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#355【ゲスト/編集者】東洋経済オンライン編集部長が語る、現場の裏側

このnoteは2022年3月22日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

日本一のネットメディアの編集部長(当時)・武政秀明さんがゲスト

土屋:皆さん、こんにちは。フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める土屋芳輝です。今日は編集部の森上さんと共にお伝えしていきます。森上さん、どうぞよろしくお願いします。

森上:よろしくお願いします。

土屋:本日も素敵なスペシャルゲストをお招きしています。今日は書籍の編集者ではなく、日本一のネット媒体の編集部長(当時)がゲストに来てくださっているんですよね。

森上:そうなんですよ。実現するとは思っていなかったのですが、ご快諾いただきまして、リスナーの皆さんも「Yahoo!ニュース」をはじめ、ニュースサイトを通じて、一度は目にしたことがあると思われる日本最大級のネットメディアの編集部長でいらっしゃいます。うちも新刊が出た時にご紹介していただいたりとか、いろいろとお世話になっている方でもいらっしゃいます。本日はお忙しい中ご出演いただきまして、本当にありがとうございます。

土屋:はい。ということで、さっそくご紹介したいと思います。本日のゲストは東洋経済オンライン編集部長、武政秀明さんです。武政さん、本日はどうぞよろしくお願いします。

武政:よろしくお願いします。東洋経済新報社、オンライン編集部長の武政秀明です。

土屋:さっそくなんですけども、私のほうから武政さんのプロフィールをご紹介させていただこうと思います。武政秀明さんは、東洋経済オンライン編集部長でいらっしゃいます。1998年、関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長を務められておられます。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から東洋経済オンライン編集部長としてご活躍されていらっしゃいます。趣味はランニング、フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒ということで。

森上:すげー(笑)。

土屋:2012年勝田全国マラソン。ということで、運動もバッチリということで。

武政:いえいえ。もう10年前のことですからね。いつまで書いてんだってことなんですけど。当時は36で、まだまだパワーがあったんですけど、もう46になってしまって、年を感じちゃうんですけどね。ぼちぼちランニングを続けているって感じです、今は。

森上:そうですか(笑)。

土屋:はい。東洋経済オンラインといえば、誰もがご存じかと思いますが、改めて武政さんのほうから東洋経済オンラインについて、どんな媒体なのか、簡単にご紹介いただけますでしょうか?

武政:はい。まず東洋経済新報社という会社は、今年で127年を迎える会社なんですけど、「週刊東洋経済」という週刊誌があります。その当時は「東洋経済新報」として、創刊しているんですが、現存する週刊誌としては日本最古であると。あともう一つ、90年近い歴史のある「会社四季報」という媒体があるんですが、これも東洋経済新報社がやっています。あと書籍もやっています。東洋経済オンラインというのは、2003年にスタートした比較的新しい媒体でして、「週刊東洋経済」の電子版でもなく、「会社四季報」の電子版でもなく、書籍の電子版でもなくっていうところで、オリジナルな媒体として発展を遂げてきたというところなんですね。で、先ほどご説明いただいたと思うんですけど、月間のPVが今は2億ぐらいなんですけど……、10年前、2012年の11月にリニューアルしたんですけど、リニューアルしたって言っても、もう10年経っているから、皆さんからしたらいつの話なんだっていうことなんですけど……、そこまではだいたい月間300万~500万ぐらいのPVのサイトだったのが、ここ10年ぐらいで2億とかピークは3億稼ぐような媒体になったと。
そんな感じなんですね。やっぱり東洋経済新報社と名前がついていて、「東洋経済」というところに絞っているので、得意とするところは経済、産業、企業ニュースみたいなところなんですけど、ジャンルとしてはビジネス、政治、経済、マーケット、それからキャリア、教育、ライフ、それと自動車、鉄道みたいなジャンルを特定にやっているんですけど、そういったニュース、あるいはコラム、読みものみたいなものを、毎日いろいろと集めて配信しているっていう感じのサイトですね。東洋経済オンラインって、視聴者の皆さんからすると、私どものサイトで見てくださることもあると思うんですけど、例えばYahoo!ニュースに転載されたり、LINE NEWSだったり、SmartNewsだったり、或いはFacebookとかTwitter等のSNSでシェアされたものとかを目にすることもおありだと思うんですけど、さまざまなメディアを通じてみなさんのところに届いていらっしゃるのかなと。簡単にはそんな感じです。

