうのか?』(神樹兵輔・著)に興味深い記載がありましたので、みていきましょう!

国会議員のべらぼうな高額報酬

 市場原理の経済効果や効率性、マーケティングといった概念が、一切通用しない分野があるのをご存じでしょうか。私たちの税金で賄われているとされる議会や行政のコスト構造のことです。実際には、これらのコストは膨らみすぎて税収では足りず、国も地方も金を増やすことで維持・延命を図っています。
 民間の経済感覚では考えられないような「既得権益」の甘い蜜をしゃぶり続けるシロアリ議員やシロアリ公務員の存在が、マスメディアも加えて、「馴れ合い互助会」の構図を作っていますから、ギリシャやキプロスのように行きつくところまで行かないと、改革のメスが入ることもないでしょう。
 一般国民は、年金や医療費など社会保障費の増大で、日本の財政が苦しくなっているとマインドコントロールされていますが、本当はシロアリ議員とシロアリ公務員の存在が一番の問題です。これらを放置する現状が続く限り、税金はとめどなく上がり、やがて財政破綻を迎えることも確実ですが、もちろんその場合でも、間違いなく尻拭いをさせられるのは一般国民でしょう。
 さて、紙幅の関係もあるので、ここではシロアリ議員とシロアリ公務員が、どの程度、民間の経済感覚からかけ離れてオイシイ存在になっているかについてだけ、ざっとおさらいをしておきます。まずは、国会議員からです。
 衆議院議員が480名、参議院議員が242名で、合計722名もいます。人口が日本の2・5倍の米国の下院議員435名、上院100名の合計535名と比べても多すぎるのは一目瞭然です。
 なお、日本の国会議員は3人に1人が世襲です。
 世襲が多くなる理由は、まず何といっても議員の待遇がよすぎるからでしょう。議員になれば一族が繁栄できます。その他、選挙では「地盤」「看板」「カバン」といった要素が有利にはたらきますが、そのうち大きいのは「カバン」で、政治資金が無税で移転できることです。親族の政治資金管理団体間で寄付を行えば、世襲候補が有利になるゆえんです。
 もちろん、お人好しの選挙民が馴染みの顔や名前の人に投票してくれることも前提です。

うーーーーーーーーーーーーーーーむ。

そもそも日本は国会議員が多すぎる。そんな単純な事実さえも議論されませんよね。どこかで議論されてるのかもしれないけど。

国会議員のコストは
1人当たり極小に見積もっても年間1億円!?

 国会議員になると報酬がいくらもらえるかですが、マスメディアは、給与に相当する部分として「歳費」分しか報じません。べらぼうにもらっていることが国民に知れ渡ると議員が困るからですが、国会議員は名目をもっともらしく分けて報酬を得ています。
「歳費」だけだと、年間約1560万円ですが、これにボーナス相当の「期末手当」が年間635万円。さらに非課税で何にでも使える裏給与といわれる「文書通信交通滞在費」が毎月100万円で年間1200万円。ここまででも、すでに年間3395万円になります。
 さらに、議員はロクに法案など作りませんが(ほとんどが政府提出法案)、所属会派から「立法事務費」が年間780万円もらえます。そして同じく所属会派から「政党交付金(政党助成金)」の分け前が年間に最低でも1000万円ぐらいもらえます。
 これらをざっと合計すると、国会議員の報酬は、年間5000万円超になります。
「政党交付金」(1994年導入)というのは、ワイロの匂いプンプンの企業団体献金を禁止するために導入したはずでしたが、企業団体献金は今でも1団体1億円を限度に政党支部などに贈れるので、迂回して政治家の元へ届きます。個人は1人年間2000万円を限度としていますが、企業団体献金の1億円を超えた分を個人に偽装して贈ることもできます(政治資金規正法は改定を繰り返してきたものの必ずザルになる仕掛けを残しています)。
「政党交付金」は、国民1人当たりの負担は250円ですが、毎年320億円が一定の要件を満たした政党にバラ撒かれます。722名の国会議員で割ると、1人当たり4400万円強にのぼります(ただし、日本共産党は支持しない政党にまで国民のお金を配るのは「思想信条」の自由に反する憲法違反として一度も受け取らず、その分が他党に回ります)。
 なお、議員1人当たり4400万円分の政党交付金をどう分配するかは各党の裁量です。
 この他にも、国会議員は政策秘書1名(試験が難しいのでたいてい5年以上の公設秘書が研修を受けてなる)、公設秘書2名を雇え、3人分の給与約2400万円分も国が支給します(以前は親族を名義上の秘書にして給与を丸取りしていて逮捕された議員もいましたが、現在は半強制的に政治家への寄付の形でキックバックさせるケースが多いようです)。
 ここまでの議員1人当たりのコストを考えると、軽く1億円を超えるのです。

なんと!

