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#323【ゲスト/翻訳家】スウェーデン在住の日本人女性の生き方

このnoteは2022年2月4日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

スウェーデンでの生活と魅力

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。本日は昨日に引き続き、2021年最も売れた本『スマホ脳』を翻訳した久山葉子さんに、『スマホ脳』の裏話やスウェーデンのお話を聞いてみたいということで、後半編にいきたいと思います。本日も久山さん、稲川さん、よろしくお願いいたします。

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久山・稲川:よろしくお願いいたします。
 
今井:久山さんは現在スウェーデン在住で、日本とは時差がありまして、こちらは午後4時なんですけれども、スウェーデンは朝の8時ということで、収録に参加していただいているんですけども、今、スウェーデンはどんな様子ですか?
 
久山:そうですね。スウェーデンは縦にすごく長いので、地方によってかなり気候も違うんですけども、うちはちょうど真ん中の辺でスウェーデンのへそみたいなところなんですけども、雪は毎年結構積もって、今は気温が零度前後をウロウロしている時期なので、朝起きると、家の前からバス停までスケートリンク状態で、ツルーンときれいに凍ったりしていて、鋲のついた、ブーツの上から穿くような、ゴムバンドでできていて、鋲が付いているものがあるんですけど、それを履いて行かないともうとても歩けないような状態だったりしますね。
 
今井:日本で言うと、北海道のようなイメージですかね?
 
久山:そうですね。北海道みたいに家の中は暖かくて、外は寒いっていう。家の中はおかげさまで快適ですね。
 
今井:北欧っていうと、オーロラが見えたりとか、そんなイメージがあったりするんですけど、スウェーデンの久山さんがいらっしゃるところでは、オーロラとか見えたりしますか?
 
久山:そうですね。一番よく見えるのは、やっぱり北極圏まで行ったほうが頻繁に見られるんですけども、うちのあたりでも、年数回ぐらいは大きいのが出るているみたいだっていうのを、友達がアップしている写真とかで気づくんですけど、自分はいつも寝ていて見たことはないんですけど(笑)。
 
稲川:(笑)。
 
今井:あと白夜というか、スウェーデンもそういう日はあったりするんですか?
 
久山:そうですね。本当の白夜とか、極夜って言って、1日中太陽が出ない現象は北極圏まで行かないと正式にはないんですけども、この辺もやっぱり冬は結構暗くて、朝焼けはすごく綺麗なんですけど、それが見られるのが朝の8時とか、一番日が短い時だと8時半とか9時ぐらいで、夕方も3時とか4時には暗くなっちゃうので、かなり冬は暗いですね。その代わり夏は、自分が寝る時間にはまだまだ明るくて、朝も2時くらいから明るくなるので、ずっと明るいイメージですね。日本からは考えづらいですよね。体内時計がおかしくなりそうな(笑)。なかなか大変ですよね。やっぱり寝れないっていう悩みがある人とか。冬は冬で全然太陽が出なくて、気分が落ち込むわけじゃないですか。
 
稲川:でも、スウェーデンっていうと、やっぱり大自然の中で皆さんが生活していらっしゃるっていう、人口も少ないですしね。本当に広々と。そういう形で、スウェーデンのお話とかも発信していただいているんですけれども。エッセイストとして、久山さんご自身が書かれた『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』という本があって、私も読ませていただいて面白かったんですけども、その中でスウェーデンに移住されるお話が書かれているんですけれども、ここが本当に面白くて、笑いながら読ませていただいたんですけども。

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久山:笑いと涙の物語です(笑)。
 
稲川:そうですよね。なぜスウェーデンに住むことになったんですか?
 
久山:最初は東京で共働きで、子供が生まれて、すごく大変だったんですよね。もうすぐ14歳に子どもがなるっていうことは、もう14年前の話なので、東京もだいぶ変わったかもしれないんですけど。当時はやっぱり男性は子どもがいても、早くて8時ぐらいまで働いていて、そこから帰ると9時とかじゃないですか。で、お母さんたちは、その間はワンオペで大変で、夫の方もほとんど平日は子どもと会えない生活っていうのが、「ちょっとこれは異常だ」と言いはじめて、っていうのは、夫はイタリアで生まれ育っている人なんですね。だから「日本の働き方の家族と一緒にいれなさは異常だ」ということで、「もう日本からは引っ越したい」と言い出しまして、たまたま彼がスウェーデン系の企業にそのときは勤めていたので、簡単に本社の空きがあるところに頼んで移動させてもらうことができました。それが移住のきっかけですね。

スウェーデンと日本との違い/移住当初の苦労と翻訳家への道

今井:ありがとうございます。先ほどありました、『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』というタイトルのとおり、子育てだったり、社会全体で教育に取り組んでいるなんていうイメージがスウェーデンにはあるんですけれども、実際にスウェーデンで暮らしてみて、日本との違いというか、これはすごいなあっていうような驚きっていうのは何かありましたか?
 
