見出し画像

Coventry vs. Birmingham 〜沼を生きぬく者〜

先日UPしたQPR vs. Hullと同じく、第20節のEFL Championshipのゲームを見ていきます。

Coventryは昨シーズンはプレーオフに入り込み惜しくも決勝でプレミアへの切符を逃してしまいましたが、チームへの期待は大きく膨らんだ。しかし、今シーズンは例年通りの下位での争いに巻き込まれる。昨シーズンは確変の年だったのかと思うほど。ただ、今シーズンからは坂元も加入し日本からの注目度も少し上昇中。

ここ最近は負けも少なく、前節のIpswich戦で4戦ぶりの敗戦となった。そこそこよい流れを持ってきている。

対するBirmighamも調子の上がらないシーズンが今シーズンもその様。
Birminghamにも三好が加入し日本人対決となる。

しかし戦績は悪く、ここ5試合で1勝と厳しい雰囲気が流れている。このゲームで雰囲気を打開できるか…。

今節のゲームハイライトはこちらから↓


前半

ホーム Coventryは前節からスタメンを2枚変えて、坂元もスタメンに戻ってきた。Birminghamは前節から3枚入れ替え。三好は2試合連続のスタメン。


コンセプトの観察

ではまず、両チームのコンセプトを見ていきましょう。

ボールの保持の時間が多いのはCoventryです。
保持時はビルドアップからの開始で、CB2枚+GKで最終ラインを形成しビルドアップの入り口とします。中盤にはCHを2枚配置し大外は開く。4-2-1-3(2-4-1-3)に近い形でスタートします。CHは2枚いるがアンカーを配置するようにしてどちらか1枚が降りて受けることもある。

しかし、それに対するBirminghamの守備の仕方を見てみると、非保持時には4-4-2のミドルブロックで構え、トップはCBへは出ずに背後のCHへのパスコースを消す。+その背後のCHにはこちら側のCHもあてて見る。FW2枚とCH2枚で相手のCHをサンドするような形。4v2の局面ともとれる。
プレスのタイミングは大外にパスが回ってから。相手のSBに出たところを狙い目にしプレスを強める。相手のビルドアップの入り口の2-4の外の部分=4の両端。
全体的な目標は停滞させて簡単に前進させないこと。しかし、プレスの開始位置は決めている。

Coventryのビルドアップの開始
水:COV 黒:BIR
 Birminghamのプレスの開始


このような対応をされると、Coventryは繋ぐことonlyで前進はできないので放り込んで押し込むことを採用し始める。その際には、ターゲットはSimmsである。細かい崩し(インテリ的なフットボール)だけでなく、時に端的な放り込みで組み立てのバランスをとりながらとなる。
余談であるが、Simmsはボールを収める能力はそこまで良くはない。昨シーズン在籍していたGyokeresはかなり収まり、そこから持ち味の推進力・チャンスメイクする力で攻撃をしていた。しかし、このようなChampionshipでは反則級なプレイヤーがいるわけでないので、放り込んでもそこまでチャンスにはならない。


逆の立場で見てみるとする。
Birminghamはチームカラーとしてカウンターサッカーという意識がある。攻撃時にはシンプルにタテへの速さを重視しカウンターにかける。スピード感を持って仕掛けてゴールへ迫りたい。ボックス外からミドルシュートを放つシーンもあり、シュートへ素早く漕ぎ着けることも意識づけされている。
ポジトラ時にも前への速さを見せて、守備時に相手を引き込ませて自陣で奪えば2枚くらいでもカウンターを仕掛けられる。その際は、ウラへの動きと供給が必要で、ドライブと質の高いロブ・ロングもあるとよい。

Birminghamの攻撃コンセプト


しかし、すべての機会でカウンターが成立するわけでもない。時には、カウンターの施行がうまくいかず遅攻になることもある。そんな時にはサイドアタックを試みる。

サイドからの仕掛けでは、左サイドのStansfieldが中心となる。仕掛ける回数は多く、1v1または1v2の場面でもサイドを破って抉るプレーもあった。ここは強みである。
また、ネガトラ時の目標は素早く切り替えてなるべく高い位置で奪うこと(状況に応じてセットし直すこともある)。サイドで奪えば先ほど書いたことと同様に仕掛けさせる。

