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本当の自己肯定感とは『自己』だけではなく『他者』も肯定することだった。【読書日記】世界は善に満ちている

結論。大切なのは「自己肯定感」ではなく「自他肯定感」です。


もしもあなたが

「自己肯定感の本を読んでも、自己肯定感が高まらない」

のであるならば

根本的な原因がわかります。


どうも

あなたのキャリアを失敗させないコンサルタントのタルイです。

週一でnote更新してます。


「自己肯定感」という言葉が使われることが

とても増えました。

本屋さんでも

タイトルの本があふれていますし

ネットでもこの言葉が使われることが多いですね。


今回紹介する

世界は善に満ちている―トマス・アクィナス哲学講義―

の著者の山本さんは

ここ10年ほど、自己肯定感を扱う本が増えた。これらは、ネガティブなことを考えてしまう「心のクセ」を矯正しようとするものも多い。

と警鐘を投げかけてます。

「この世界にはろくなものが存在しないし、ろくな出来事も起こらないし、周りも虫の好かない人ばかりだけども、自分のことだけはとても好きだ」というようなことはありえないと思うのです。

自らの自然な感情を否定することですから

結局それでは「自己肯定感は得られない」と指摘してます。



私が本書を読んだ結論を一言でまとめると

「自己肯定感」ではなく「自他肯定感」こそが大事でした。


つまり

「I am OK. You are OK.」の状態です。


大切なのは

自分を肯定するだけではなく、

「他人」も、そして「世界」も肯定しましょう

ということです。


ではここから感想を書きます。


◆恒例のプロフィールチェックです。


著者の山本 芳久(やまもと よしまさ)さんは

1973年、神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。

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山本さんは本書の中で

「20歳のときにこの書物に出会わなかったならば、筆者の人生観や世界観は全く異なるものになっていた」

とおっしゃってます。


◆トマス・アクィナスってどんな人?

中世ヨーロッパを代表する神学者・哲学者でした。

古代ギリシアの「異教徒」である

アリストテレスらが生み出した哲学を

キリスト教神学のうちに統合し

新たな知の地平を切り拓いたとされる人物です。


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・・・。

トマスさんはちょっと外見が特徴的ですね。


なぜ手に「家の模型」を持っているのだろうか?

副業で建築関係のお仕事をされているかも

が、調べてみましたがわかりませんでした。


その...刈り残しちゃってる髪型は流行ってたのか?

これもわかりませんでしたが

このヘアスタイルをオーダーされた時の

美容師さんのやりきれなさを感じるのは私だけでしょうか。



おぉっといけない!

I am OK.You are OK.

でした💧


調べてわかったこと

トマスさんの主著『神学大全』とは

中世哲学の最高峰とされており

世界史の教科書にも必ず出てきます。


しかし

授業でその内容に触れられることはほとんどないのです。


いわば「読まれざる名著」であるということです。


この『神学大全』とは

日本語訳で全45巻もあるものすごい本で!

さまざまなテーマを扱っています。


そのなかの第10巻が本書の中心的テーマ

人間の感情の動きを詳しく分析する

「トマスの感情論」です。


これは究極の幸福論なのです。


◆トマスは言った「そこに●はあるんか?」


トマスさんの主張です。

「感情をありのままに深く受けとめよ」


怒り、悲しみ、憎しみ、恐れ、絶望…

どんなネガティブな感情であっても

論理で丁寧に解きほぐしていくことで

その根源には「愛」が見いだせるとのことです。

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なんと!

意外なことにトマスの感情論は「愛」が中心なのです。

トマスさんから「愛」の文字が出てくるのは

まさかの展開です!


ここから詳しく書きます。


例えば

あなたには嫌いな上司はいませんか?


いま

その人に対する「怒り」「憎しみ」という

感情が浮かんできましたか?



このままだと会社に行くことすらになってしまいますね。

そこでなんとか「怒り」「憎しみ」の負の感情を抑えようとします。


●ここで多くの方がなされるのが「ポジティブ変換」です。


ここ10年ほど、自己肯定感を扱う本が増えた。これらは、ネガティブなことを考えてしまう「心のクセ」を矯正しようとするものも多い。

著者は断言してませんが

この「心のクセを矯正する」手法とは

ポジティブシンキングなどに代表される

「ポジティブ変換」のことでしょう。


たしかに

ネガティブなことを考えない訓練をするのも

一つの方法かもしれません。


しかし、心に自然に浮かんできてしまう感情を

意志の力によって遮断するということは

本当に可能なのでしょうか?


私は限界があると考えてます。


仮に、もし可能だとしても

それは自らの「自然な感情」を否定しているので

これでは「自己肯定感」は

得られないですよね。



●次に多くの方が「ありのままに受けとめる」ことをされます。

最近流行っている「ありのままに受け止める」


結論は

これも「ポジティブ変換」同様に

限定的な効果なのです。


たとえば

「喜び」を感じたとき

それを抑制したりせず笑ったり

あるいは誰かと「喜び」を共有したりと

ありのままに受け止めるほうが

ますます喜びが増幅されます。


同様に

「悲しみ」を感じたときは

それを無理に否定せず「ありのままに受け止め」

思いっきり泣いたり嘆いたりした方が

むしろ悲しみが和らぐこともありますよね。


では「怒り」「憎しみ」はどうでしょうか?

ありのままに受け止めても

苦しくなりませんか?