久山:はい。やっぱり子育てに優しいのを期待して移住したわけなんですけど、その期待はもう全く裏切られず、予想以上にやっぱり暮らしやすさ、子育てのしやすさ。基本的にみんな共働きなので、それが基本になって、社会が作られているという感じですね。逆に日本の方がもしかしたら驚くかもしれないのは、ちゃんと男女平等が進んでいて、男女とも働いている分、女性だからとか、小さい子がいるからっていう理由で働かないっていう言い訳には逆にならなくて。私なんかは女で2歳の子どもを抱えて、ちょうど外国から来たばっかりだったんですけど、それでも働いて当然っていう感じで。みんな心配してくれていた部分もあると思うんですけど、「仕事、見つかった?」とかって、移住してすぐ聞かれたんですよね。それは結構、自分としてはきつくて(笑)。そんなすぐに仕事は見つからないですし、ましてやスウェーデン語もまだできないし、子どももまだ2歳なので、日本だったらまず「仕事、見つかった?」とかって聞かれないんじゃないかと思うんですけど、こちらは専業主婦という概念は元々なくて。男女関係なく仕事をしていない人は失業者っていうカテゴリーになってしまうので、自分ももう思いっきり失業者だったんですよね、スウェーデンに上陸した瞬間から。その悔しい気持ちがバネにもなりつつ、どうしても働きたくて来たわけなので、どうしようかなと思った時に、普通に会社に就職しようと思っても、外国人なので、就職活動も大変で。本当に失うものは何もない状態で、何をしたいかなって考えた時に、本の翻訳をしたいっていうことを気づいたので、その経験がなかったら翻訳の道も目指さなかったと思いますし。本当に移住はすべてを一度手放してゼロから生活を立て直すので、当時は辛かったですけど、今思えばいい機会でしたね。
 
稲川:スウェーデンって男女平等が本当に確立していて、大富豪の奥さんでも仕事していますもんね。
 
久山:そうそうそう。お金に困っていなくても、自分の好きなことを追求するような仕事だったり。赤十字の理事とか、そういうボランティアっぽいこととか、皆さん必ず何かされていますね。やっぱりそれがその人のアイデンティティなんでしょうね。
 
今井:あと今お話を聞いてびっくりしたのが、スウェーデン語。元々、何か素養がおありになったのかなって思っていたのが、何も知らない状態でスウェーデンに飛び込んだっていう状態だったんですか?
 
久山:一応、高校時代、もう大昔なんですけど(笑)。高校時代に1年間、スウェーデンに交換留学で来ていたので、簡単な会話とかはできたんですけども。その後に日本に帰って大学を出た後、関西だったので、スウェーデン語学校とかもなくて、しばらく何もしてなかった時期があって、それから東京に出てきた時に、東京には東京スウェーデン語学校っていうスウェーデン語学校があって、そこで速水望(はやみ ながめ)先生っていう先生と出会うことができて、それから何年も先生のもとで勉強を続けることができて、それで移住したという感じだったので、スウェーデン語はゼロではなかったんですけど、さすがに職歴も学歴もスウェーデンでは一切なかったので、就職には結構苦労しました。と言うか、結局、企業への就職はできていないんですけど(笑)。フリーランスになっちゃったので。
 
今井:でも、今はもう翻訳家として大活躍されていらっしゃるので、すごいなあっていうふうに思うんですけれども、スウェーデンといえば森とか自然とか、ムーミン谷みたいなイメージが私の中であるんですけれども、東京とかだと、ビルがいっぱいだったり、車がガーガー走っていたりみたいなところで、心の癒される感じとか、インスピレーションが湧く感じとかって、やっぱり自然に近いほうが出るのかななんて思ったんですけれども、仕事の質も住む場所が違うと変わってきたりしますか?
 
久山:そうですね。移住して2年ぐらいして、家を買いたいなと思って、選んだ家が、今も住んでいるんですけど、窓から海がワーって見えていて、裏はブルーベリーがなる森みたいな感じで、本当にすごくいい環境のところに家が見つかって。『スマホ脳』信者なので(笑)、ウォーキングに出るわけなんですけども、やっぱりすごく景色も綺麗だし、空気もおいしいし、ウォーキングがやっぱり楽しいんですよね、そういう環境でできる方が。これも『スマホ脳』の受け売りなんですけど(笑)、やっぱりクリエイティブな発想が必要な時って、まさに運動するといいらしいので、原稿を書いたりっていうような仕事とか、あの部分の翻訳はどうしようかなみたいな、自分ですごく考えないといけない作業がある時は、必ず歩きながらやっていますね。そう考えると、結構スウェーデンの企業ってわりと新しい発想で世界に出ていた企業が多いじゃないですか。Spotifyとかもまさにそうですし。
 
稲川:有名なのはデザインに優れたIKEAとかね。あとはH&Mもそうですし、Spotifyも。そういった独特な企業ですもんね。
 
久山:そうですね。今までにないビジネスモデルだったり、だから、もしかしたらみんな結構散歩しているかもしれないですね(笑)。いろんな起業家の方々も。
 
今井:日本にも京都なんかに「哲学の道」って言って、昔の哲学者が歩いた道なんていうのもあったりするので、やっぱり歩くことも大事ですし、歩きたくなるような環境っていうのはすごく大事なのかなって今思いました。
 
久山:そういう意味で、本当にスウェーデンは恵まれていると思います。

翻訳家、エッセイスト、そして日本語教師として

今井:ありがとうございます。ちなみに今、久山さんが活動されていることなどはありますか?
 
