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1人居酒屋、1人焼き肉という胆力を鍛える方法

あなたは1人で飲みに行けますか?
私は20代のころに文芸編集者にあこがれて、新宿三丁目やゴールデン街に1人で飲みにいくことがありました。
そういうところで1人で飲んでコミュニケーションをとれることが、一端の大人というか、成熟したカッコいい男と思っていたのです……。
しかし、どうしてもマスターやママ、姉さん、近くに座った人と、それっぽいコミュニケーションが取れず、いたたまれない気持ちになったものです。あるバーでは、寝たフリをしてやりすごしたことがあります。
「オレは、こういう店に来て他人に興味を持ってもらえるような経歴だったり、会話してもらえるほどの価値のある人間なのか?」などとキモすぎることを考えたりしていたものです。
しかし、いつからか、新宿に出ることはほとんどなくなったものの、飲みたいときにふらっと気になった店に入り、まわりを気にせず、あるいは周囲とたわいのない話をするくらいになれました。瓶ビール1本と焼鳥3本でお会計、なんてことも増えましたね。
大人としてのカッコよさを求めることから、純粋に安くて旨いものを探求したいという気持ちにシフトしたことが、20代のころといちばん変わったことでしょう。近所やいつもの通勤途上にそういう店を見つけたときは、レアアイテムをゲットしたような喜びに小躍りするものです。
とはいえ、赤ちょうちんや有楽町あたりの高架下に入ったときなんかは、「オレがもし大学教授だったら、吉田類を気取って女子大生なんかをこういう店に連れてくると、案外喜ぶんだろうな」などと1人で下卑たことを妄想したりするのですが……。

さて、キモい一人語りはこれくらいにして、本題に入りましょう。
これまで、3週にわたって『敏感すぎるあなたが人付き合いで疲れない方法』(根本裕幸)から人付き合いや自分軸に関する情報を紹介しましたが、今回も同様に本書から、先に触れた「1人居酒屋」について解説している箇所をご紹介しましょう。

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1人居酒屋という練習

 ところで、あなたは1人で居酒屋やバーに入って楽しむことはできるでしょうか?
 私は相互依存の状態をつくる練習のため、しばしば「1人で居酒屋やバーに行ってみてください」と提案をしています。
 1人で居酒屋に行って楽しめるかどうかは、自分軸に立ち、かつ相互依存状態をつくれているかをはかる1つの指標となります。
 人目が気になる人は楽しめませんよね。自分がどう思われるのか? という他者目線(すなわち依存状態であり、他人軸の状態)に意識が集中してしまうからです。馴れていない人はいたたまれなくなるかもしれません。そもそも常連客の中にたった1人で飛び込むのはアウェー感満載です。
 しかし馴れてきて、おいしいものをいただきながら、その空間を楽しむ。人の目線を気にせずに、自分の世界に浸る。店のシステムやマナー、そしてマスターやママとのやり取りをこなす。そこで会話が生まれたら、上手にコミュニケーションをとる。料理やお酒のことを質問したりしながら、どんどん新しい世界の扉が開く。そうしたことができるようになると、自信がどんどんついていきます。
 居酒屋やバーでは本当の1人ではないですよね。1人で飲んでいてもお店の人やほかのお客さんがいる、集団の中の1人なんです。これは自分の部屋で1人酒をすること、他人をシャットアウトして自立状態にいるのとは次元が異なることです。
 集団の中にいながらも、自分自身を保てる状態というのが、自立しながらもまわりと適度な距離感でコミュニケーションがとれる理想の相互依存状態といえるでしょう。
 だから居酒屋やバーというのは、そのための練習におすすめなのです。
 いきなり居酒屋やバーはハードルが高いということであれば、まずは少し背伸びして入るカフェやレストランはどうでしょう? また、少し高級なブティックに入るのもいいと思います。
 自分軸にいるかどうかが試される場所というのは、1人で行ける場所で、かつそこにいる他人との会話が発生しやすいところです。そこで自分を見失わず、自分のペースで過ごすことで、大人であることに自信が持てるようになるのです。
 また、1人居酒屋にはもう1つ利点があります。
 たとえば、会社員であれば、会社と自宅のほかにもう1つ、つまりサードプレイスが生まれることの効用です。安らげる居場所が増えること、あるいは逃げ道が増えることは心の負担を軽くしてくれます。
 もっとも、この点に関していえば、居酒屋に限らずに趣味などのサークルに求めてもいいでしょう。

最近はお一人様向けの焼肉店が増えています。しかし、あえてそういうところには行かず、普通の焼肉店に1人で入る、というのも胆力を鍛えるには良いトレーニングです(実践済み)。ランチであればハードルが下がるので、自分軸に不安を抱いている人は、ぜひ挑戦してみてください。

(編集部 石黒)

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