この無理に感情を抑えようとすることで

身体に症状が出てしまう場合もあります。


トマスさんはここで

「怒り」や「憎しみ」という感情を

ただネガティブなものとして受け止めるのではなく 


ありのままに深く受け止める


感情を丁寧に解きほぐしていくと

その根源には「愛」という

ポジティブな感情が見いだせるということです。



そもそも

なぜ上司に対する「怒り」や

「憎しみ」という感情が浮かんでくるのか?

たとえば

あなたの大事な取引先を

ぞんざいに扱うからかもしれません。

あるいは

あなた自身の気持ちを

ないがしろにするような言動を

するからかもしれません。

すると

「怒り」や「憎しみ」という感情の根源には

「取引先への愛」「自分への愛」という

ポジティブな感情があるということになります。




もう一つ例を出します。

例えば、あなたが車で通勤途中で

渋滞にハマったとします。

あなたはイライラして

「どんくさいな!」「早よ行けや!」と

感情をあらわにしました。


その感情の根底には、

大事なお客様との約束があるのかもしれません。

あるいは働く仲間を思っての

発言なのかもしれません。


もしもこの場にトマスさんがいたら

きっとこう言って、あなたに気づきを促すでしょう。

「そこに愛はあるんか?」



失礼、

これは大地真央さんのセリフでしたね。


「怒り」や「憎しみ」という感情を

ただネガティブなものとして受け止めるのではなく

それらの感情の根源にある「愛」の存在を確認し

それを大切に育むことが重要でした。


その「愛」を足場にして

はじめて現実世界に立ち向かう勇気や

自己肯定感を得られるのそうです。


◆アリストテレスの4つの「徳」


しかしですよ。

人間そんなに理性的に

自分の感情をコントロールできるものなのか

ちょっと疑問もあります。


トマスさんは

思いどおりにはならない感情の動きが

極端なものにならないように

ある程度適切にコントロールしていく力を

人間は身につけていくことが

できると考えているのです。


それにはアリストテレスの説く「4つの徳」

枢要徳(すうようとく)を身につけることです。

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とくに「節制」を身につけると

欲望をコントロールすることが容易になり

また素早くできるようになるのです。


トマスやアリストテレスは、「節制」などの徳は

「習慣」の積み重ねによって

形成されると考えてます。


もちろん「枢要徳」を身につけたかといって

人生が思いどおりにはなりません。


大切なのは

オール・オア・ナッシング思考にならないことでした。

物事を判断するときに

「正しいか間違っているか」「白か黒か」「イエスかノーか」など

0か100といったように

極端な判断をしてしまう方がいます。

こういった思考は

心配性な人完璧を求める人

自分の評価が低い人などが陥りやすい思考なのです。


「完全に思いどおりになる」と

「全く思いどおりにならない」という

両極のあいだには

その中間的なグレーな状態が

何段階もありますよね。


「人生はグレーゾーンが9割」です。

好きではないがやらないといけないことが

大多数なので

感情の根底にある「愛」に気づき

「4つの徳」を身につけて

自分で主体的にコントロールして

生きていきたいですね。



◆タルイからの提言 「自己肯定感」ではなく「自他肯定感」と言い換えよう!

最後に本書の内容とは別の視点で

自己肯定感を考えてみます。



OK牧場といえば「ガッツ石松」さんですが

心理学でOK牧場といえば「フランクリン・アーンスト」さんです。


彼が提唱したOK牧場とは

人の心は一箇所に留まることなく

①〜④の間を牛のように佇みます。


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①I am OK. You are OK. (わたしも、あなたも よい)

ここで佇んでいる状態を「自他肯定感」と名付けます。

本来の自己肯定感の意味だと考えます。


そして巷に流布している「自己肯定感」がこちら

③I am OK. You are not OK. (わたしはよいけど、あなたはダメ)


これが最近意味しているところの自己肯定感になってないでしょうか

自己肯定感は自分の心だけでは完成しません。

相手があって、世界があって、成立します。


この領域で漂っていると

確実に社会とのつながりが失われますよね。


あの大ベストセラー「嫌われる勇気」も

読解を間違えて「嫌われてもいい勇気」と

曲解されていることがあります。


「嫌われてもいい勇気」なんて「勇気」は

社会には存在しません。


次に

②I am not OK. You are OK. (わたしはダメで、あなたはよい)

④I am not OK. You are not OK. (わたしも、あなたも ダメ)


この領域を漂っているときは

もっと自分の「良い部分」に目を向けて

自分が周囲に「貢献している」ことに

気づいてください。

人間は生きてさえいれば、

必ず誰かの役に立ってます。


コツですが

いますでにあるなかで探すことです。

ありのままとは「有りのまま」

英語だと所有格である「BE」です。

そう、すでにあるもののことです。


ところが自己啓発系のセミナーを要約すると

「ありのまま(BE)」になるために

行動(DO)しろと言ってます。

それは大きな矛盾です。


まるで「幸せの青い鳥探し」をしなさいと

言っているかのようです。

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ありのままを求めて行動するのではなく

いまある自分の世界で探してみましょう。

必要なのは行動ではなく

視点の切り替えではないでしょうか。


次回はさらに「嫌われてもいい勇気」について

社会とのつながりの重要性とトラウマについて書いてみたいと思います。


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最後までお読みいただきありがとうございました。

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