また守備の話になってしまうが、Birminghamのネガトラ時の「状況に応じてセットし直す」というのがあったが、これは相手が保持し直し落ち着いて回し始めた時に行われること。そうなれば4-4-2でブロックを組み直し構える。
相手がリズムを掴む前に奪うか、安定させてしまったら撤退するかの二択になる。

そんなBirminghamの攻撃に対しCoventryの守備はカウンターに備えたい。序盤は前プレの強度を高めて前から奪おうという印象を感じた。しかし、Birminghamはロングの使用や前線への放り込みでタテへの速さを見せてくる。となると、無闇に前プレに行ったとしても剥がされるだけになる。しかも、前線が前にいってしまうとライン間を間延びさせないために最終ラインもアップする。すると、背後のスペースを突かれることになるので、相手のタテへの速さ・カウンターサッカーが実現してしまう。

なので、相手のカウンターに警戒しながらプレスの仕方と、帰陣の速さとディレイの必要性がある。自陣に入れられ数的不利になると失点の可能性が上がるので、ボールの位置によってエリアにかける枚数を調整し最優先のゴールを守ることを徹底したい。

Coventry(守)のカウンターへの備え


次なるフェーズ

という展開の中でCoventryは前線への放り込みで押し込むことになり、相手のラインを下げさせる→押し込める体制を作りブロックを崩しにかかる。
また、セカンドなどを回収できればチャンスにはなる。特に、サイドアタックは武器になっており、右サイドでのアタックでは大外の坂元に仕掛けさせるシーンが多い。

右サイドのアタック時の関係性を見てると、坂元が大外で張ってボールを待つ。そこで1v1を仕掛けさせることもあるが、そればっかりだと坂元への対策で、DFの枚数がかかり1v2の局面になり孤立してしまう。最終的にはロストしかねない。

なので、右サイドでのサポートでは大外の坂元の孤立を避けるために、右SBのvan Ewijkのオーバーラップ・アンダーラップでチャンスに関わる。このプレー(サポート)で坂元に対峙するDFと周辺のDFを混乱させ対応を難しくする。DFは坂元に対して簡単に出ることもできず(仕掛けられ交わされるリスクがある)、出ないと次のサポートのEwijikを使われる。という誘惑?的なものがある。

COVのサイドアタック 例1-1
例1-2
例2


逆サイドの左サイドでは、枚数が絡んでコンビネーションで崩そうとする。1v1を仕掛けるプレイヤーの配置はなく、関わりで剥がそうとする。
左右においての攻撃の違いもあるので、相手はどちらのサイドも共通の守り方をすれば良いということにはならないので、対応に変化をかけないといけないので混乱を招くことにもなる。
そして、崩しに関してはアイディアが豊富でかなりやりこんでいるのかなと感じる。

という工夫・修正でチャンスを創出し決定機の作り出しにもなる。
相手のブロックの破壊にもなる。

Birminghamは相手の保持時間の増加で構える時間が長くなる。その際に放り込まれてラインを下げられる。=コンパクトさがなくなる。全体的に下がり始めてブロックを自陣で組む形になるが、コンビネーションなどで崩されることになり、ピンチの増加や軽い守備になってしまう。


一方でBirminghamの攻撃はどうなっているのか。
Birminghamは前述のように、カウンター主体のため構えられると崩しにくい。アイディアがなく、クロスに頼るだけになる。先ほど、Stansfieldの仕掛けもあると書いたが、それが成功する確率は高いわけではなく相手に徐々に対応されていってしまう。
カウンタースタイル故の崩すアイディアの不足が感じられる。

プランAのカウンターが封じられた時のプランBの質が低いと、得点の機会さえも生まれない。ブロックを崩すことが難しいことは定石であるが、Coventryはブロックを崩そうと工夫を試みている。目の前の相手にはブロックを崩すアイディアがあるが、自分らにはない。そこへ重点を置いてアイディアを持つことが重要になる。

しかも、カウンターなどの攻撃時のやりきれなさが印象的になってきている。それは、初速自体は速いが前線に入ってからの関わりやアイディアがなく遅攻になってしまう。シュートで終える回数も少なく攻撃時の威力は低くなっていっている。
攻撃力が低くミスもあるため、守るCoventryにとっては守りやすく。単純に守るだけで対応できる。そこまで苦戦することもなく、帰陣し相手に寄せるだけでOKになる。


