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多国籍おいしい同盟

「セイボリー・パンケーキ?!ほんと日本ってクレイジーなもの作るよね」
ケイティが発したこの言葉を思い出すと、いまだにクスりと笑ってしまう。

※ ※ ※

イギリスへ留学したばかりの冬、クラスメイトとの親睦を深める為にPotluck Party (持ち寄りパーティ) を行うことになった。

「あなたの国のおいしい料理」がドレスコード。

僕が所属していた修士課程では、現地のイギリス人は2割ほどしかおらず、残りは、米国、メキシコ、スペイン、ポルトガル、サイプロス、タイ、マレーシア、中国、日本(僕一人)の多国籍なメンバーだった。みな、食のビジネスを立ち上げたい!または、食品研究がしたい!という野心に溢れたメンバーだった。

そんなメンバーが一堂に会し、Potluck Partyをやるとなったら、気合が入る。

僕はいろいろ迷った挙句、「お好み焼き」を振る舞うことにした。

街の外れにあるアジアンスーパーまで、15分ほどてくてく歩き、お好み焼きミックス粉、マヨ、ソース等を購入。

僕が住む街の総合スーパーには「豚バラ肉」が売ってないので、わざわざ肉屋に行って「薄くスライスして!」とお願いしてバラ肉をこしらえてもらった(不慣れなのか、30分近くかかった。ありがとう、お姉さん!)

※ ※ ※

そしてパーティ当日。

大学の共有スペースに集まり、各自手作り料理を振る舞う。イギリスのケイティは、シェパーズパイを用意して、みんなにイジられてた(パブで食べ飽きてるよ!ヘイ、イギリス料理はお呼びじゃないぞ!など辛辣なイジリ。笑)。タイのモスト、中国のピーター(両名ともEnglish name)は、それぞれパッタイと水餃子的なものを振る舞った。

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実際のパーティの写真

このパーティまでの数ヶ月、仲が悪いわけじゃないんだけど、アジアチームと欧米チームで別々につるんでいた。しかし、各国の食事を通じて両チームの距離が一気に縮まった。

「おいしいもの」を触媒にして、どんどん話が弾む。

「これ何でできてるの?」
「パッタイ大好きなの!!」

この日を境に、僕たちは初めてクラスメイトになれた気がした。

そして、その絆はいまだに、フーディ・アライアンス(多国籍おいしい同盟)として僕たちを繋いでくれて、インスタグラム・フェイスブックで、おいしいご飯を報告しあっており、僕の人生においてもおもしろい分岐点となった。


そうそう。お好み焼きの話。


お好み焼きは、アジアの仲間や一部のフーディには、OKONOMIYAKIで通じたが、イギリス人のケイティは、初耳だったらしい。僕が「まあ、しょっぱいパンケーキ(セイボリー・パンケーキ)みたいなもんだよ」と言ったところで、冒頭のセリフに繋がった(笑)

そんなケイティも、恐る恐る、僕が作ったパンケーキを箸を使って食べてくれた。

最初は怪訝そうな顔だったけど・・・

モグモグと咀嚼して、顔がパッと明るくなった。

そして、眉を大きく上げて、笑顔で一言。

「うん、この甘しょっぱいソース、最高においしいわ!」


ああ・・・ごめんケイティ。
そのソースは僕が作ったんじゃないんだ。
日本人なら誰でも知っている「あの」お好み焼きソース・・・。

日本の食品メーカーのソースが、多国籍おいしい同盟メンバーの心に刺さった瞬間であった。

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おしまい


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