見出し画像

世界マネーの覇権を握る国はどこか?

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先日、2024年の日本に黄金期がやってくる理由についてご紹介しました。

この話をもっと大きなビッグピクチャーに映し出してみると、「世界マネーの覇権はどの国が握るのか?」という話題となります。

今日はこの「世界マネーの覇権」について、新刊『2024年 世界マネーの大転換』(今井 澂・著)の第1章から引用しつつ、見ていきたいと思います。

 一時期、GDPで中国が米国を凌駕するときが到来するという言説がまことしやかに拡散しました。各国のシンクタンクもほぼ同調していました。
 ところが、中国政府が強引なゼロコロナ政策を取り始めた頃から、そうした予測は過大評価で誤りであったとする発表が次々になされ始めたのでした。ようやく中国の実状がいわゆる「騎虎の勢い」であったのに気付いたのかもしれません。
 本文にも記しましたが、現在の中国経済は米国をキャッチアップするどころの騒ぎではないのです。かねてより私が主張してきたのは、中国の不動産バブル崩壊は本格化しており、きわめて深刻な状況を呈していることです。
 銀行、デベロッパー、ローンを組んだ庶民を巻き込んで、今後は壊滅的な結果が待ち受けているのだと、私は予測しています。 「人民元を世界の基軸通貨へ」とする中国の野望などとっくに吹き飛んでしまった。
 そう考えるのが自然なのです。

今井 澂著『2024年 世界マネーの大転換』

マジか。

「これからは中国が世界を席巻する時代がやってくる!」なんて思っていたのですが、どっこい違っていました。

それはそれで安心している自分がいるのが正直なところではありますが。笑

詳しくみていきましょう。


米中新冷戦と日本の立ち位置

 米中の覇権争いが激化する中、それでも米ドルが基軸通貨であり続けるはずです。
 その理由から本書の主題へと踏み込んでいきましょう。米ドルが基軸通貨である理由は、大づかみに言って二つあります。

① 国際通貨として貿易、金融取引に世界中で使われ、信任と利便性を備えている
② 通貨が国際的な決済業務を担っている


 決済業務とは、具体的にはこういうことです。
 例えばA国とB国とで輸出と輸入がなされているとしましょう。それは日によってはA国の輸出が少なく、輸入が多い場合、A国が赤字となることもあります。そうした毎日生じる金額のデコボコを調整するのがニューヨーク連銀で、赤字の場合はそれを埋め、黒字の場合は預かるなどの決済業務を24時間、365日無休で行っています。
 世界でこれを行っているのは米国と英国のロンドンだけです。
 しかし、シェア98%は米国なので、米国の独壇場といってもいいでしょう。

 1999年にユーロが誕生したとき、これをするのではないかと思ったのですが、結局できなかった。
 私自身、かつては銀行に身を置いて、米国債の売買をやりましたが、米国市場ほど便利な市場はないと実感しました。ですから、この決済機能がある限り、米国のドルは基軸通貨であり続けると断言していいと思います。

今井 澂著『2024年 世界マネーの大転換』

世界マネーの覇権、国際基軸通貨はこれまで同様に米国、ドルが握るであろうというのが、あっけない結論といえるのでしょうか。

いやいや、ちょっと待ってくださいな。

中国がぐんぐんと経済力を付けて、現に米中経済戦争が数年前から起こっています。これについてはどうなんでしょうか。

中国が米国の虎の尾を踏む日

 国と国との間では、毎日24時間、切れ目なく膨大な取引が発生しています。そこで各国が輸出超過、輸入超過などで資金難に陥らないように決済サービスなどを提供するのがニューヨーク連銀なのです。
 冒頭で述べたとおり、この決済機能はロンドンでも行われているものの、シェア98%はニューヨーク連銀が占めているといわれています。
 このことがまさにドルが覇権通貨として君臨する大きな要因でもあります。
 このドル一強体制をなんとか変えようと画策しているのが中国の人民元です。例えば、ロシアの輸入決済における人民元のシェアは2022年末時点で23
%、輸出決済においては16%に上昇しています。
 これには理由がありました。ロシアのウクライナへの侵攻以降、ドル、ユーロなど主要通貨での国際銀行間決済をほぼ牛耳っているSWIFT(国際銀行間通信協会・本部ベルギー)からロシアの大手銀行が〝排除〞されたからでした。
 そこで存在感を増したのが、SWIFTに対抗する目的で年にスタートした中国版国際的銀行間決済システムのCIPS(人民幣跨境支付系統=人民元国際決済システム、Cross-Border Interbank Payment System)。ロシアはCIPSに乗り換えたのです。ロシアの貿易決済で人民元のシェアが急伸したのも肯けます。
 中国の振る舞いはそれに留まらず、イラン、ベネズエラ、ブラジル、アフリカ諸国から人民元建てでエネルギー、食料輸入を増やし、米国を苛立たせています。
 そして2022年12月、決定的な出来事が起きました。
 サウジアラビアを訪れた習近平国家主席がアラブの主要産油国で組織される湾岸協力会議(GCC)に招かれた際、人民元による石油取引を促したのです。
 GCC側の反応はどうだったのか。
 なんと「取引はペトロダラー(ドル建て決済によるオイルマネー)だけではない」と、1973年から続いてきた「ドルによる支払い」という不文律(ペトロダラー制)の〝変更〞を示唆したのです
 今年1月に開催されたダボス会議においても、引き続きそのテーマで関係国が話し合いの場を持ち、石油取引に人民元の使用を容認する方向にあると報じられました。
 サウジアラビアのジャドアーン財務相は「ドル以外の決済に関する話し合いにオープンに臨みたい」という言葉を残しており、〝ペトロユアン(石油人民元)〞の誕生はいよいよ現実味を帯びてきました。
 サウジアラビア側にも事情がありました。それは米国がシェールオイルの増産によりサウジを上回る世界最大の産油国に駆け上がったことで、サウジの原油販売の最大の得意先が中国に代わり、同時に米国の存在感が低下したのです。
 ここまで記してきたように、中国が基軸通貨を目指してドル覇権に揺さぶりをかけてきたことで、米中冷戦はさらに深刻度を増すと思われます。言葉を換えるならば、米国が拳を上げる時期がすでに始まっているのです。