議員は年収1000万円を超えるという数字はなんとなく見聞きしていましたが、それでも「国会議員になったら年収1000万か。いいよなー」なんて思ってたぐらいです。

ところが、名目上異なる収入がこれだけあって、最終的には年収1億円になるとは。そりゃ、父親が政治家やってたら息子も政治家目指すわけです。

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日本の国会議員の特別待遇は世界一

 他にも、派閥からは盆暮れに氷代やモチ代がもらえたり、パーティ開催でも稼ぎます。議員会館の事務所はタダで使え、電話代も光熱費もタダです(もちろん税金充当)。交通至便の一等地にある議員宿舎は激安家賃で住めます(ラブホ代わりに使う議員も)。
 議員を10年やれば、厚生年金や国民年金とは別に、月額29万円の年金を死ぬまでもらえます(新規分は廃止したものの、従来分は縮減して続行中)。JR全線のグリーン車がタダで乗り放題、航空会社からは地元選挙区との往復チケットが月に4回分タダでもらえます。「海外視察」と銘打っての、至れり尽くせりの観光慰安旅行もタダで行けます。
 議員総数722名なので、超少な目に1人当たり1億円の直接コストとしても、722億円です(人件費など議会諸経費を加えたら軽く1千億円を越えます)。
 2012年度の一般会計予算に占める税収42兆円の0・17%に相当します。
 こんなにもらっているのは、日本だけです。米国の上下両院議員でも、報酬額は1650万円そこそこです(17万4000ドル。1ドル95円換算)。ドイツも同水準です。米国は立法府と行政府が完全独立していますから、法案はすべて議員が作ります。
 そのためのスタッフ人件費が認められていますが、年収400〜500万円程度のスタッフやボランティアを数十名雇い、そのための人件費は7000万円前後までが実費弁償で認められているだけです。
 もちろん、こうしたスタッフは選挙区での活動はできません。
 日本では、国会議員にべらぼうな報酬と特典を与えていますから、そのオイシイ議席を維持するために、選挙活動(就活)に精力を集中していきます。
 722名も議員がいると、サボっていようが何をしていようが国民にはわかりませんから、手抜き心理の「リンゲルマン効果」も、目いっぱいはたらきます。
 議席維持のために、公設秘書を地元選挙区に動員するだけでなく、地元専用の秘書も複数雇って自分の「就活」に邁進するのみです。
 せっせと「口利き」と「利権漁り」に励み、後援会作りに奔走します。
 そのため金欠になり、ますます危ない橋を渡る議員も出てきます。
 政策の勉強どころか、官僚の言いなりで特定業界の利益代弁者となるゆえんなのです。

いやー、日本の国会議員は最高ですね。「落選したら、ただの人」なのでギャンブルな人生ですが、当選すればサイコーです。

「リンゲルマン効果」とは、組織で共同作業を行う際に、組織への参加人数の増加に伴って一人一人の課題や業務の遂行量が減少する現象のことを指します。社会的怠惰、社会的手抜き、フリーライダー(ただ乗り)現象とも呼称されるそうです。

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ちなみに、おいしいのは国会議員だけではないようです。

地方議員も濡れ手にアワで儲かる

 オイシイのは国会議員だけではありません。地方自治体議員も同様です。
 日本には2013年1月時点で、47都道府県、20指定市、789市、23東京特別区、746町、184村の合計1742の地方自治体があります。
 1995年時点では、3500前後にものぼった自治体数でしたが、95年〜2008年あたりの「平成の大合併」によって、約半分にまで減少しています。
 しかし、これらの自治体の議会議員数は、現在およそ3万6449名にも及んでいます。
 国会議員同様に、報酬は「歳費」の他、「期末手当」「政務調査費」「費用弁償(日当など)」などに分けられますが、こうした報酬の合計額の平均は、県議が約1600万円、市議が約850万円、町村議が約400万円となっています。
 もちろん、平均ですから、大都市ではこれより多く、小さな市町村ではこれより少なくなっています。
 たとえば東京都議会議員なら、「歳費」と「期末手当」と「政務調査費」の合計で、年間2500万円強、神奈川県議で2300万円強、さいたま市議でも横浜市議でも1800万円強といった按配です。
 海外視察もあれば、高額の議員年金まで完備されています。
 こうして、全国の地方議員に支払われる報酬総額はざっと年間3000億円強となっています。国会議員同様、地方議員の報酬総額も、世界最高水準になっているのです。

3000億円!

編集者やめて、神奈川県の議員目指そうかな。。

地方議員はすることがなくてヒマという実態

 しかも、議員はロクに仕事をしません。
 勉強もしないので知識もありません。
 報酬目当ての兼業自営業者が議員には多く、たまにテキトーに議会に行くだけです。
 諸外国の場合、地方議会は夜開かれ、サラリーマンでも地方議員になれる仕組みですが、議員報酬はボランティア報酬です(米国の群や市レベルは年間40万円程度、イギリスは県や市町村レベルで年間50万円程度、フランスは年間10万円程度、スイスは無報酬など)。
 日本の場合は、本会議、委員会含めても年間平均70日ぐらいしか開かれません。首長の提出した条例案は、修正されることもなく、約半数が丸のみで議会を通ります。
 しかも、まったく議員提案がない議会が、90%にも及んでいるのです。
 それでも、本会議や委員会にちょっと顔を出しただけで費用弁償として日当が1万円以上もらえたりします。
 選挙の時だけ、有権者に「頑張ってるフリ」をすればよいのです。
 議会が、行政のチェック機能として、はたらいていないのはいうまでもありません。議員、首長、公務員の多くが「馴れ合い互助会」メンバーでシロアリ状態なのです。
 これまた、財政破綻するまでは、こうした構造にメスが入ることはないのでしょう。

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なるほど・・・やっぱり編集者辞めて議員になろうかな!