森上:ありがとうございます。武政さんのことについて改めていろいろとお伺いしたいんですけど、車のディーラーのセールスマンだったんですか?

武政:そうなんですよ。日産プリンス東京販売っていって、兵庫県神戸市の出身なんですけど、そちらで車のセールスマンを新卒で1998年から3年半やったんですね。まあ、たいして売れるセールスマンでもなかったんですけど。それで転身を図って、「日本工業新聞」という新聞が当時はあって、後に「フジサンケイ ビジネスアイ」となって、最近休刊したんですけど。そこの新聞記者に転じて、そこも3年4ヶ月ぐらいですかね。それで、東洋経済にご縁があって、2005年から東洋経済にいるという。そんな経歴です。

森上:それは雑誌ですか?

武政:そうですね。東洋経済のことを言えば、東洋経済って「週刊東洋経済」と「会社四季報」があって、主には記者っていうのは、それぞれに書いているんですね。「週刊東洋経済」にも書くし、「会社四季報」にも書くし、「「会社四季報」業界地図」っていうのもあるんですけど、それにも書いているし、あともちろん東洋経済オンラインにも書いているしって感じなんですけど、私は最初入社してすぐは記者職としていろんな媒体を書くのかなと思ったら、「週刊東洋経済」の編集部にすぐに行ってくれって言うことで、当時29歳だったんですけど、20代で最年少の編集部員として中途入社直後だったんですけど、「週刊東洋経済」の編集部に行くことになって、それで雑誌の編集という仕事をやって。雑誌の編集と、書籍の編集と、オンラインの編集と、例えば新聞の編集とって、それぞれ同じ編集でもちょっと違うんですけど。私が雑誌の編集をした時はニュースのページってのがあって、今でもありますけど、似たようなビジネス誌、週刊誌って、巻頭の方に大御所のコラムがあった後に、目次があって、その後、今週のニュースみたいなのが1ページ単位ぐらいで並んでいると思うんですけど、そこのページを担当するってことになったんですよ。

森上:そこは編集部員だとしても、ご自身でお書きになるのか、記者に書いてもらうのか。

武政:ハイブリッドで、自分で書くこともあるし、書いてもらうこともあるしって感じです。

森上:そうなんですね。そこはハイブリッドやっているパターンなんですね。

武政:そうですね。僕は元々記者で、3年4カ月、新聞記者をやって、「俺は記者で生きて行くぜ」と思っていたので、もっと書きたかったのに、入社3カ月ぐらいの研修期間みたいなものを経て、そっちに取り込まれたものですから、そうすると自分の署名の記事を書きたかったのに、人の署名の記事を一生懸命編集するみたいな話になって。

森上:なるほど、なるほど(笑)。

武政:それが意外とストレスで。そのときは自分でもいろいろとテーマを見つけて、空いた時間で取材をして、空いた時間で書いて。でも基本的にはページを作らないといけないですから、4人ぐらいのチームだったんですけど、そのチームで下っ端として、ページを作りながら自分の取材もして、そこに放り込んでっていうようなことをやっていましたね。

森上:そうでしたか。ご自身でお書きなるのが元々好きで。今のお立場になってもたまにお書きになられていますもんね?

