見出し画像

【書評】400のプロジェクトを同時に進める 佐藤オオキのスピード仕事術

東京とミラノ拠点として、建築・インテリア・プロダクト・グラフィックと多岐にわたってデザインを手がけるデザインオフィスnendo代表・佐藤ナオキ氏の仕事に関する著書です。佐藤氏は出版当時で400件以上の案件を同時に進めており、その進め方について述べています。

佐藤氏は仕事のスピードとクオリティの関係について次のように述べています。

実際にスピードを重視すると、不思議なほど仕事の質が高まります。
手がける仕事の幅は広がっていくので、ますます経験値は上がっていきます。そして、さらにスピードもアップし、自分も成長していく

佐藤氏は、実際の納期よりも早く締め切りを設定し、仕事を進めるようにしているそうです。それにより自ずと早く設定した締め切りに間に合わせるにはどうすればいいかと考えるようになり、さらにスピードがあがるといいます。

佐藤氏は仕事のスピードをあげるためのコツは、「課題」の分析を徹底的にすることだと述べています。

課題の分析ができておらず、「着地点」がわからないまま仕事を進めれば、スピードを上げることもクオリティを高めることも望めないのです。
アイデアを発想するときは、クライアントの抱える課題や目指すものからスタートし、最終的に解決策としてどんな提案をすべきか、筋道を立てて考えています。
課題を分解して「部分解」を出すことに徹すると、アイデアはぐっと考えやすくなります。

佐藤氏は「課題」を分析し、「解決策」を導くことでプロジェクトを成立させているため、アイデアは「閃く」ものではなく、ロジカルに「考えつく」ものと言います。優秀なデザイナーは経営コンサルタントのような思考法で仕事をしていることがわかります。

このように仕事のスピード・クオリティを高めることを徹底してきた佐藤氏のもとには、リピートしてくるクライアントが数多くいると言います。佐藤氏はその理由を次のように述べています。

なぜクライアントが「また一緒に仕事がやりたい」と言ってくださるのかというと、おそらく「常にクライアントの期待を上回るアウトプットをし続ける」ということを徹底しているからでしょう。特に、本書のテーマである「スピード」という点は強く意識しています。クライアントから「1週間で何とかしてほしい」と言われれば、5日で納品する方法を考えます。クライアントの要望にスピーディーに対応すると、「仕事がしやすかった」と言ってもらえます。

私の知人の活躍しているコンサルタントも、クライアントが彼を指名する理由をヒアリングしたところ、「即レス」をあげるクライアントが大半を占めることがあったようです。やはり、「スピードが速い」ということはそれだけ価値を生みます。Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏も、未来永劫顧客が求める価値を「低価格」「豊富な品揃え」「迅速な配達」と捉え、それに沿ってAmazonを設計しています。「スピードが速い」ということは、いつの時代も顧客に求められる普遍的な価値と言えます。

最後に、佐藤氏は下記のメッセージで本書をまとめています。

この12年間で私が身を持って学んだことの一つは、「やり方次第で仕事のスピードはいくらでも上げられる」ということ、そして「スピードは仕事の質に転化する」ということです。

仕事のスピードに徹底的にこだわった稀代のクリエーターが著した全ビジネスパーソン必読の書です。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集