今井 澂著『2024年 世界マネーの大転換』

ヤバいですね。

石油取引における一強通貨であった「ドル」に対して、中国が「元による支払」を打ち出し、米国に対してケンカを売っているわけです。

さて、そんな中国にはどんな未来が待っているのでしょうか。

基軸通貨を維持するために持つ最強の軍備

 ここで私が言いたいのは、「国際通貨に手を付けた国は必ず米国に潰される」ということです。覇権と米ドルというのは〝表裏一体〞なのです。それを維持するために大統領を動かしているのは米国の軍産複合体であり、米国の石油メジャーなのです。
 シンプルな言い方をすると、そこが世界の覇権を押さえているわけです。
 米国は1974年、オイルショックの震源地となった産油国のサウジアラビアとの石油取引をドルだけで決済する「ペトロダラー」体制を確立することで、ドル覇権をより強固なものにしました。
 サウジは石油を売って獲得したドルを米国債に投資。加えて、米国の兵器を購入してきました。米国はサウジに安全保障を提供すると同時に、オイルマネーを〝回収〞してきたのです。
 知ってのとおり、米国は常時世界のどこかで戦争に絡んでいることから、慢性的に巨額の財政赤字を抱えており、企業にあてはめるなら、とっくに何度も倒産している財政状況なのです。
 ところが、米国はなぜ倒産を免れているのでしょうか。
 そのカラクリは、ドルという自国通貨が世界の基軸通貨であるからです。

したがって、基軸通貨ドルを脅かす他国通貨が出現する場合には、世界最強の軍事力を用いて相手を苦境に落とし込めることになります。米国が比類なき軍事力を備えているのはそのためといっていいでしょう。

今井 澂著『2024年 世界マネーの大転換』

そんな強大な軍事力を背景に、世界マネーの覇権を維持している米国に果敢にも歯向かって散った偉大な(?)男がいました。

米国のドル覇権に歯向かった者の末路

 かつてペトロダラーに歯向かった勇敢な(?)、いや向こう見ずなリーダーがいました。
 中東の産油国イラクのサダム・フセイン大統領でした。
 2000年、ちょうど欧州連合の統一通貨「ユーロ」が誕生して1年が過ぎようとしたとき、フランスのシラク大統領はフセイン大統領に「石油の支払いをユーロに換えないか」と持ちかけました。
 シラク大統領としては、せっかく苦労に苦労を重ねて、欧州はユーロという決済手段を落手したのだから、EUとイラクの貿易の決済はユーロでしようと提案したのです。米国に敵意を抱くフセイン大統領はシラク大統領の提案を受諾、イラクの原油決済を、ドルからユーロに切り替えました。
 ご存じのとおり、それから後のイラクとフセイン大統領が見舞われた悲劇は壮絶をきわめました。
 フセイン大統領のように、中国ならびに習近平が米国の虎の尾を踏む日は案外近い。
 私はこう確信しています。

今井 澂著『2024年 世界マネーの大転換』

米国に歯向かうと、完膚なきまでに叩きのめされる……。

あな恐ろしや。

しかし、いつだって世界は多様性に富みます。

そんな米国ですら、俯瞰すれば「弱み」を抱えており、世界経済を鳥瞰したビッグピクチャーを描いてみると、そこにはまったく異なる様相が立ち現れてきます。

次回記事はそのあたり踏み込んで、ご紹介します。

書影をタップするとAmazonの書誌情報ページに飛びます

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?