久山:そうですね。翻訳以外に高校で第二外国語の1つで、日本語を選択できる学校で日本語を教えているんですけれども、年末にすごく面白いことがあったので、ちょっと話そうかなと思ったんですけど。1年生の生徒たちは結構ガヤガヤしてうるさいクラスなんですけど(笑)、授業中にふと1人の生徒が「バカみたい」って突然ホワイトボードに書いたんですよ。結構、授業中もウロウロする子たちで、ジッと座っていないんですけど(笑)。それで、すごくうれしそうに私の方を見て、「これって日本語でバカみたいっていう意味なんでしょ?」とか言って。で、「そうだよ」って褒めてあげたら、喜んで。ふと気づいたんですけど、これって歌詞の一節なんだって。そういえば、うちの子も言っていたなあと思って。「龍が如く」っていう日本のセガのゲームがあって、ヤクザが主人公のゲームで、すごく有名な演歌が入るんですけど、それが「バカみたい」っていうふうに終わるんですよね。で、気づくと教室のみんながそれを歌い出して、みんななぜかその演歌を知っているんですよ。「じゃあ、みんなで歌おうよ」とか言って、サビのところだけ黒板にアルファベットで書いて、みんなに歌わせたのを、面白かったから、私がスマホで撮影して、それを自分のTwitterに載せたら、セガの公式アカウントさんがそれを見つけてくださってツイートしてくださったりして。あとそのゲームのディレクターさんで、歌詞を作られた方とか、実際にその曲を歌ってらっしゃる歌手の方とかもリツイートしてくださって、リツイート1万件みたいな(笑)。
 
稲川:すごい!
 
今井:面白いですね!
 
久山:バズったんですよね。それで地元の新聞とかも、「日本でバズった」っていうことでクラスに取材に来てくれて、生徒たちも取材されて、すごくうれしいじゃないですか。まだ高校1年生なので、16歳で。SNSでバズることが今の若者の夢らしくて、私は全然知らなかったんですけど(笑)。生徒たちの夢が叶ってすごく幸せそうでした。
 
今井:ありがとうございます。まさかの「バカみたい」からのワールドワイドな(笑)。最後に久山さんからリスナーのみなさんにメッセージをお願いできますでしょうか?
 
久山:はい。自分の話ばっかりしちゃったんですけど、フォレスト出版さんの本は結構読んでいて、稲川さんがたくさん送ってくださったりしたのもあるし、自分でも結構買ったりして、特に予祝の本が。黄色い本でしたっけ? 赤い本もありましたよね? 稲川さん、タイトル覚えていますか(笑)?
 
稲川:『前祝いの法則』っていう。
 
久山:そうです。それを読んで私もやらなきゃと思って。それがまさに今、お話しさせていただいた著書、『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』の刊行前で、もう初めて自分で書いた本なので、これは売れてほしいと思っても、予祝をしに、ちょっといいレストランに家族で行って、シャンパンとか頼んで(笑)。ちょっと恥ずかしいんですけど、「5万部!ベストセラーおめでとう!」みたいなことをやって、当時の私には5万部なんてもう本当に超超超大ベストセラーなので。そんなことはあるわけないと思いながら、「5万部!」って言いながら乾杯したら、ちょっと神様が聞き間違えたみたいで(笑)。2年後に、著書じゃなくて、訳書の『スマホ脳』の方が今63万部までいったということで。
 
今井:んー!!
 
久山:「ちょっと神様、書名も数字も間違っていますけど(笑)」っていう感じなんですけど、正直、こっちの方が嬉しかったので、本当にありがたい予祝の叶い方で。もうありがとうございます、稲川さん。
 
稲川:こちらこそうれしいです。
 
久山:おかげさまで、この展開というか。
 
稲川:人によっては予祝からちょっとタイムラグがあるので、遅れて実現するっていう人もいらっしゃるので。
 
久山:しかもちょっと斜め上。そのままじゃなくて、斜め上に叶った感じで。
 
稲川:あとは2年寝かせた分、5万部どころか。
 
久山:利子がついて!
 
稲川:そういうことじゃないですかね。
 
久山:すごく利子がつきました(笑)。
 
今井:「遅れちゃったから、その分上乗せしておくね!」みたいな、神様の計らいがあったのかもしれませんね。
 
稲川:そうだと思います。
 
久山:皆さま、ぜひぜひ予祝はされたほうがいいですよ。ちょっとびっくりするような結果になるかもしれないですけど。
 
稲川:ありがとうございます。
 
久山:体験者からの声でした(笑)。
 
今井:久山さんの本のURLなどはこちらにも貼っておきますので。
 
久山:ありがとうございます。
 
今井:素敵な久山さんのご著書、皆さんもぜひお読みいただけたらなと思います。本日はスウェーデンから久山葉子さんと、フォレスト出版も稲川さんにお越しいただきました。どうもありがとうございました。
 
久山:ありがとうございました。
 
稲川:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
 


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