展開を動かす

押し込みの時間が増加しサイドアタックからのチャンスが多くなったCoventryは遂にネットを揺らす。

30分、Coventryは右サイドで起点を作るとアンダーラップを仕掛けたO'Hareがポケットで受けてそのままシュート。ニアサイドを打ち抜き先制ゴール。ブロックの崩しが難しい中で、アイディアや工夫を凝らしてブロックに穴を開けた。そして、ゴールという結果で実を結んだ。

Coventryの先制時のアプローチ


守備の軽さも目立っていたBirminghamはこのゴールシーンでも、シュートを放ったO'Hareへ誰がいくのかもはっきりせず、マークやコース切りが曖昧になっていた。軽さを改善できずに失点してしまった。


前半を終えて

前半はこのまま1-0でCoventryがリードして終了。

堅守ではないBirminghamのブロックに対しイマジナリティの高いCoventryの攻撃がつけ込む。Coventryにとってはアイディアを出せば出すほど崩せる。コンビネーションや関わりで崩しの質を上げる。

対して、Birminghamはカウンターだけを考えているのかという印象。そのほかの攻撃スタイルの質が低下しており、攻撃力の低下が助長される。

ただ、他のカウンター志向のクラブも同様に見える。インテリ・保持できるプレイヤーの能力が潰れる、活かせないということになる。Birminghamでは、三好のようにチャンスメイクが上手い・細かい崩しが上手い選手の能力を活かしきれていない印象。彼らが持っても周りはカウンターばかりに意識がいき、サポートや関わりを持たずに孤立させている。


後半

苦しい展開が続くBirminghamに対し、優位に試合を進めるCoventry。
勝負の後半はどうなるか。


コンセプトの見直し

後半を見ていきますが、まずは後半におけるコンセプトを再確認します。

リードのあるCoventryは相手に持たせながら構える形へ。前半のように前プレをかけてリスクのある守備はしない形へ。リードを最優先で守ることにします。
崩しに特徴のない(はっきり言えば)相手に持たせてブロックを崩させようとすれば相手は苦しむので有効的な手段である。

攻撃時においては、ロングの多用で相手に渡すことが多い。相手に持たせるということが絡んでそう。
ただ、自陣からのビルドアップ時は繋ぎながら保持する時間を増やし、マイボールにし攻撃したい相手にフラストレーションを溜めさせます。すると、ファウルを受ける回数が増えてきます。マイボールの時間を増やし時間を潰せると同時に相手にカードのリスクをあげさせます。

ロングの多用とあるのですが、攻撃についてはカウンターも多くなります。枚数や手数をかけずにアタックへ。素早くシュートまで持ち込みます。シュートまで至るには、1v1を仕掛けさせる事(攻撃に時間がかかる)をせずにラストパスを増やさせます。なるべくタテへ速くといったところ。坂元の役割も変化しておりラストパスを出せるようにプレーします。
前半のBirminghamのような攻撃法ですが、自由な攻撃を展開できています。前半の崩しのアイディアがあったように攻撃全体のアイディアも共有できているのかもしれません。


1点ビハインドのBirminghamは、前半終盤から保持する時間が増えるも前進やアタックにはいけない。組み立て方や敵陣まで侵入する方法が曖昧になる。ロングボール主体でカウンターを狙うだけではスムーズにアタックへは移れません。

サイドからようやく前進のきっかけを掴めますが、敵陣侵入後は個人技に頼る形になってしまい孤立してしまいます。
また、相手は構えて堅く守ってくるので崩さなければなりませんが、カウンターの意識が強いのでブロックを前にすると停滞感を漏らします。そのカウンターの強みを出したいけど、状況的には発揮できないといったところ。保持率があってもチャンスにはならないのでもどかしい展開に。


難しくなるBirmingham

チャンスを作れないBirminghamは持たされる中でロングの使用率が増加します。自陣から放り込んで相手の背後を狙うか、前線で起点を作って素早く攻めたいという意識でしょうか。

しかし、前線(ボールに絡む役割)で上背のあるプレイヤーはJutkiewiczのみなのでここを対応される(潰されて触れない・収められない)と、そのほかにハイボールを競れるプレイヤーがいないので敵陣では回収できない。
周りのプレイヤーは、Dembele(173cm)や三好(167cm)と小柄なのでロングを放っても意味がなさげ。ロストの可能性が上がるだけになる。