武政:たまになんですけど。ちょっとそこからは変わっていて、東洋経済オンラインの編集部に移ったのが2010年なんですけど、「週刊東洋経済」の編集部を2年間やって、それから市場経済部というのがあって、市場経済部は記者職だったんですね。マクロとかマーケットとか。その時、たまたま証券会社も担当していて金融とか、そういうのを一部やって。で、3年やったら、「オンラインに行ってくれ」って言われて、オンライン編集部に移ったんですよ。最初、オンライン編集部に移ってからは化学メーカーを担当していたんですね。それは「会社四季報」の担当であり、「週刊東洋経済」の担当でありって感じなんですけど。

森上:なるほど、なるほど。

武政:うちの会社ってそういう媒体がマトリックスになっちゃっていて、「週刊東洋経済」の人間は「週刊東洋経済」がメインだけど、それをやりながら「会社四季報」も取材して書くとか、「業界地図」のページもやるとか、そういうこともあったので。その時は化学メーカーを担当しながら、東洋経済オンラインの編集もやっていたんですけど、さっき申し上げた10年前のリニューアルを機に、自分はもう書くっていうことから、だんだん離れていった。で、リニューアルの時にだんだん離れていきながらも、まだ書きたいっていう気持ちが最初はあったんですね、やっぱり。自分で書きたいっていう気持ちがどんどん薄れていく過程が途中でできるんですけど、それは2014年ぐらいですけど。そこからはもう編集になるべく特化するという形にして、自分では書くことを控えるようにして。今はたまに書かなきゃいけない時があって、逆に書くスピードが遅いというか、あまり早くないんですけど、書くのがメインではなくなりましたね。

1日20~25本の記事を配信する組織体制と、記事の探し方

森上:そうですか。僕が一番最初に武政さんにお会いしたとき、武政さんは確か副編集長でいらっしゃったときで。

武政:そうですね。副編集長だったと思います。

森上:そうですよね。副編集長でいらっしゃったときには相当東洋経済オンラインさんのPV数っていうのは、グングングングン伸びているときで、本当に勢いがあるなと。あのときは東洋経済オンラインさんは、何人くらいで作られていたんですか?

武政:人数のカウントが難しいところがあるのは、例えば書き手。書き手で言うと400ぐらいいるんですよ。社内に記者が100人ぐらいいて、例えば自動車だったり、化学だったり、証券だったりっていう、業界担当がそれぞれいて、企業を担当していて、回しいているんですけど。それ以外に私たち東洋経済オンライン編集部として、社外の筆者さんとお付き合いがあるっていうのを含めると、たぶん300人ぐらいいて、もっといるかもしれないんですけど。書き手の方は少なくとも400人以上はいるんですね。
ただ、それは毎日書くわけじゃないから、その時々のテーマとかによって順繰りに変えていくっていう感じなのと、フォレスト出版さんにも大変お世話になっておりますけど、いろんな出版社さんとのお付き合いがあって、出版社さん経由でいろんな著者さんの寄稿も受けている。本の一部を切り出してもらったりとか、本に絡んだ対談とかをやったりっていうのもあったりするんですけど、そういうことも入れたら400じゃ全然利かなくて、年間ベースで言うと、600とか超えちゃうと思うんですけど、それぐらいの著者がかかわっている。おそらく年間で400~600以上の著者がかかわっている媒体です。
で、編集者っていう形でいくと、東洋経済オンライン編集部は十数人なんですね。だけど、これもまたマトリックスになっているから、社内の記者相手の編集部っていうのが別に存在していて。あと、私どもの編集部には属していないけど、社外のライターさんとも付き合っている編集スタッフもいたりして、みんなで作っているから、人数的なところで明確に何人とは言えないけど、少なくとも編集部員に相当する人数を延べで言えば20人ぐらいはいるかなと思います。

森上:なるほど。今これは毎日だいたい何本ぐらい配信されているんですか?

