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【何を信じるべきか】がわかるレシピの見方。食べたいマフィンから考える。


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レシピの完璧なんてありゃしない。

先にお伝えしておくと、このnoteには完璧なレシピは載っていません。
あるのは僕が考えたレシピだけで、見てくれているあなたの希望に沿うものではないのかもしれません。
またここでは捉え方の一つの例としてレシピをご紹介するので、写真等を撮ることなく研究として終わってしまいました。そこはすみません。


マフィンなんて、、そんなもん。


【パサついたマフィンは嫌!!】という相談をいただいた僕はこの度【マフィン】について深く考えてみる事になりました。

初めにお伝えしておくことは【当店にマフィンのご用意はありません。】ということ。

それはきっとこれから先も用意しないし、正直に言うと僕はマフィンを軽く見下していました。

料理人として料理と言うものを見下す態度は、今思えば本当にいかがなものかと思いますが、相談を受けた時点では僕の気持ちはそこにありました。

マフィンなんて僕は出さない。
多くのお菓子屋さんがデフォルトのように並べるマフィンにそもそも未来性がなく、なんちゃっての人たちが作るお菓子だと思っていたのはついこの前。

Instagramを開けはどこの店でもマフィン、マフィン、マフィン。

中に入っているフルーツも特別代わり映えもせず、何も面白いように目に映らなかったマフィンですが、相談いただいた方と僕とが唯一一致している間はパサついていると言うこと。

写真から見えるマフィンでさえ口に入れた瞬間の【もさもさ】とした食感は簡単に想像できますし、マフィンに関しては正直資本力のあるヤマザキのような会社が安くて1番おいしいと僕は思っています。

僕が思うマフィンは口に入れた途端 ふわっ! しっとり! と口の中でバターがしっかりと乳化した生地が溶けていく事が大前提。

でも僕自身大手のお菓子以外でそんなおいしいマフィンは食べたことがない。
思い返すと自分自身でもそれを作るのはできないのではないかと思い今回手を出しました。

レシピの何を信じるかは人によって違う。



少し話は変わりますが、お菓子と言うものはバター、砂糖、卵、小麦粉の4つの配合からなり、お菓子の種類は違えどその配合のバランスや他に加えるチョコレートやナッツによって幅をきかせているものです。

つまりベースの4大原則は変わらず、その配合で皆様が目にする本当にたくさんのお菓子が出来上がっています。

それなのにインターネットでマフィンを調べるとあまりにも多くレシピが存在し、どれ1つバターや卵などの配合が一緒ではありません。

つまりマフィンにおいては配合における断固としたルールはなく、製作者がどのように作りたいかで自由に分量を変えることができるということです。
平たく言うとマフィンぽい形であれば何でもマフィンということです。

今回簡単に説明すると、インターネット上に上がっているマフィンのおおよその配合として生地60グラムに対して一番割合が多いのは【】でした。

多くのマフィンのレシピがポマード状のバターに砂糖を入れホイップさせ、人肌位に温めた卵を数回に分けしっかりと入荷するように混ぜる。そこに振った小麦粉を入れ牛乳で伸ばすという方法でした。

これはとてもオーソドックスなシュガーバッター法と言うバターケーキの作り方ですが、同じ作り方でも粉が多ければがっちりした食感になるし、卵が多ければふんわりとした食感になります。


各食材の持っている意味が何なのかがわかると、食べたい食感や味を既存のレシピからどう調整すればいいのかが少しずつ理解できます。


今回相談をいただいた内容は【食べるときにパサついて欲しくない】と言うものだったので、僕は甘みを砂糖ではなく蜂蜜で代用し、液体の糖分が加わることによって肌自体の高さも変わってしまうので牛乳を少なくしました。

実際に考えてから行動に移す。


ある程度料理に知識のある人は、インターネット上のレシピを見て総量に対する各食材の配合を一見するだけでどんな食感になるのかのおおよその見当がつきます。

私たち料理人はとりあえず作ることから始めずに、どのようにゴールに持ってきたいのかを考えてからレシピを考察し作り始めます。


粉が多いと焼き上がりが硬くパサついてしまう。
粉が多いと水分と触れ合う時にグルテンが発生し食感にフワフワが無くなってしまう。
しかしながら粉の量を極端に減らしてしまうとそもそも形が保てずにマフィンではなくなってしまう。

