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他人との距離感がおかしい人たち

高校2年くらいのときに「新世紀エヴァンゲリオン」に出会ったのですが、そのときに中2的感性で「カッケー!」と思ってしまった言葉があります。

「ヤマアラシのジレンマ」

針毛があるヤマアラシは、仲間に近づけば近づくほど傷つけ合ってしまうというジレンマに陥ります。これを、親密になろうとすればするほど、相手を知ろうとすればするほど、傷つき、傷つけてしまうような人間関係に当てはめた心理学用語が「ヤマアラシのジレンマ」なのです。
リツコがミサトにそんなことを言ってました。

好きな人にアプローチを試みるも無下にされて傷つく、お互いに好き合っているのに親密になればなるほど、互いのデリケートな部分に触れてしまうために関係がこじれる、結婚した途端に相手の嫌なところが見える……、というのも、広義の「ヤマアラシのジレンマ」でしょう。

人は誰でも心の壁(エヴァ風にいえばA.T.フィールド)があるものです。お互いが傷つかないちょうどよい距離感を保つことを意識するのは大切ですが、時には、そうした壁を壊す勇気も必要なときもあり、一概に正解が何かとは言えない難しい問題でもあります。

しかし、あなたのまわりに、どんな人とでも上手にコミュニケーションをとっていて楽しそうにしている人はいませんか? あるいは自分に対してウザ絡みしてくる人は? あるいはあなた自身、相手とどのように接すればいいか、わからなくなることはありませんか?
こうした人間関係の距離感を考えるうえでヒントになりそうな箇所を、先週の記事「人間関係に疲れている人は、幽体離脱しているかも!? それがイヤなら鬼畜になれ!」と同様に、『敏感すぎるあなたが人付き合いで疲れない方法』(根本裕幸・著)の中から、本記事用に一部抜粋いたします。

バウンダリーとは何か?

 人間関係において、人との距離感がわからず、つい入り込み過ぎてしまう、あるいは距離を置きすぎてしまう、というパターンがある方はバウンダリー(心の境界線)がわからない状態かもしれません。
 通常、このバウンダリーは幼少期からの、人との関係性の中で培われていきます。
 子どもはすごく人との距離が近いんですね。
 公園に行けば、遊具の順番を待ってる列が非常に密接しているし、水槽をのぞく子どもたちの密着度も異様に高いです。このように公園では初めて会った子ども同士がすぐに仲良くなって遊びはじめるのですが、その親同士がすぐに仲良くなるかというと、そうとは限らないですよね。
 人は思春期で「個」が明確になっていく(アイデンティティが確立されていく)ので、人との距離感がはかれるようになり、バウンダリーが明確になっていくのです。近づきたいけど近づけない、近づいてほしくないけれど近づかれた、といった経験が左右しますし、いわゆる「相性」や「気が合う・合わない」も大きな影響を及ぼします(気が合う、相性がいい、という感覚も「個」が確立されて来るがゆえに意識できるものだと思います)。
 また、思春期において異性に対する意識が強いほど、その時期は緊張から話す際に距離を取りがちになりますが、その間合いが、大人になってもそのままであることが少なくありません。

バウンダリーがわからなくなる理由

 幼少期から親子関係に問題があったり、小学校時代にいじめにあったり、転校を繰り返していたり、大切な人を失う経験をしたりすると、このバウンダリーがわからなくなることが少なくありません。

キャプチャ

ちなみに、人間関係の距離感は母親との距離がベースになってつくられるそうです。


 たとえば、母親の過保護・過干渉や暴言・暴力に苦しんだ人の場合。バウンダリーをどれくらいきちんと設定しようが、お母さんがそこを強行突破して入り込んできたら、内なる世界をあれこれと破壊されたり、指示されたり、コントロールされてしまいます。それが当たり前になってしまうと母子癒着状態となり、「自分」を持つことが難しくなります(アイデンティティの喪失)。
 そして、それくらい近い距離ではバウンダリーは曖昧になり(というよりも存在しなくなり)、相手と自分との心理的区別がつかなくなります(これが癒着の状態です)。
 それを他人に投影していくので、人との距離感がうまくつかめず、不用意に入り込み過ぎる(または極端に距離を取る、突然関係性を切ってしまう)状態をつくります。
 また、転校を繰り返していたり、大切な人を突然失う経験を持つと、逆にバウンダリーが強固になり、人をハートの中に入れにくくなります。
 幼少期のハートブレイクがきつくて、人との親密な関係を築きにくくなるのです(大人になってからのハートブレイク体験でも生まれることがあります)。対外的には人当たりが良く、親しみやすい人なのに、ぐっと距離が近づくとつい冷たくして距離を置いてしまう……そんなパターンを持ちやすいのです。
 あるいは、実際の自分の性格と外からのイメージに差がある場合にも、距離のとり方に悩みます。たとえば本来は神経質でも、外から見ると朗らかそうな人などは、外側からの距離の近さにストレスを感じやすいものです。
 典型的な例を紹介しましたが、誰もが少なからずこうした経験を持つものなのです。
 逆に、「この人とは、距離の取り方が難しいな」と感じる人と出会ったことはありませんか? その人はあなた以上にバウンダリーの問題を抱えているのかもしれません。
 カウンセリングやグループセラピーでは、こうした事例を数多く扱います。1日に少なくても1回はこのテーマに触れると言ってもいいくらいですね。
 職場の人間関係、友人や恋愛、夫婦、家族の関係性。さまざまなところにバウンダリーの問題は現れます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 石黒)

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