同じ生産者の立場から伴走支援を ―フードカタリスト・土屋仁志―
このnoteでは、FOODBOX(フードボックス)株式会社の活動及びメンバーの紹介、食・農業界をもっと詳しく知りたい方へのお役立ちコラムなどをお届けしてまいります。
今回は、メンバー紹介記事第2弾です!今回ご紹介するのは埼玉県の食・農業界を盛り上げるならこの人!!と言えるほど、経験も実績も豊富な、土屋仁志です!
地方銀行の農業支援担当から、新たなステージへ
―土屋さんよろしくお願いします。先日はFOODBOX懇親会(※1)でお話させていただき、ありがとうございました!
こちらこそありがとうございました。ちょうど自分の所属を固め、FOODBOXとの仕事を開始するなど、この4月からいろいろなことをスタートしたばかりで。
※1 FOODBOXを盛り上げてくれているメンバーの皆さんが懇親会で集まりました!右から2番目が土屋です
―元々銀行員だったところから、畜産の会社に転職されたのですよね。
はい。地銀の農業支援担当として10年半、埼玉県内の農家さん、異業種参入企業など、生産者(FOODBOXでいう「農家さん」)の支援をしてきましたが、今年3月に退社し、2021年4月に株式会社加須畜産に入社しました。
銀行員時代から行っていたこの仕事を、自分自身より納得のいく形で実現していくためです。
―どうして畜産の会社なんでしょうか?
実はそこに大きな意味があって。銀行員時代、生産者支援でたくさんの実績を上げましたし、経験も積ませていただきました。しかし銀行というのは表面上の数字しか触らない仕事なんです。実際の会社の経営や運営面など、生きた数字を扱うことがない。その部分が不足していて、自分の言葉が軽くなってしまっているのではないか…と感じていたんです。
つまり、生産者が実際に感じている悩みや実務を実際に経験した上で、より生産者に寄り添った形での伴走支援をしたい。そのために生産者に近いところに行きたかったんです。
加須畜産の田口和寿社長とは、銀行員時代からお付き合いがあったのですが、私が銀行を辞めるという話をしたところ、一緒にやらないか、というお話をいただいて…。
加須畜産は埼玉県内では比較的大規模な養豚業をしている会社ですが、既にかなり成功していて、社長自身、何か新しいことをやりたいと考えていたようです。
そこで、結論としては、加須畜産の中に「あぐり・ばんく」という新部門を立ち上げて、私がその担当をする形で入社することになりました。
―なるほど、そんな経緯が…。それにしても、すごく理解のある社長さんなんですね!
そうですね。社長は生産者であり経営者でもあるので、私は生産者の実務や考え方を学びながら、社長の右腕として経営をサポートするという、まさに理想通りの働き方が今できています。現在は週1、2日総務、経理、経営関係の仕事をしつつ、それ以外の時間を生産者支援に充てています。
加須畜産の田口和寿社長とともに
―その立場から、FOODBOXもサポートいただいているんですね。
はい。FOODBOXの中村さんとの出会いは昨年の夏頃、大学の後輩に紹介してもらったのがきっかけです。現在は加須畜産がFOODBOXから業務委託を受けてお手伝いをする形をとっています。例えば補助金の申請書類の作成、生産者さんのご紹介などですね。さらに情報交換や、ネットワーク、知見のシェアで協力連携しています。
―もっと前からお付き合いがあったかのように見えますが、意外と最近なんですね。
そう、まだ知り合ってから1年も経っていないんですよ(笑)。とは言え中村さんと私は実は同じ大学の同じ学部学科の出身。私が先輩で中村さんが後輩にあたるんです。そういうこともあって、打ち解けるのも早かったですね。
埼玉県の「フードカタリスト」として、食・農業界を盛り上げる
―あぐり・ばんくの理念を拝見しました。一つは農業界の生産者の伴走支援と企業の農業参入支援。そして農業生産者、食関連企業、異業種(他業種)の繋ぎ役になるという、FOODBOXにとても近い事業をされているという印象でした。
そうなんです。中村さんと知り合う前から、FOODBOXとは考えていることがとても近いなと思っていました。特に、"食・農業界と異業種の繋ぎ役"という部分。しかも繋ぐだけではなくて、触媒となり化学変化を起こすというのは、本当にそうだなと。しっくり来たので、私もフードカタリスト(※2)と名乗らせてもらっています。
※2 「フードカタリスト」についてはこちらの記事もご覧ください
―そうすると、ある意味FOODBOXでなくても、「あぐり・ばんく」で土屋さんの想いは実現できてしまうのではないか、という気もするのですが…。
FOODBOXと関わる理由は、とにかく自分の幅を広げたいと思ったからです。確かに私は、地銀時代からの繋がりで、埼玉県内では一定の知見やネットワークがあります。でも全国規模の繋がりは多くはありません。一方FOODBOXには、より広域的なネットワークがありますよね。
確かに、事業の方向性は近いんですが、物の考え方や進め方は、私と中村さんでは全然違うと思うんです。私は生産者や地域と一つひとつじっくり向き合っていくタイプ。中村さんは広い範囲で物事を起こしていく人。先輩後輩関係なく、この部分で中村さんのことは本当に尊敬しています。私たち2人のネットワークや強みを掛け合わせて、これからもっと大きな物事を起こしていきたいですね。
―地銀でこつこつと繋ぎ役をされてきた土屋さんを、FOODBOXも頼りにしています!