武政:そうですね。月間の本数が……。これもいろんな形で配信していて、例えば読売新聞とかブルームバーグとも契約を結んでいて、そういったその提携先がたくさんあって、「AERA dot.」とか、「幻冬舎plus」とか、「ニューズウィーク日本版」とか、そういったところの転載もやっていたりするんですね。

森上:そっか、そっか。 

武政:だから、自分たちのオリジナリティのあるものっていうことだけを取り出すと、月刊500~600本なんですね。それを加えた形で、さらにいろんな提携先のやつを入れると、おそらく700本とかあるので、一日に20~25本くらいを毎日だいたい出しているっていう感じですね。

森上:それで、この記事はいける、いけないとかっていうのは、その前にある程度ネタの会議みたいなものはあったりするんですか?

武政:これはうちの組織に限らないと思うんですけど、東洋経済オンライン編集部から見える風景としては、わりと水平分業型の組織になっているという。垂直統合ではないっていう意味ですけど、雑誌って編集長がいて副編集長がいて、副編集長がチームを作っていくみたいなところあると思うんですけど、オンラインって編集長がいたとしても、副編集長もいますけど、割と一人の編集者としては同列なんですね。もちろん束ねてはいますけど。で、編集者がそれぞれ著者とか提携先とか協力先と付き合っていて、記事をそれぞれ集めてきて、みんなで寄せ集めたものを投下するみたいな形になっているんですね。じゃあ、企画はということですけど、それはかなりの裁量、編集者レベルに任されていて、入り口の部分で、例えば「こういう著者さんを起用したいと思っているけど、どうか」っていう話とかは、もちろん編集長とかがチェックしたりはします。

森上:なるほどね。

武政:そこは行儀の悪い人じゃないかとか、問題を起こした人じゃないかとか、過去にトラブルはないかとか、他社で何を書いているかとか。

森上:コンプラ的な?

武政:そうですね。危険な思想を持っていないかとか、そういう入り口はチェックするんですけど、そこさえ通過すれば、次は自律的に回していく。あるいは連載を立ち上げるので、どんな連載を立ち上げるかの相談はして、あとはそのまま回していくっていう感じですね。それこそフォレスト出版さんもそうですけど、出版社さんとのお付き合いも著者さんを見て、出版社さんを見て、「この出版社さんのこの著者さんだったら、大丈夫だろう」という形で、内容もちゃんと吟味した上で出すんですけど、そういった入り口である程度のフィルターをかけた上で東洋経済オンラインに向きそうなコンテンツを集めていく。だから、ネットメディアって本当にいろいろだと思うんですけど、新聞社とかはものすごいストレイトニュースがバーってありますよね。あれも、ネットメディアっちゃ、ネットメディアですし、それで週刊誌系の媒体、うちも「週刊東洋経済」をやっていますけど、あれはいわゆる一般週刊誌、あるいは女性週刊誌みたいな媒体で有名なところってあるじゃないですか。ああいうところってスキャンダルみたいなものを出すじゃないですか。ああいうことはうちはやらないですね。

森上:なるほどね。

武政:で、ネタ系みたいな媒体もありますよね。「〇〇のスムージーを試してみた」みたいな。ああいうこともやらないので。だから、うちのトーンみたいなものがあって、そのトーンに合わせたような記事をそれなりに編集者が判断して集めてきて出していくっていう。そこは暗黙知的なものがあったりしますよね。

月間300万PVを2億PVに押し上げた編集長時代に心掛けていたこと

森上:なるほどね。武政さんは歴代の編集長で言うと、何代目の編集長だったんですか?

武政:2003年からスタートしているので、2003年からのスタートだと何人もいるので何代っていうのは数えられないんですけど、ただ2012年にリニューアルをするときに、リニューアル直前の編集長っていうのがいて、その編集長がかなり今の東洋経済オンラインのスタイルに近い形の編集長なんですね。

森上:佐々木さん?

