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事件は会議室で起きてるんじゃない。

フォレスト出版編集部の寺崎です。

7万部を突破したベストセラー『最高の結果を出すKPIマネジメント』の著者・中尾隆一郎さんの最新刊が今週末にいよいよ発売となります。

タイトルは・・・『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。

実はこちらのタイトル、当初は『現場を動かすマネジメント』という形で営業部とも合意していました。

ところが、著者の中尾さんにご相談したところ「マネジメント層が現場を動かすのは時代遅れ。これからの組織は『現場が自律的に動く』ことが重要。そのための組織づくりをするのがマネジメントの要諦だから、『現場が動く~』に変えてもらえないだろうか」と相談を受けたのです。

なるほど!
そうか、たしかに本書は「自律自転する組織づくり」というテーマなので、内容とも合致します。

というわけで――『現場が動くマネジメント』というタイトルに着地。

こちらの企画の立ち上げはちょうど今年の2月ごろ、コロナがようやく沈静化して、オフィスにも日常の風景が戻ってきたころのことでした。

そのころちょうど、2020年ごろから始まったリモートワークの普及の反動で、「リアル出社派」が発言を増していました。

御多分に漏れず、フォレスト出版でもその議論がありました。

寺崎
「中尾さん、うちでもその話が出てるんですよ。けっこう多いですか?リアル出社戻す企業」
中尾さん
「いやぁ~めちゃめちゃ多いです。そのことに絡んで書きたいテーマがあるんですが、相談に乗ってもらえますか?」

こんな会話がきっかけでした。

本書をざっくりひと言で言うと「リモートとリアルの併用が普通になるこれからの企業組織で、いかに現場を把握してマネジメントするか」です。

中尾さんのマネジメント・メソッドの集大成のような内容になりました。

「現場の悩みや問題がいまいち把握できない」

これはリアルでもリモートでも同じことです。

そんな悩みを抱えるリーダー、マネジメント層にぜひお読みいただきたい。今日は発売を記念して、本書の「はじめに」を全文公開します。まえがきにしてはいささか長めですが、著者・中尾さんのメッセージ、使命感が伝わるかと思います。


『現場が動くマネジメント』はじめに全文公開

 この本を手に取っていただき、ありがとうございます。

 突然ですが、2つ質問をさせてください。
 
 質問1 あなたは、会社で働くのは「楽しい」ですか?
 質問2 あなたが会社のリーダーや経営者であれば、あなたの組織のメンバーは「楽しい」と思って働いていますか?

 
 これらの質問に対して、会社で働くのは大変なものだ、「楽しい」なんて甘いことを言っていたらダメだ。そう思っている人が多いように私は感じています。
 しかし、あなたにとっても、一緒に働く仲間にとっても、働いている時間が「楽しい」ほうがいいですよね。
 人は、自分がやることを自分で決めることができると「幸せ」を感じます。これは心理学者のカール・ロジャースの言葉です。
 逆に自分がやることをすべて人に決められると「幸せ」ではなくなります。

 キーワードは「自律自転」
 つまり、自分でやることを決めて、自分で動くということです。
 この本は、現場で働くのが楽しくなるための技術をまとめた本です。
 働くのが楽しい人と組織が多くなると業績が向上します。そして、その楽しく業績を挙げている人と組織をもとに、事業の方向を変化させ続ける。すると、さらに業績が向上します。そうすると現場のメンバーは自分たちの声が事業をよい方向に変えていると感じ、さらにやりがいを感じ、働くのが楽しくなる。
 こんな好循環が起き続けるのです。
「自律自転」あるいは会社で働くのを「楽しくする」に興味がある方は、ぜひ手に取って読んでください。

リクルート時代に味わった「会社に行くのがつらい」という体験

 私がリクルートに入社したのは、バブル景気真っ只た だ中な かの1 9 8 9年でした。
 前年にリクルート事件があったにもかかわらず、848名の同期と入社しました。
 入社当初、通信事業の技術職として配属されたのですが、2年目には、全社の営業シフト(営業できそうな人は営業に異動)の流れで、企業の新卒採用を支援する求人情報誌の広告営業職に異動になりました。
 技術職から営業職。180度の方向転換ではあったものの、よい成績をあげることができ、3年目には、リーダーに昇進しました。
 しかし、このタイミングの1992年ごろから、(後から考えると)バブル景気が崩壊し始めていたのです。
 バブル崩壊とともに、企業の新卒採用意欲は一気に低下していきます。そうなると企業が新卒学生の求人数を減らすのは当たり前。極端なケースでは、新卒採用を凍結するのです。当然、私たちが営業していた大学生の求人活動の広告はストップになります。
 その結果、ある会社から受注しても、それと同額、あるいはそれ以上のキャンセル連絡が別の企業から来ます。これがバブル崩壊時のリクルートの新卒採用を支援する部署の営業活動の実態でした。
 そこから数年は、辛い日々を過ごしました。
 本格的にバブルが崩壊しました。業績は簡単に上がりません。
 日本中が厳しい状況でした。
 リクルートは、子会社の不動産会社とリース会社の借金1兆数千億円を肩代わりしました。その後、そんな借金のあるリクルートをダイエー創業者の中内さんが株を購入し、支援をしてくれたのです。
 そのおかげで、リクルートは何とか持ちこたえることができました。
 当時、私は現場の営業リーダーでした。事業本部も何とか売上を拡大するために、いろいろ施策を考えるのですが、現場の一リーダーに過ぎない私は、その検討に加わることができません。
 知らないところで決まった、やっても結果が出ない施策を、上司から命じられるまま、ただひたすら実行し続けなければならないのです。
 朝起きて、会社に行くのがつらかったのを覚えています。
「早く1日が終わればいい」と感じていたのを覚えています。

