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「成瀬は天下を取りに行く」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<56>

「成瀬は天下を取りに行く」(小説/2023)

 宮島未奈さんが2023年に書かれた小説。2024年の本屋大賞受賞作品。小説新潮で初出された2作品に加えて、他4話を書き下ろした一冊になっている。


 主人公は主に成瀬あかり。
 幼馴染の島崎みゆきからすると、彼女は昔から他の子どもとは一線を画しており、ある意味でほら吹きだと言える。
 200歳まで生きると宣伝し、シャボン玉を極め地元紙に特集され、中学2年生の夏には西武大津店に毎日通うと誓う。2話では、島崎と漫才の大会に出場するなど突飛な彼女。何かをなすことを彼女は常々目標にしている。


 正直なところ、思ったよりも刺さらなかった。
 自分自身の考え方が少し成瀬に似ているからなのかもしれないと思う。僕は馬鹿で無知、向こう見ずな学生。傍からはそう見えるだろうし、そう思ってもらえることが生きやすさに繋がるじゃないかと思っている。急に何か目標を言い出し、宣言する。
 でもその突飛なゴールを定めて、それに向かって何かを取り組むというのが僕のやり方で成瀬にも似ていると感じる。
 そして成瀬は彼女にとっての道理が通っているのであれば、相手の感情や意図は無関係であると考えている。現代的な女性像を確かに強さとして有している感もある。しかし。これはなんとなくの息苦しさを感じながら生きている日本の現代人にとってあこがれを抱く対象に思えるから、彼女が学生であるというシンボルを有しているためそのように見られるかもしれないが老若男女問わずのあこがれとなっているのかもしれないと思う。
 ブレないかっこよさのシンボルとして描かれているため、閉塞感のある日常を営む社会人にとっては、あの頃の無敵感と今の気持ちの代弁者のように映るのかもしれない。が、どうも僕には当たり前でならなかった。


 すこし僕には早かったかな。再度読みたいと思う。。


 なんとなく成瀬はオノヨーコな気もする。正確には成瀬自身で書く「グレープフルーツ・ジュース」を実行しているような感じ。
 出来るか出来ないかではなく、するべきかどうか。成瀬の物事への評価軸が少し世間と異なるのではないかと思う。迎合しない強さを奇異の目で見られているようだが、世間知らずの学生の青春の1ページとして、誰しも持っていたものを思い起こしてくれるのなのだと思う。

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