「非常勤行政委員」は超ラクチンで儲かる

 さらに、議員よりオイシイともいわれるのが「非常勤行政委員」です。
 教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、労働委員会などという名称をきいたことがあるでしょう。そこに属する委員というのが「非常勤委員」なのです。
 これらは、地方自治体から独立した公的な第三者委員会という建前になっています。
 しかし、たいていは首長が、自分の知人(元議員、後援会幹部など)を指名して、ボンクラ議会がそのまま承認するので、テキトーに委員になれてしまいます。
 委員になると、自治体の中に設けられた、こうした委員会に年に数回ほど、ほんの数十分出席するだけで、毎月10〜30万円程度の定額報酬が保障されるようになっています。
 年間報酬総額はともかく、時給換算すると数十万単位でもらう人がゾロゾロいます。

かたやどんどん貧乏になっていく国民

 さて、国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、民間企業で働く人の平均年収(所得に非ず)は、1997年度に467万円のピークをつけて以来、2011年度の409万円(男性504万円・女性268万円)まで、14年間で58万円の減少です(09年時は過去最大61万円の減少幅になった)。つまり、月間平均で約5万円の収入減なのです。
 また、総務省の「就業構造基本調査」によれば、30〜34歳の年収分布は、この間に200万円強も下がり、35歳までに年収600万円に達している人は、たったの3・6%しかいないという惨状になりました。
 グローバル化の進展とともに、企業が労働分配率を下げ、正規雇用を減らし、内部留保に励んできた結果がここに見て取れます。

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うわーー・・・・。

税金も社会保障もどんどん上がってるから実質的にはもっと下がっていると思われます。

・・・やっぱり議員目指そう。。

ところで、国会議員、地方議員が儲かるのはわかりましたが、いまや就職希望トップの「公務員」はどうなんでしょうか?

日本の公務員の待遇は世界一!

 ところで、民間の雇用者と違って争議権こそないものの、カラ出張、カラ手当で裏金を作り、ヤミ専従で公金を詐取しても業務上横領罪にも問われないのが公務員です。
 そして、詐病で1年ぐらい休職しても給与が支払われ、痴漢や酒気帯び運転程度の犯罪ではクビにもならない──という手厚い身分保障があるのも公務員です。
 激安の公務員宿舎に住め、年功だけで役職以上の給与が支払われ(ワタリ)、退職後も天下り先が確保され、厚生年金よりも保険料が安くて支給額の大きい(職域加算)「共済年金」があり(私学教職員共済50万人を含む450万人が加入)、仕事に応じて各種の付加手当もてんこ盛り──というのが公務員です。選挙の時は組合からも手当がもらえます。
 大きな自治体なら生涯賃金は3億円を超え、退職金も2000万円以上もらえます。
 給食のおばさんが年収900万円だったり、市バスの運転手が年収1300万円などと聞くと、いかに公務員の世界が浮世離れした異常なことになっているかがわかるでしょう。
 地方公務員一般職の平均年収729万円。
 国家公務員一般職の平均年収663万円。
 人事院と総務省の表向きのデータではこうでも、昼間の仕事を抑制して残業すれば、もっと稼げます。
 さいたま市では、残業代が給与と同額レベルで実年収が2倍の1500万円超になった職員もいます。
「夫婦で公務員」というのが若者の理想になるゆえんです。
 正規の国家公務員と地方公務員の合計約400万人の人件費約28兆円を2割カットするだけでも5・6兆円(消費税率3%弱分)が生まれますが、そういうことにはけっしてならないのが、日本の「馴れ合い互助会」のシステムということなのです。
 大手マスメディアも、自治体施設の中に「記者クラブ」などと称する部屋をあてがわれ、自治体側からコスト丸抱えで飼いならされているため、よほどの犯罪事例以外は、何の問題提起もなされません。

あー・・・やっぱり公務員もおいしいのか。。

こうしてみてみると、日本のGDPを抜かした、海の向こうのどこかの国みたいですね。中央集権の中央が潤って、多くの民が苦しむ。

ちょっといろいろ考えさせられる問題提起ですが、こうしたさまざまなブラックな実情を丸裸にしたヤバい本が『なぜ、カノジョは原価100円の化粧品を1万円で買ってしまうのか?』(神樹兵輔・著)です。

ちょっと古い本ですが、ご参考ください。

(フォレスト出版編集部・寺崎翼)

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