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出来るだけあなたに伝わるように書く感想文(2024)

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見た作品(映画・本・ラジオetc...)を ほぼネタバレなしで紹介してます。
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#感想文

「成瀬は天下を取りに行く」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<56>

「成瀬は天下を取りに行く」(小説/2023)  宮島未奈さんが2023年に書かれた小説。2024年の本屋大賞受賞作品。小説新潮で初出された2作品に加えて、他4話を書き下ろした一冊になっている。  主人公は主に成瀬あかり。  幼馴染の島崎みゆきからすると、彼女は昔から他の子どもとは一線を画しており、ある意味でほら吹きだと言える。  200歳まで生きると宣伝し、シャボン玉を極め地元紙に特集され、中学2年生の夏には西武大津店に毎日通うと誓う。2話では、島崎と漫才の大会に出場する

「監察医朝顔」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<55>

「監察医朝顔」(ドラマ/2019)  2019年の夏クールにTBSで放送された月9ドラマ。  上野樹里さんが主演をつとめ、風間俊介さんや時任三郎さんらも出演する。原作は香川まさひとさんと木村直巳さんによる同名漫画だそう。  2020年には第2クールが放送され、特別版も2019年と2020年に放送された。  「遺体の“生きた証”を探すふたりのかけがえのない日々を描く、この夏一番の感動作!!」。上野さんは司法解剖を行う法医学者万木朝顔を演じ、時任三郎さんは刑事万木平を演じる。

「傲慢と善良」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<54>

「傲慢と善良」(小説/2019)  辻村深月さんが書かれた長編恋愛小説。  2019年に刊行され、2022年に文庫本化された。2024年の夏には映画化されることも発表されている。  主人公は東京育ちで家業を引き継ぎ自営業をする39歳の西澤架と、前橋から上京し英会話教室で事務員をする32歳の坂庭真実。ふたりは付き合い始めてから2年以上がたち、半年先には結婚式場の予約も済ませていた。  しかし架は真実との結婚に対し、逡巡し続ける。年齢や常識を根拠に相手を70%と見定めておきな

「若者のすべて by suis from ヨルシカ」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<53>

「若者のすべて by suis from ヨルシカ」(音楽/2024)  本曲は、Netflixで作成された映画「余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。」の主題歌。ヨルシカのボーカルを務めるsuisさんが歌い上げる。MVも6/28に公開され、月島琉衣さんと豊嶋花さんが女子高校生を演じた。  原曲はフジファブリックの同名の楽曲。志村正彦さんが作詞作曲し、2007年にリリースされた。  これはこれでありだと思った。  夏の解釈はひとりひとり違うわけだし、それはこの曲に対す

「ルックバック」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<52>

「ルックバック」(映画/2024)  本作は藤本タツキさんが原作の同名読み切り漫画の映画化作品。2021年に公開された原作漫画は単行本化もされており、オンライト並行して購入可能。藤本タツキさんはファイアパンチやチェンソーマンの作者としても知られている。特に後者は2023年にアニメ放送がなされ、主題歌を含め話題になった。本映画は58分と比較的短い時間で公開され、いくつかの劇場では公開記念の来場者限定グッズも配られているそう。  小学4年生の藤野は漫画を描くことが好きで、学年

「十二人の怒れる男」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<51>

「十二人の怒れる男」(映画/1957)  原題「12 Angry Men」は1954年にレジナルド=ローズが書いた原案をもとに作られた作品で、テレビドラマ版が先に存在する。本作は映画版のそのリメイク。アメリカの裁判制度の陪審員に選ばれた12人の男たちが、密室の中で有罪か無罪かを審議する映画で、密室劇と呼ばれる作品の金字塔として呼ばれる。「物語は脚本が面白ければ場所など関係ない」という説を体現する作品として知られ、ほとんどのシーンは会議室で行われる。  めちゃくちゃ面白い。

「魔改造の夜 電動マッサージ器 25 mドラッグレース」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<50>

「魔改造の夜 電動マッサージ器 25 mドラッグレース」(NHK/2024)  僕の大好きなNHKのちょっと変な番組。シリーズとして不定期に放送されており、5月30日に放送された最新作は電マを使って最も早く25 mを移動するというもの。  参加した団体は、 企業が選ぶ採用を増やしたい大学ランキング1位T橋技術科学大学 小型モーターの世界販売1位Mブチモーター 国内市場の乗用車販売台数第2位のSズキ が各々のアイデアと技術力を競い、25 mを駆け抜ける。  面白かった!ぜ