ロングを放ってしまうのは、前線に起点を作ろうとするということもそうですが、元々の原因は繋ぐビルドアップがうまくいっていないことにあると考えられます。
ビルドアップがうまくいかずに、ビルドアップは最終ラインで持っているだけで「タテパス=前進できるパス」は入らない。相手の守備組織のライン間でようやく三好が要求するくらい。しかし、前を向いてもボールを受けても他のサポートはなく周りは足が止まっている。「Miyoshiはどうしたいんだ…?」と思っているかのように三好(ボール)を見つめています。

守るCoventryは押し込まれても中を固めることを優先して素早く帰陣。サイドも渡れば外を向かせて限定。全体的な堅守さを実現。また、ネガトラ時は帰陣を早めセットを素早く。ブロックを組んで構えて持たせることを継続しラインも高く保ちながら。ということを徹底してリードを守ります。


終盤へ

Birminghamは結局点を取れないまま終盤へ時間が流れていきます。

守りに徹してしたCoventryも素早く攻め込むシーンが増えてくる。アタック時にサイドが持てば中の枚数入る。攻撃への意識も忘れていない。
サイドからクロスが供給されそうならより中に枚数を蓄える意識が強まる。もはや、相手のDFよりも枚数が多く選択肢の増加とシュートへの確実性が上がる。

という中で73分。Coventryは取り組み続けてきたサイドアタックからO'Hareが今日2ゴール目を挙げてリードがさらに広がる。攻め込みながらしっかり点をとる。良い流れで追加点を挙げた。

Birminghamは守備に関してはかなり緩くなっており再三のピンチを迎えます。しかし、GK Ruddyの好セーブの連発で大量失点という地獄を防ぐ。DFの緩さを救うRuddyの力。最後の最後の壁がチームを助ける。

とはいっても壊滅的な守備は変わらず、鋭い相手の攻撃に対し両サイドとも瀕死状態と言っても良いほど振り回される。活力・走力で上回られ対応できず自由にやられ放題。そして、ボックス内では前半のように緩さが出てしまいシュートも喰らいに喰らう。


2点もリードされたBirminghamはなんとか最後の意地を見せようと押し込んでいく。

停滞感を感じる中でも、Dembeleがサイドウラへ飛び出して行けることは強みで、ウラへ1本のパスでチャンスになる。そして、より深い位置でボールを受けて時間を作ることができる。しかし、サイドから仕掛けるもののゴールからはかなり遠い(サイドすぎる)。深さをとってもボックスからはかなり離れる。攻撃のアイディアが少なく感じるこのチームでは、この状態からゴールへ迫ることは難しそうに思える…。

ただ、ポケットをとれるとチャンスの雰囲気を感じる。
85分付近のプレーでは、ポケットをとってからチャンスになった。シュートを撃てない中でゴールへ迫らなければならない時には無理矢理でもポケットへ侵入することはが必要に思われます。


しかし、そんな反撃も虚しくゴールは奪えず。
2-0でCoventryが逃げ切り勝利。Birminghamは最後まで崩しきれずに敗戦。


総括

Coventryが攻守において上回ったという試合でした。
攻撃時のアイディアの創出からの得点。統制された守備組織。と目指すべき姿がはっきりしてました。

ここ最近の試合でかなり攻撃の質は改善されたように感じる。一時期前までは適当でガサツな攻撃だなと思っていたが、今節のようにイマジネーション高い攻撃を披露できていた。これからもっと質を高めれば上位争いにも手を挙げることができそう。期待が膨らむ。
坂元もチームの中心であるとわかり喜ばしいことです!

敗れたBirminghamは、ひとつの戦術への固執が印象に残ってしまい戦術(攻撃方法)の幅がないように思えた。それに加えて守備は軽くて対応できない。何においても中途半端で安直・単純な戦い方でした。

三好やStansfeildとチャンスメイクできるプレイヤーを有しているがそういうプレイヤーの活かし方が不十分だなと。このままでChampionshipでさえも沈むことは継続してしまいそう。
下位グループは他のチームが勝利を積み重ねつつあるので危機感を持たなければ、簡単に降格圏まで引き摺り込まれてしまいます。

それぞれがどんなシーズンを過ごすのかに注目。
そして、このあとの早朝から第21節があります。戦い方の変容はあるのか。

この記事が参加している募集

#サッカーを語ろう

10,699件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?