ありがとうございます。食・農業界、あるいは生産者と異業種との繋ぎ合わせは、私自身、得意な方だと思います。例えばOEMで加工商品を作れる業者さんを探して生産者と繋いだり、販売先を見つけて販路を確保したり、といった部分ですね。
私なりにフードカタリストという言葉を捉え直すならば、生産者は生産者の言葉、食品業界は食品業界の言葉を話すので、それを媒介する「通訳」ではないかなと思っています。例えば交渉の場に同席して、お互いの想いや希望をうまく調整できるのが私の強みです。
―銀行員時代からそれをたくさんやってこられたわけですね。
はい。農業向け融資の取り扱い実績は約400件となりました。生産者や食品関連企業等のビジネスマッチングは累計1,000件を超えます。また異業種の農業参入支援の相談も多数受けてきました。
銀行員時代に上級農業経営アドバイザー(※3)という資格もとり、実質私だけが農業部門を担当していたような状態だったんです。
※3 上級農業経営アドバイザー…平成23 年に日本政策金融公庫が創設した制度(詳細リンク)。実務経験と試験で審査される。農業経営アドバイザーの上級資格として、全国でも100名弱しか保有していない資格。
社会貢献とは何か?農業界で考える
―逆に土屋さんが苦手なこと、というか…、これから取り組んでいきたい課題などはありますか。
銀行ではどうしてもできなかったこと、例えばITツールの面などですね。Googleカレンダー、Slack、なんだそりゃ?って(笑)。
銀行って、外部に向けて物事を発信したり、情報をやりとりしたりすることを、極端に制限する場所なんです。でも今は、中村さんに教えてもらいながらこうしたスキルも身につけていっています。これも生産者さんのIT化支援やサポートに確実につながっていくと思っています。
―銀行員時代にやれなかったことに挑戦したい、という側面もおありですか?
そうですね。最初にお話しした数字の面とか。銀行は決算書だけ預かって、その表面上の数字だけで物事を判断する。事業の内容や成長可能性を「事業性評価」という形で評価しようという動きは、あるにはあるんですが、まだまだ不得意なんですよ。
また、銀行がサポートするのは事業の入り口部分だけで、長期的にゴールの部分まで支援し続けるのはやはり難しい側面がありました。農業は結果が出るまでに、3年、5年、10年と長い時間がかかる世界です。私は、生産者が目指すゴールまで伴走支援しきることがしたいのです。
―なるほど。参考までに教えていただきたいのですが、地銀が農業界の生産者や農業参入企業を支援するのには、どんな意義があるのでしょう?
地域の生産者や異業種の農業参入を支援することで、地域に新しい産業が興る。すると、その担い手が増えて、耕作放棄地も減る。つまり地域の活性化や社会課題の解決に繋がるという意義があります。
融資の金額は決して大きくはないのですが、地域の発展は最終的に銀行にも利益が返ってくることですから。しかし、県内農業への貢献という目標は、少し漠然としていたと思いますね。
―今は、繋ぐこと自体が目的というか、もっと直接的ですよね。
はい。あくまでも生産者が主役で、私は生産者が考えるゴールや想いを叶えるお手伝いをしたいですね。
銀行員時代は大きな傘で守られていましたが、一方でそれは目に見えない壁が生産者さんとの間に生まれることにもなっていた。銀行を辞めて、バックグラウンドや信用力は減ったかもしれませんが、壁がなくなったおかげで、FOODBOXをはじめいろいろな方と、銀行員時代以上に一気に繋がりが広がっているんです。
―長期戦になる部分もありますが、やりがいもありますね。
仕事と考えずにやれているので、正直今、毎日が楽しくてしょうがないですよ(笑)。あぐり・ばんく事業をするにあたり、社長が生産者の立場を理解してくれていることもありがたいです。
つまり良い農作物を作っているんだけれども、ブレイクスルーできなくて困っている人を助けるのだから、損得では考えない。売上が伸びた、経営改善で経費が落ちた、という結果が出てからの成功報酬でいい、という方針なんです。FOODBOXの "農家ファースト" と、これも似ていると思いますね。
―最後に、これから食・農業界に貢献するような仕事がしたいと考えている人たちに向けて、アドバイスをお願いします。
今の時代、お金よりも、やりがいを求めたり、社会貢献できる仕事をしたいという方も多いですよね。でもそのためにはまず、自分自身がレベルアップしないとダメです。どこかの組織に所属しているなら、まずはそこで、自分が得意なことをどこまで伸ばせるか。
その上で、ある日突然会社を辞めても、自分自身の力で何ができるか。その組織で出世したとしても、組織というバックグラウンドがなくなったときに、何を残せるのか。そこで残ったものが、自分の本当の武器ですよね。
会社を飛び出して、もっと違う広い世界を見据えて社会貢献したいということであれば、そこまで考えてやる必要があるかなと思っています。
フードカタリスト
株式会社加須畜産CFO兼CSO、「あぐり・ばんく」担当
土屋仁志 / Hitoshi Tsuchiya
埼玉県出身。大学卒業後は金融機関に約15年勤め、農業担当として埼玉県内にて融資、経営改善、農業参入、ビジネスマッチング等にて活躍してきました。日本に100名弱しかいない「上級農業経営アドバイザー」を保有し、農業向け融資は400件以上、生産者と食品関連企業等のビジネスマッチングも1,000件以上と圧倒的な経験・知見を持っています。
一般的な金融機関出身者とは違い、農家さん目線を持ち、現場主義を貫いて伴走支援する姿は、埼玉県内の農家さんファンが数百軒いる事からも支持されています。
融資、補助金、経営改善、農業参入等、お気軽にご相談下さい!
インタビュー・編集
FOODBOX広報部O
出版社の編集から現在フリーに。
FOODBOX広報部アシスタントをしています。
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