マフィンのふわふわを構成する要素は卵と粉の比率であり、そのバランスが崩れると【ふわふわだけどドロドロ】【しっかりしてるけどパサパサ】とどちらも求めているものではなくなってしまう。

などと頭で考えて作り始めます。

結局僕は、バターはしっかり使う代わりに佐藤の1部を蜂蜜に置き換え、液体の糖分を生地形成の凝固の妨げと考え、その分牛乳を減らしました。
しかしながら牛乳は小麦粉と水が混ざることによって発生したグルテンを抑える性質を持つため、牛乳を減らした分本来できるはずだったグルテンの抑制ができなくなってしまいます。

そこで薄力粉自体を電子レンジで加熱することによってグルテンの量を少し少なくすると言う方法をとりました。

以下に僕のマフィンのレシピを載せてみます。

バター 78.75g
上白糖59.7g
クリームチーズ 33.75g
蜂蜜39.8g
全卵90g
薄力粉112.5g
ベーキングパウダー5.65g
牛乳6g

はじめに言っておきますが、このマフィンのレシピは出来上がった時はとても美味しく、次の日もふわふわの食感を楽しむ事は保証できますが、
きっと作るのがとても難しく、僕以外作れないと思います。

その理由は生地中の水分が多いことで、焼成がとても難しいからです。

生地の水分量が多いので、まずは高温で生地自体の水分の沸騰を利用して生地を押し上げます。
ある程度マフィンの形ができてきたら次は庫内の温度を少し下げ、中まで火を通します。
ここでポイントなのが高温焼成の時間と中温焼成の時間のバランスです。

時間や温度にあえて触れない理由は、オーブンによって癖が違うので焼いてみないとわからないと言うことです。

また生地には今回クリームチーズを加えています。
バターと上白糖でしっかりとホイップしたところに、別のボールでクリームチーズとハチミツをホイップしたものを空気を潰さないように加えます。

卵を入れる前段階にこれをすることによって、クリームチーズのねっとりとした状態と蜂蜜が作用して卵のバターへの乳化を助ける働きをしてくれます。

クリームチーズでなくサワークリームなら尚良いかと思います。
サワークリームは焼き菓子に使うと独特の酸味が消え、そのかわり本当にコク深くなり後味がリッチになります。

実際に作ってみて思うことは

僕はいつもお菓子を作るときに、このように分解して各々の素材の役割をしっかりと定義してからお菓子作りを始めます。

理屈っぽい僕にお菓子作りがとても性に合っているのは、このような理論でガチガチに固めることによって失敗の回数を少なくし成功までの段取りが階段のようにわかるからだと思っています。

たかがマフィンと思っていた少し前とは違い、お客様の要望に沿う形のおいしいマフィンを作ると言うことでさえ本当に難しかったです。

ここで何が言いたいかと言うと、マフィン作りが難しいと言うわけではなく、求めている味を頭を使って考えて実際に完成させると言う事は非常に面倒だと言うことです。

しかしその面倒な作業にこそ実は価値があるので、多くの人はお菓子屋さんでマフィンを買うんだと思います。

おいしいマフィンには必ず理由があります。
僕はお菓子作りには化学調味料は使っていませんが、大手の食品メーカーが作るおいしいマフィンのように、化学調味料を使ってでもおいしさが表現できるのであればそれはそれで1つの正解だと思います。

体に良いものだけを使って作るお菓子がいつも本当においしいとは限りません。

ありふれたレシピやとても身近にあるお菓子でも突き詰めたら何でも研究になるということが今回わかりました。
僕は今までマフィンをなめていましたが、今は全くなめていません。

人がおいしいと思うマフィンはとても手がかかります。
だからこそ通販ではなく、店頭で食べてもらいたいと思うので、そのためにレストランは存在するんだと思います。

コロナが次第に共存の道を歩み始めているのと同時に、飲食業界においてレストランの価値が再定義されていると思います。

今まで当たり前すぎて忘れていた【温かい料理】や【出来立ての味】が恋しくなるからこそ、いまレストランを開く理由が僕にはあると思います。

1人で切り盛りするため1時間に1組しか入れないようなレストランですが、今回ご紹介した【ものづくりのロジック】に触れる機会がこれから先作っていけたらと思います。

長々とありがとうございました。

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働きたい飲食店を目指して目標に進んでいます。