水産DXストーリー #2 鮮魚の在庫管理はなぜ大変?「在庫茶屋札」の導入してアナログ作業を改善
今回は「在庫茶屋札(ざいこちゃやふだ)」の導入によって鮮魚の在庫管理の生産性向上につながった取り組みです。なぜ鮮魚の在庫があるのか、どう管理していたのかなど魚ポチの仕組みの前提をお伝えした上で、その改善内容を紹介します。
なぜ「鮮魚の在庫」が生じるのか?
私たちが運営している「魚ポチ(うおポチ)」は、産地から仕入れた水産品を中心とした商品を自社ウェブサイトに掲載し、都内飲食店を中心に卸売をしているサービスです。魚ポチに掲載している商品は約3,300種類あり「鮮魚」がカテゴリ構成の多くを占めます。
「魚ポチの鮮魚は、飲食店の発注後に産地から仕入れるのですか?」とよく聞かれるのですが、鮮魚の場合は毎日の水揚げ量や種類、大きさなど、何がどれくらい水揚げされるかは日々変動するため、受けた発注内容を確実に産地から仕入れるのが難しいのです。ですので産地で水揚げされた鮮魚を私たちが欲しい分だけ仕入れ、魚ポチから飲食店が発注するというフローになっています。
魚ポチに掲載した鮮魚をすべて売り切れば、もちろん在庫は発生しませんが、飲食店のメニューづくりを支える魚ポチとしては「豊富な品揃え」は提供価値のひとつ。和食やフレンチ、イタリアンなど幅広い業態の飲食店に満足いただけるようバランスをみながら仕入量を調整しています。
「鮮魚の在庫管理」と「一般的なものの在庫管理」の違い
そのようなフローのため鮮魚の在庫が生じるわけですが、前提として「鮮魚の在庫管理」と「一般的なものの在庫管理」の主な違いについてお伝えしたい思います。ここでは生鮮品ではなく、日用品やファッションなど多少時間が経っても商品価値を失わないものを「一般的なもの」と定義します。
鮮魚と一般的なものでは、商品価値(鮮度)と入荷から出荷までの時間軸が全く異なります。鮮魚の場合、水揚げ後から鮮度が下がっていくため、入荷から出荷までの工程を短時間で対応しなければなりません。
下記は出荷までのフローの一例ですが、一般的なものは受注前に在庫管理をして顧客からの発注後に出荷するというのが主流です。しかし鮮魚の場合は受注を締切後、深夜に各地から鮮魚が入荷し、入荷後はすぐにピッキングを経て早朝には飲食店へ出荷します。一連の工程は6時間程度とスピードが求められます。そうして最後に在庫管理をするという流れです。
在庫となった鮮魚は翌日少し価格を下げて再び魚ポチに在庫品として掲載され、最終的にはすべて売り切っています。ちなみに在庫品というとマイナスイメージを抱く方もいるかもしれませんが、在庫品が欲しい飲食店のニーズはけっこうあります。煮付けやポワレなど加熱用としてお得に仕入れたい方は、品質と価格のバランスをみて仕入れを行います。在庫品も魚ポチの提供価値「豊富な品揃え」を支えてくれています。
さて、「在庫となった鮮魚を再度魚ポチへ掲載する」と言うだけは簡単なのですが、毎日入れ替わる鮮魚の在庫管理するのは大変なアナログ作業でした。
在庫管理の担当者が在庫記号(商品ID)を手書きで在庫箱や在庫表(紙)に書いて、魚ポチ掲載担当者に共有するフローを行っており、魚ポチの成長とともに担当者の在庫管理工数だけでも毎日手間がかかる状況になっていました。
在庫茶屋札の導入によって、在庫記号の手書き作業がなくなり自動化。生産性向上へ
毎日入れ替わる鮮魚の在庫管理のアナログ作業をデジタル化できないかと、導入したものが「在庫茶屋札」です。茶屋札とは、昔から市場の仲卸のなかで使われてきた専用の注文用紙のことです。市場の茶屋札は手書きが主ですが、魚ポチの茶屋札はデジタル化されています(茶屋札デジタル化についてはまた別の記事で紹介します)。「在庫茶屋札」とは、在庫となった魚に在庫記号を自動的に付与した茶屋札です。在庫記号を手書きするというアナログ作業をなくしたことで、生産性は20%ほど向上しました。
一見「在庫茶屋札」は地味な取り組みにもみえますが、鮮魚の特性上、手書きで管理するというアナログ作業が多く、水産業界のDX化を推進する一歩ではあります。今後さらにDX化を推進していくために継続して改善を進めてまいります。
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