「変身」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<49>

「変身」(小説/1915)  フランツ=カフカが1915年に書いた中編小説。実存主義文学の代表作として知られる。  日本語版も数多くの翻訳者によって出稿され、文学部の卒業論文として多く取り上げられる作品としても知られているそう。  作者であるカフカは、今年2024年が没後100年となるため改めて注目されるかもしれない。  寝覚めが悪い朝を迎えると、主人公グレーゴル=ザムザは虫になっていた。それまでグレーゴルは布地の販売員として、両親の借金の完済のためにも身を粉にして働いてお

「フォードvsフェラーリ」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<48>

「フォードvsフェラーリ」(映画/2019)  1960年代の自動車耐久レースの物語。マット=デイモンがチーム責任者、クリスティアン=ベールがドライバーとしてW主演を担う。  史実と違う部分が多いため、フィクションであることに留意するべきだが、迫力ある映像とアメリカ製造業の誇りを感じることが出来る。  ル・マン24を含め、カーレースで絶大な人気と実力を誇ったフェラーリは、他方で経営危機に陥っていた。一方フォードも、大量生産・大量消費の巨人として確固たる地位を気付いていたも

「オペラ座の怪人」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<47>

「オペラ座の怪人」(オペラ/2024/@KAAT 神奈川芸術劇場)  劇団四季主催の公演。  8月までのロング公演がなされている。  自分のお金で行くミュージカルはこれが初めてだった。  感想だけ言うと非常に良かった。  右の席に座った女の子2人組はどうやら音大生だったみたいで、音楽に対しそれなりの造詣があったようだが残念ながら僕には皆無。それでも十分楽しかったので今回は良しとしよう。  ミュージカルというか文化作品において改めて認識したことが一つある。  それはその

「関心領域 The Zone of Interest」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<46>

「関心領域 The Zone of Interest」(映画/2024)  第96回のアカデミー賞で、国際挑戦映画賞のオスカーを手にした作品。アメリカ合衆国・イギリス・ポーランドの共同製作。  アウシュビッツに勤める司令官の一家は、収容所の隣に一軒家を建てる。プール、家庭菜園、セントラルヒーティング付きの家。誕生日には父親に立派なカヌーをプレゼントする。しかし、その横にはアウシュビッツがある。昼夜黒煙が煙突から立ち上り、銃声が高々と鳴り響く。  テーマ、演出、とても本来な

「君の膵臓をたべたい」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<45>

「君の膵臓をたべたい」(映画/2017)  住野よるさんの同名小説の映画。主演は浜辺美波。  昔映画館で見たときに感じなかったが、これは良い映画なのかなと改めて少し懐疑的だと感じる。  どうなんでしょう?  原作小説の「【秘密を知っているクラスメイト】くん」の書き方は、自己評価の希薄さが感じ取れる表現方法で引き込まれたが、映画版はそうはいかない。どうも映画化しなくても良かった作品という風に感じてしまう。  とはいっても、興行収入が35億円。大ヒットの基準が10億円だとされ

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<44>

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」(映画/2017)  原題「Demolition」(直訳:解体)。  ウォール街の超エリートサラリーマンのデイヴィスは、空虚な数字と長年向き合ったため、交通事故で妻を亡くしても痛みを感じなかった。そんな彼は、自動販売機のお菓子が出てこなかったこと、そしてそれを感情のままにカスタマーセンターにクレームを入れたことをきっかけに、分解と破壊を通じて再生していく物語。  再生は破壊を通じてのみ行われるのだろうか。キリスト教的価値観を全面的

「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<43>

「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(映画/2019)  ポーランド・イギリス・ウクライナの合作で、原題「Mr. Jones」。USSRのスターリン体制化における、経済政策の闇を暴いた英国人記者ガレス=ジョーンズの伝記映画。事実とは異なる演出が特に残忍さを表現するシーンに散見されることから、批判的な意見もある。  1929年の暗黒の木曜日に始まった世界恐慌の中で、たった一か国ソ連だけは5か年計画の下で邁進しその影響を受けなかった。そのため主人公ガレス=ジョーンズはソ連の資