 今から考えると、このつらさの原因がよく分かります。
「売れない」「結果が出ない」も原因の1つです。
 それ以上に、自分がやることを決めることに、まったく関与できなかったことへの苛立ちがありました。つまり、「自分がやることを自分で決められなかったこと」が大きな原因だったのです。
 例えば、当時の私はリクルートの中で最も薬学部学生の採用についてのノウハウがありました。それは、担当顧客に大手のスーパーマーケットや調剤薬局があったからです。これらの企業群は、バブルが弾けても薬剤師を必要としていて、この求人ニーズが底堅かったのです。しかし、この薬学部学生向けの新メディアを作る際に、私は声もかけてもらえませんでした。
 この企画を検討している本部の人たちのことを、私たち現場の人間はよく知りません。そして、残念ながら本部の人たちも、私たち現場の人間のことを知りません。
 私がこの分野であればいちばん知っているはずなのに、商品企画の相談が来ない。
 つまり、本部メンバーから「敬意を払ってもらっていない」と感じて腹立たしかったのです。
 私は自分でやることを、現場をまったく知らないように見える人に決められていたのです。そして、その知らない人が決めたことをただただやるように命じられていました。しかも、自分で工夫をする余地もない。
 だから私は、不満を持ち、不幸せに感じていました。
 当時、本部の従業員が現場の情報を入手する方法は限られていました。だから仕方がない部分はありました。しかし、私は不満でした。
 幸い、その後、私は「自分がやりたいこと」を周囲に伝えることができるようになり、加えて上司や同僚に恵まれ「自分でやることを決める」ことができました。その結果、職場で幸せを感じることができるようになりました。
 だから、29年間もリクルートで働き続けることができたのです。

第三の場所で輝く人たちとの出会い

 ところが、その後このように職場に不満を感じる人は私だけではないということに気づきました。
 29年間勤めたリクルートを退職した後、少し時間があったので、私は社会人大学院に通うことにしました。
 そこはさまざまなバックグラウンドの人が集まっているユニークな場所で、上場企業の社長、幹部や管理職など、ビジネスで活躍している人もいる一方、大学教授や学校の先生、音楽家、スポーツ選手など、日常では接しない人同士が一緒に学んでいました。
 多くの人が、自分らしさやリーダーシップを発揮していました。
 しかし、そのような方々と親しくなるうちに、不思議なことに気づいたのです。
 ここでリーダーシップを発揮できるのであれば、会社や職場でもきっとそうなのだろうと話を聞くと、会社や職場では、自分らしさを出せずに押し殺している人がいるのです。
 職場では自分らしさを発揮できないのに、この場所では自分らしさを発揮できる。
 何が違うのでしょう。それが私の疑問でした。
 家庭を第一の場所、職場や学校を第二の場所と表現することがあります。そして、これらの場では自分らしさを出せない人が、第三の場を探すという話があります(スターバックスなどは、その第三の場所、サード・プレイスになることを目指しているので有名です)。
 このような社会人大学院も第三の場所といえるでしょう。第三の場所ではリーダーシップや自分らしさを発揮できる人が、第二の場所である職場では、自分を押し殺さざるをえない。そこに何か違和感を持ったのです。
「会社なんてそういうものだ」と割り切ることもできます。しかし、週の大半の時間を費やす職場で自分を押し殺さないといけないなんてもったいない。そこまでではないにしても、自分らしさを発揮できないなんて、何かおかしいですよね。
 話を詳しく聞くと、どうやら「決まったことをやらされている」ようなのです。
 変えようと思っても会社のルールやしがらみなどでがんじがらめになっている。そして、何かを言っても変えられないと、あきらめているようでした。
 私が、若いころにリクルートに対して持っていた不満とまさしく同じです。
 ほかの場所で活躍できる人が、会社では活躍をあきらめている。これは、会社にとっても、個人にとってもあまりにももったいない状況です。

