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人を動かすズルい会話テクニック

フォレスト出版編集部の寺崎です。

昨年の年間ベストセラーランキング1位は総合、ビジネス部門ともに『人は話し方が9割』(すばる舎)でした。

100万部突破のミリオンを実現して、ビジネス書で総合ランキング1位を獲ったのは、2010年の略称『もしドラ』『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』ダイヤモンド社)以来とのことなので、実にビジネス書業界としては11年ぶりの快挙です。

総合ランキング1位とまではいかなくとも、「話し方」「会話術」テーマの本は毎年ヒットを生むジャンル。書店の棚ジャンルとしてかなりレッドオーシャンです。

「話し方」「会話」はある意味トレーニング次第で上達するジャンルなので、ニーズはきわめて広いといえます。

私自身、思春期のころは人と話したり、会話することにめちゃくちゃ苦手意識がありましたが、なんだかんだ場数を踏んできて(ある意味トレーニングしてきたことで)、いまではなんとか人並みに会話することができるようになりました。

というわけで、今日は『面白いほど雑談が弾む101の会話テクニック』(神岡真司・著)から、今日からすぐ使える会話テクをいくつかご紹介します。

なかでも、ちょっとズルいテクニックを集めました。

反発心から「NO」といえなくさせる会話術

 誰でも自負するところをもっています。会話の相手がどんな分野でプライドをもっているかがわかっていると、話を誘導するのもカンタンです。

A「部長は商談上手で、得意先を口説くのが本当にお上手でしたよね」
B「 まあな。若いころから『飛び込み営業』で鍛えたからね。きみらのやってるルートセールスなんてのは、本来の意味での『営業』とか『売り込み』じゃないよ」
A「 なるほどー、ですね。でも、ルートセールスでもむずかしい局面がありますよ」
B「どこがむずかしいんだよ。ご機嫌伺いしてれば注文が入ってくるだろうに」
A「 はい。ただ、ライバル企業に食い込まれる局面だと、そんなにのんびりしてはいられませんよ」
B「そりゃ、油断して食い込まれるスキをつくるのが悪いんだよ」
A「 実は富士物産さんがやばいんですよ。さすがの部長でもこればっかりは無理かと……」
B「 なに? うちとの取引が切られそうなのか? よし、話してみろ。俺が何とかしてやるから」

相手の自負するところを「ほめてから・けなす」の要領なのです。

「美人のきみはイケメンとしか飲まないの?」→「そんなことないわよ」
「さすがのきみでも、S社開拓は無理だろ?」→「そんなことないです」

■ポイント
自尊心をいじられるとイエスと応じてしまう!
反発心理作用で会話を誘導する。

■トーク例
「さすがのきみでも無理だよね?」
「○○さんはお忙しいから誘わないほうがいいですよね」
「英語の達人といわれる○○さんでも、これはむずかしくて翻訳できないでしょ?」

俺 「さすが、社長!太っ腹ですね!」
社長「おう!」
俺 「でも、太っ腹大統領と呼ばれる社長でも、さすがに私の来年の年俸を2倍にするのは無理ですよね…」
社長「年俸2倍?おぉ!いいぞ!

こうなると、いいな。

「いままでが、ぜんぶ無駄になっちゃいますよ」

 交渉事が長引くと、「今さらやめるわけにはいかない」という執着心理が起こります。
 今までにかかったコスト(経費・労力・時間)が、「埋没費用(サンクコスト)」として頭に浮かぶからです。途中で辞めると、全部無駄になるのが怖いためやめられません。
 これが「サンクコスト」の呪縛作用と呼ばれる心理効果です。
 公共工事などでは、完成後の利用価値を高く見積もり事業に取りかかりますが、どんどん予算が膨らんでも、完成後の利用価値が見込めなくなってもやり続けてしまいます。
 どうせ使うのは税金だし、途中でやめると非難されるので次々税金をつぎ込みます。 こうして無駄な道路やダムが生まれ、図書館やらのハコモノ施設が造られます。
 企業の場合も同じです。多角化した事業が赤字でも、なかなかやめられなくなります。いつか黒字になるかも──などと希望的観測にバイアスがかかるからです。

A「 あたし、先生にすすめられてこのジムに入りましたけど、ちっとも痩せないし、体型も変わりません。コストもかかるし、時間ももったいないので、辞めようかと……」
B「 まだ半年ですよ。効果が出るのはこれからなんです。ここで辞めたら今までのお金が無駄になりますよ

 こういわれるとズルズル続けてしまいます。スパッと辞めないともっと無駄なのにです。

■ポイント
執着させて「離脱」を阻止する!
「サンクコスト」の呪縛作用を活用する。

■トーク例
「今さら何をいうんです」
「もう引き返せませんよ」
「ここまできたら最後までやりましょう」
「今までのすべてが無駄になりますよ」
「もったいないじゃないですか、ここまで来て」

