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対岸の火事ではないウクライナ侵略

フォレスト出版編集部の寺崎です。

今日は目下「積ん読」状態で、今週末&平日の仕事の合間を見て読むつもりの3冊のうちの1冊をご紹介します。

いまのウクライナ情勢を考えるにあたって注文した『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』(グレゴリー・アンドリー著・育鵬社刊)です。

ウクライナ情勢を考える云々よりもっと正確に言うと「ロシアのウクライナ侵攻は日本にとって対岸の火事ではないのではないか!?」という危惧から手にした1冊です。

その「危惧」はまさしく当たっていました。

この本は通常の書店流通にはなく、kindleかプリント・オン・デマンド(POD)でしか読めません。たまたま目にしたアマゾンのレビューがすごくアツかったので、さっそくPODで取り寄せてみました。

著者はテレビでたびたびコメントを寄せる識者として知られるグレンコ・アンドリーさんです。

グレンコ・アンドリー Gurenko Andrii
国政政治学者。1987年、ウクライナ・キエフ生まれ。2010年から11年まで早稲田大学に語学留学。同年、日本語能力検定試験1級合格。12年、キエフ国際大学日本語専攻卒業。13年、京都大学へ留学。19年3月、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程指導認定退学。アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文・学生部門優秀賞(2016年)。ウクライナ情勢、世界情勢について講演・執筆活動を行っている。著書に『プーチン幻想』(PHP新書)。

『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』(育鵬社)より

これがですね、なかなか「はじめに」からぐいぐいと強いドライブ感で危機感をあおる感じでして、論より証拠ということで、「はじめに」を一部抜粋して紹介します。

 みなさん、一つ、クイズしませんか?
 ある国の特徴をいくつか言いますので、どこの国のことを指すのか当ててみてください。

「ある国」の特徴】
・国民は平和ボケしている。
・「軍隊はなくてもいい」という論調が強い。
・近年、国益を明らかに損なった売国政権を経験している。
・外国に媚びた弱腰外交を行っている。
・愛国者は「ナショナリスト」「ファシスト」とレッテル貼りされている。

 ひどい特徴ですね。このような国は遅かれ早かれ消滅する運命にあると、誰もが思うでしょう。
 さて、みなさん、この「ある国」とは、どこの国のことでしょうか……?

『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』(育鵬社)より


さて、この記事をご覧のみなさんも考えてみてください。
私は悲しいかな「日本」のことかな・・・と思いました。
ところがどっこい。

「日本」だと思われましたか?
 残念ながら違います。
 この「ある国」とは、「ウクライナ」です。
 日本とウクライナは、国防・安全保障の面や、国家意識・民族アイデンティティの面で、驚くほど似ているのです。
 ウクライナの国民も権力者も、日本と同様にまったく安全保障について考えていませんでした。軍隊や防衛費は削られっぱなし、軍人は全然尊敬されない職業でした。それに加えて、集団安全保障や集団的自衛権に対する反対意見も根強かったのです。
 また、ウクライナも日本と同様に外国のスパイが活動し放題の「スパイ天国」でした。
(中略)
 さて、ここまで日本と似ているウクライナはどうなりましたか?
 戦争になりました。
 ウクライナは国家としてしっかりしなかったから、非常に弱くなりました。だから隣国のロシアは無防備だったウクライナを攻撃して、戦争になってしまいました。
 いいですか、みなさん。ウクライナはどこも攻撃せずに、どことも敵対しませんでした。ずっと、「ウクライナは平和国家で、みんなと仲良くしたい」と公式に言っていました。
 それを実証するかのように、核兵器を全部なくして、非核三原則を発表しました。また、大量に持っていた通常兵器をほとんど処分しました。
 それにもかかわらず、ウクライナは平和でいられなかったのです。
 国際社会というのは厳しいもので、おとなしい平和国家であっても、凶暴な他国から攻撃されることがあります。
 そこでもう一度、みなさんにお伺いします。
 ウクライナと共通点の多い日本ですが、「ウクライナのように攻撃されることはない」と断言できますか?
 私は断言できません。
 ここまで似た状況にある両国は、同じ結末にたどり着く危険性が十分にあると思います。
 ウクライナに対して用いられたロシアの共産主義的手法は、今、中国によって日本に対して用いられています。その最も顕著な例が沖縄と尖閣諸島です。
 沖縄は第二のクリミアになりかねません。
 一方で、現在ウクライナで起きている戦争は、日本にとって非常に参考になるのではないかと思います。日本がウクライナと同じ轍を踏まないためにはどうすればいいのか、ウクライナが実例を示していると見ることもできます。
 しかし、残念なことに、日本のメディアはウクライナ情勢を報道する時に、「ウクライナの事例は日本に参考になる」という点を完全に見落としているのです。
 さらに、一部の「日本の保守言論人」を自負している人たちは、ウクライナについて嘘やデマに基づいて妄言を語っているため、一般の日本人が実際にウクライナで起きていることを正しく知ることができません。

『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』(育鵬社)より

戦後、ずーっと「平和ボケ」と呼ばれ続けた我々日本人ですが、この本を読むと「国際社会のなかのお人よしの日本人」である自分を実感せざるをえません。

この本では、ウクライナで実際にこれまで何が起こったのか、歴史的経緯を踏まえて解説されています。日本人がウクライナと同じような悲劇を繰り返さないための具体的提案がなされていて、とても参考になる内容です。

ちなみに日本人の感覚からすると戦争は今年起こったと感じますが、すでにウクライナでは「戦争」は数年前から始まっており、実際にこの本の元となる書籍は2019年6月に同じタイトルで発売されています。

おそらく2019年の段階では、誰もウクライナ問題に関心を抱いていなかったので、売れずに絶版状態になったものと想像されます。それを、kindle、PODでふたたび再販売したのでしょう。こういう売り方、これからはアリですね。

『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』もくじ
第1章 ロシアにダマされっぱなしの日本
第2章 ウクライナ侵略に成功したロシアのハイブリッド戦争
第3章 国家を死に至らしめる14の「政治的な病」
第4章 ウクライナはこうして共産主義を排除した
第5章 ウクライナ人に日本の諸問題はどう映るか
終章  日本こそ次の世界のリーダーになるべき

『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』(育鵬社)より


ちなみに積ん読している残りの2冊は、小泉悠『現代ロシアの軍事戦略』、小室直樹『日本人のための憲法原論』ですが、こちらはまた後日改めてご紹介したいと思います。

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