著者のメッセージや世界観を紙面に落とし込むには?
フォレスト出版の寺崎です。
今日は『僕たちはメタ国家で暮らすことに決めた』(落合渉悟・著)の制作過程をつらつら綴ってみます。
おかげさまで、このような形で書店でも絶賛発売中の『僕たちはメタ国家で暮らすことに決めた』ですが、ユニークなテーマかつ、著者・落合渉悟氏の熱い思想に触れた制作陣は、構想段階から「これまでにない本をつくろう」と静かに意気込んでいました。
企画段階のタイトルとキャッチコピーがこちら。
いま思えば、タイトルは企画段階からそんなに大きく変わってない。
(仮タイトル)
メタ国家で暮らそう
(決定タイトル)
僕たちはメタ国家で暮らすことに決めた
企画趣旨はこんな感じでした。
そして企画段階から決まっていたのが・・・
第1章でアジる
・・・でした。ひとつのメッセージを伝える書であることを第一義に、いわゆる「アジテーション(煽動)」の要素を入れようと考えたのです(内々では「山本太郎テイスト」と呼んでいました)。
本書はこんな風なアジテーションから始まる。
さて、このような素材を前にして、どう料理するか。
まずは判型(本のサイズ)です。とくにこだわりがなければ【四六判・縦組み】というチョイスでしょう。
でも、今回は「独自の世界観」を打ち出したい。
そこで「変形判だけど、ちょっとした違和感しか感じない」という見え方を狙って、通常の四六判が「128×188mm」のところを「128×180㎜」と天地を8ミリ縮めた判型にしました。
次にレイアウト、紙面デザインです。
扱うテーマが「DAO」「ブロックチェーン」「国家」「資本主義」「人権」といったことから、それらを視覚的にも想起させる方向性を模索して、次のような方針を固めました。
◎本文=横組み
◎書体=ゴシック
◎行頭の一字下げなし
◎見開き片面に画像を配置して世界観を醸成する
「なにか着想が得られる材料はないかなぁ……」
そんな風に考えていたときに・・・
「見開き片面に画像といえば・・・あっ!」と
ある書籍の存在を思い出します。
それは大昔、古本市でシルバーの装丁に惹かれてジャケ買いしたレベッカ・ブラウン『お馬鹿さんなふたり』(光琳社出版)という本(残念ながら今は絶版で、なかなか手に入らないっぽい)。
カバーがないハードカバーの表紙に全面シルバーの紙が貼られていて、タイトルは帯に記載、表紙には欧文タイトルが箔押しされているという、かなり変態な本なのですが、紙面もこれまた変態。
これ、恋愛小説なんですよ。でも、なんなんですかね、このデザイン。でも、これを今回はパクろうと決めました。
1999年初版発行だから、23年前の本がこうして21世紀にパクられるとは、元ネタを作った方々も想像だにしなかったことかもしれません。
で、じつはもうひとつ、パクり元があります。ジョージ・ロイス『世界を変えた伝説の広告マンが語る――大胆不敵なクリエイティブ・アドバイス』(青幻舎)です。
この本もどうやら絶版みたいですが、内容がめっちゃ面白いうえに、これまた紙面がくそカッコいいんです。
そこで、本文のデザイン・レイアウト・DTPを担当したデザイナーの土屋光さんに、この写真をみせながら相談したところ、デザイナー魂に火がついて、こんな感じの紙面になりました。
いかがでしょうか。
本書独自の「世界観」は伝えることができたのではないかなと思います。おかげさまで発売後の反響は賛否両論。届くべき人には届いているようです。
というわけで、今日は「著者のメッセージや世界観を紙面に落とし込む」をテーマに制作の裏側を綴ってみました。
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