いままさにこうして書いている編集部員持ち回りで1年365日欠かさず続けているフォレスト出版公式note、土日を除く平日毎日放送しているVoicy「フォレスト出版チャンネル」はまさにこの「サンクコスト」の呪縛作用が働いています。笑

サンクコストは悪いもののように扱われがちですが、「続ける」ということをゴールにした場合、いい作用として働くことが、noteとVoicyを始めてみてわかったことです。

すべてをひとつずつ肯定しまくっていく話法

 会話の相手が謙遜したり、否定的に考えている点があったら、そこを逆手にとって「そこがいいんですよ」「だからいいんじゃないですか」などと指摘してあげると、面白いことが起こります。
「アレ? 自分じゃマイナスに考えていたことなのに、プラス評価をされるなんて意外だな……」と目覚め、半信半疑の気分にさせられるのです。
 今までの考え方を否定され、しかもプラス評価がもたらされるのですから、パラダイム転換です。視界が急に晴れ渡っていく爽快な思いも味わえます。
 すると、相手の言うことが本当のようにさえ思えてくるのです。

A「でもねえ、そういうことって、やったことがないしね……」
B「 だからいいんですよ。未経験だからこそ、新しい視点が生きます
A「 えー? でも、時間もそうそう取れませんしねえ……、忙しいのでうまくいきませんよ、きっと」
B「 時間がない人だからこそ、お願いしたいのです。短期にポイントだけをインスピレーションで見てほしいんです
A「 うーん、そういわれるとねえ、ホントにいいんですか?(だんだんその気に)」

 マイナスをすべてプラス評価して押しまくられると、NOといえなくなるのが人間なのです。

■ポイント
相手が否定的に考える「条件」を肯定してつぶしていく!
逆説的説得で「NO」と言わせない。

■トーク例
「そこがいいんですよ」
「だからお願いしたいんです」
「それがかえって強味になります」
「そうおっしゃると思ってましたよ」
「逆転の発想が大事です」
「これぞチャンスですよ」

これは執筆を渋る著者に対する交渉で使えそうです。

俺 「ぜひ、〇〇のテーマで本を書いてもらえませんか?」
著者「いやぁ、そこは専門分野じゃないからなぁ・・・」
俺 「専門分野じゃないからこそ、見えてくるものがあると思うんです。それこそこのテーマを専門家が書いたら、どんな内容が読者だって読む前から想像できると思うんです」
著者「でもねぇ・・・書く時間がないんだよ。やるからにはじっくり時間をかけたい」
俺 「時間をかければいいものができるなんてのは幻想ですよ?時間がないなか知恵を振り絞るからいいモノができるんです
著者「ふーん・・・そんなもんかなぁ」

「時間をかければいいものができるは幻想である説」は、けっこう使っている説得文句ですが、割とこれは本気で思ってることでもあります。もちろん、たっぷり時間をかけることができればベターなのではありますが。

相手の無知につけこむ常套句

 人に何かの話題を振り向ける時、「ご存じの通り」とか「ご承知のことと存じますが」という前置きをつけると、相手には丁寧でへりくだった印象を与えられます。
 謙虚にモノをいう人というイメージが作られるのです。
「あなたのような博識の方は当然知ってらっしゃることですよね」と共有認識にして、もち上げられるのですから、言われたほうは悪い気がしないのです。
 しかし、このセリフは、相手の「無知」につけ込む時こそさかんに用いられます。

「 ご承知の通り、4LDKの戸建ての場合、外壁塗装を行えば、ゆうに100万円以上はかかります。しかし、弊社の施工なら、相場の3割引きでできるんです」

 外壁塗装にいくらかかるかなんて、やったことのない一般の人には見当もつきません。このように、業者とお客との間に存在する知識量の差を「情報の非対称性」といいます。
「ご承知の通り」などといわれると、知らなくても「そうなんだ」と妙に納得してしまう人も出てくるわけです。
 巧妙に「一般論」や「世間の常識」へのすり替えができるのです。
 会話や雑談でのやり取りを、自分に有利な方向にもっていく時にも使われます。「ご存じの通り、それは○○が常識ですよね」などといわれても、騙されないようにすることです。

■ポイント
「情報の非対称性」を味方につける!
だまされてはいけない共有認識効果。

■トーク例
「ご存じの通り」
「ご承知のことと存じますが」
「きみが知る通り」
「もちろんご存じですよね?」
「従来は○○が常識でしたが」
「ふつうだと、○○円ですが、今回は特別に○○円で」

これも著者との交渉で使えそうです。

著者「すいません・・・〆切をもう1ヶ月伸ばしてもらえませんか?」

俺 「ご存じの通り、すでに印刷の台を押さえてしまっていますし、日販・トーハンほか取次各所、全国の書店にも発売日に合わせて、もろもろスケジュール組んでしまっているので、それは難しいかもしれません・・・」

著者「(そういうものなのか)わかりました。では、来週までには原稿を仕上げます」

なんだか、編集者のブラック会話術みたいになってしまいましたが・・・みなさんもぜひご活用ください。




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