武政:佐々木さんの前です。丸山尚文っていうのがいて、丸山がその土台を作ったんですよ。で、その土台を作って、佐々木紀彦さんが二代目にあたりまして。で、山田俊浩が今も会社にいますけど、三代目。で、武政が四代目で、吉川明日香が五代目。

森上:武政さんは四代目ですか、リニューアル後で言うと。

武政:そうですね。今の東洋経済オンラインのスタイルを考えたときに、社外に説明できる遍歴で考えると私が四代目、今は五代目っていう。

森上:そういうことですね。なるほど。歴代の編集長も色を守りながらも、編集長としてのそれぞれの特徴とかを出して。

武政:過去の編集長がどうであったかとか、今の編集長がどうだっていうことは、特に私から見てどうだとかは言わないですけど、私が考えていたことは、やっぱり東洋経済新報社っていうのは、どういう会社なんだろうって。東洋経済新報社っていうのは、町田忠治っていう人が創業したんですけど、創業の理念として「健全なる経済社会の発展に貢献する」ということを掲げていて、そのままの言葉ではないんですけど、現代語に訳した場合はね。そういうふうな思想を掲げて、うちの会社を立ち上げた。その原点を必ず守らなければいけないっていうところだったんですよね。なので、おもしろおかしく伝えるっていうことでそうなるのかっていうと、そうではないだろうし。ストレイトニュースも提携媒体を通じて出すこともありますけど、本筋的なところで狙っていることは、やはり健全なる経済社会の発展に寄与できるコンテンツを作って出していくっていう。原点を守らなきゃいけないかなっていうところが一つの方針であったというところと。
それから私自身は個性っていうのが大事だと思っていて、編集者もそうだし、著者もそうだし。だから、その点に関しては今も受け継がれていると思うんですけど。みんなそれぞれ得意分野が違うので、編集者が10人20人いても、同質的な集団ではなくて、個々に個性が強くて、ある人は、自動車なんかは僕も経験があるので、「自動車が得意です」とか、今の編集長なんかはお子さんが2人いて、女性で、子育てをしながらこの地位まできていて、やっぱり家庭だとか教育だとかっていうところに強みを持っているとか。あと、今の副編集長の倉沢美左っていうのがいるんですけど、アメリカに留学していたのかな? かなり英語がペラペラで、海外のニュースなんかを海外の著者とやり取りして、持って来たりとか。その3人だけを見ても全く同じことをやっていないんですよね。

森上:確かに、確かに。

武政:そうすると、東洋経済新報社としては「会社四季報」があって、3800社の上場企業を一律に3カ月に1回バーッて取材するっていうことをやっているんですけど、そういう世界観とは違って、東洋経済オンラインは本当にごった煮にいろんなものがいろんな形であって。ただ軸は守った上で、個性を活かしながら軸を伸ばしていくっていう形で、編集者それぞれが得意なことをやると。おそらくレーダーチャートってあると思うんですけど、レーダーチャートで見たときに綺麗な丸を目指そうと思う必要はなくて、どこかが尖っていいと思っていて、その尖っているものの集積でいいんじゃないかって。そうすると、外から見たら、その尖っているものが丸に見えるかもしれない。それぞれカバーしているから。1個1個は尖っているんです。この尖っているってことをもうちょっと深く言うと、尖っていることによって人に刺さると思っていて。

森上:なるほど。

武政:同じ質量でも、鉄の玉があるのか、針があるのか。鉄の玉を当てられても、そんなに痛くなく血は出ないけど、針が刺さるとやっぱり痛みはあるし血も出ますよねっていうことで。だから同じ質量を個性と考えるなら、個性を研ぎ澄ますことによって、人に刺さるぐらいの個性、その集団であってほしいみたいな。そういう方針ですね。