人は自分でやることを決められると幸せになる

 私は29年間勤めたリクルートの最後の2年間は、「リクルートワークス研究所」に属していました。研究テーマは「なぜ中尾が担当した組織は、メンバーが自律自転するのか?」というものでした。
 研究所の直前の10年間、私は2つの事業の責任者をしていました。それは、スーモカウンターという住宅領域の新規事業と、リクルートテクノロジーズというリクルートグループ全体のテクノロジー強化を担当する事業でした。
 住宅領域での新規事業とテクノロジー事業の組織。
 一見関係がなさそうな2つの組織には、実は共通点がありました。
 それは、両組織とも短期間で多くのメンバーを採用し、急拡大したことです。
 一般的に組織が急拡大すると、組織にひずみが生じて、従業員満足度が低下し、離職が起き、その結果、顧客満足度も低下することが少なくありません。
 そうなる原因は多岐にわたります。
 大量採用自体を目的としてしまうことによる弊害や準備不足です。採用数を追いかけるのが目的になり、自社、自組織のパーパスやビジョン・ミッションに合わない人を採用してしまうのです。
 加えて、大量採用できたとしても、育成する仕組みが準備・整備がされておらず、現場に配属した後も適切なマネジメントができる管理職が不足しているなどの準備不足により、多くのひずみが起きるのです。
 その結果、自社に合わないメンバーが大量に入社し、育成もそこそこに現場に配属され、同じく育成されていない管理職がマネジメントを行う。しかも自社を取り巻く環境は、さまざまな変化をし、今まで通りのことをやっていても成果は上がらない。
 誰もがどうしていいか分からないなか、ひずみの連鎖が起き、職場の雰囲気は悪くなります。ここまでひどい状態ではないにしても、このような状態の職場であれば、自分らしさを出すのではなく、自分を押し殺して「会社にいる時間が早く過ぎればいい」と思うのは理解できます。
 ところが私が担当した両組織は、急拡大しながら、従業員満足度は高く、離職率は低く、そして顧客満足度も高位安定していました。
 
 これらの組織の共通のキーワードは「自律自転する人・組織」でした。
 つまり、現場が自分で考えて、自分で動いていたのです。
 実をいうと、両組織とも組織の責任者である私が不動産もテクノロジーも門外漢だったので、現場に権限移譲せざるをえなかったのです。それ以外に選択肢はありませんでした。
 その結果、現場が自律的にやることを決める組織になっていました。ある意味、けがの功名であったかもしれません。
 その時に知ったのが、次の言葉でした。

「人は自分でやることを決める時に幸せを感じる」

 前述した心理学者カール・ロジャースの言葉です。
 私がかつて仕事に対して嫌気がさしていた時や、社会人大学院でリーダーシップを取れるのに会社では自分を殺していた人たちに共通して起きていたことは、まさにこの逆です。
 他人が自分のやることを決めていたのです。
 現場のメンバーに活躍してもらうには、リーダーが「現場を見て」、現場のメンバーが何をしたくて、何が得意なのかを知る必要があります。そして会社、リーダーが彼らにやってほしいことと、これらの接点を見つけることがポイントです。
 その結果、現場が自律的に動き始めるのです。
 そして、リモートワークやオンラインコミュニケーションが普及してきた現在では、これを対面だけではなく、オンラインで実現しなければなりません。当然、職場で実際に会って把握するよりも難易度が上がります(「だから、当社は職場への出社を増やしているのだ」と思った方は、ぜひ序章を読んでください。これからはリモートワークとリアルワークの併用が当たり前になるでしょう)。
 これからのリモートワークとリアルワークの併用時代に現場のメンバーを見るスキルが、この本のテーマである「現場が動くマネジメント」です。
 この本では、序章で、多様な働き方は不可逆であること、つまりオンラインでの仕事の仕方のレベルを上げるのは必須である理由について説明します。
 その後の章では、以下のように5W1Hで「現場が動くマネジメント」についてひもといていきます。
 
 第1章 Why なぜ、現場を見る必要があるのか?
 第2章 What 現場で何を見るのか?
 第3章 How どうやって現場を見るのか?
 第4章 Who 誰が現場を見るのか?
 第5章 Where どこで現場を見るのか?
 第6章 When いつ現場を見るのか?


 それぞれの章の冒頭に「まとめ」を付けました。全体像をつかみたい方は、それぞれの章の冒頭のまとめを順に読んでもらえればと思います。
 ぜひこの本を読んで「現場が動くマネジメント」を身につけて、自律自転する人、そして組織づくりができるリーダーになってください。
 1人でも多くの自律自転する組織を作るリーダーが増えれば、職場で幸せだと感じる人が増えます。幸せなメンバーを増やせる仲間が増えることを願って、この本を書きました。必要な人に届くように願っています。

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