森上:素晴らしい。すごくいいチームですね。だからこそ、2億を超えるような。もういずれ3億っていうね。

PV数に縛られない/媒体としてのブランディング/共創できる世界観を守る

武政:競争の激化もあったり、外部環境の変化もあるので。週刊誌系の媒体さんがすごい勢いでグワーッと伸ばしているから、我々もPVというものとの付き合い方っていうのはちゃんと考えなきゃいけないなと思っていて。PVがたくさんあればそれでいいのかっていうと、もちろんあったほうがいいですけど。あればあるほど影響力につながるし、書籍をおやりになっている媒体さんだからおわかりだと思うんですけど、このVoicyだって……、私たちもVoicyチャンネルを持っているんですけど、やっぱりチャンネル登録者数とかフォロワー数とかSNSもそうですけど、そういった数字そのものがパワーを持つ。その数字そのものが読者とのつながりであるということを考えると、PVっていう指標は絶対に重要視しなければいけないんだけど、軽視はできないんですけど、だけどPVというものだけにとらわれて、自分たちの大事なものを見失ってしまってはいけないと思うんです。

森上:なるほどね。

武政:だから、そこの軸を絶対にブラさない形で取れるPVというのはなんなのかっていうところを常に自問自答しながら。自分たちの存在価値を崩さないというか、そこを否定するような行動をしないというか、そこで結果としてPVを得られたらいいと思っています。
結果、2億っていうPVを毎月に近い形で取らさせていただいているんですけど、それはそれなりに評価をいただいて。でもこれを3億、4億、5億って伸ばせるかっていうと、ここから先はわりと無茶をしなきゃいけなくなる。見ていると、どんなものがPVを取ることができているかってことはなんとなくわかるんですけど、そういったPVが取れるものをあえてやらないっていうことも心掛けてはいるんです。
例えばですけど、皇室スキャンダルみたいなものや、有名人のスキャンダルとか。スキャンダルを否定するんじゃないんですけど、ただ我々がやることなのかっていうと、やっぱり違いますから。世間がワーって乗っかっている時も、ある程度冷静な視点から取り上げなきゃいけないですし、差別みたいなものにつながったり、いじめつながっているようなものもダメでしょうし、それから下ネタっていうか、エロみたいなものもダメだなと思ってますし。そういうのは数字が取れるんですけど、そこは守らなきゃいけないでしょみたいな。

森上:なるほどね。いわゆる社会的公器というか。やっぱり2億となってくると、影響力もあるし、会社の理念もあるしといったところも考えていくと、そこは守っていかないといけないかなっていうところはあるわけですね。

武政:そうですね。だから世界観といったらいいのか、媒体のブランド価値っていったらいいのか。そこは自分たちのブランドであるという言い方をするのはちょっとおこがましいですけど。

森上:いやいや。でも、そうだと思います。

武政:そういう形で自分たちの崩さない世界観、目指している世界観、共感、共創できる世界観みたいなものをやっぱり大事に持っておかないと読者がついてこない。自分たちは広告モデルでもあるので、広告主の皆さんに共感してもらってスポンサーになってもらったりということもありますから、そういった人達が「なんでこんなことやってんだ?」って思われるのもよくない。
とは言え、広告主の中に不正なことやっている会社があればそこはもちろんちゃんとズバッといきますし、そこはお金でやっているんじゃないんだけど、やっぱり社会のために世の中のためにって言われるところかなと思って、三方良し的なところを目指さなきゃいけないし、SDGsですよね。SDGsみたいなことは割と綺麗ごとかなと思うんですけど、ただそういった点で、結局は世のため人のためになるような報道をしていくことによって、みんなハッピーにならないと。自分たちだけPVが取れてよかったってなっては本末転倒というふうに思います。

森上:さすが部長としてのお考えですね。本当にいろいろとお話をしていただいて、もっと聞きたいのですが、土屋さん、そろそろお時間が。

土屋:そうですね。本当に貴重なお話をたくさんいただいたんですけれども。今日は東洋経済オンラインさんのリンクをこのチャプターに貼っておきますので、ぜひチェックしてみてください。まだいろいろとお聞きしたいのですが、お時間が来てしまいました。明日もゲストに来ていただけるということで、明日はまたさらに突っ込んで、編集長時代に月間300万PVを2億に押し上げた編集メソッドに加えて、ネットメディアの未来なども聞いていけるといいなと思っております。ということで、武政さん、森上さん、本日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします。

武政:ありがとうございました。

森上:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

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