海外における多様なフリーフロム食品

欧米を中心にフリーフロム食品は拡大しており、その規模や種類は日々増えています。今回の記事では、あまり日本では目にする機会の少ない海外のフリーフロム食品について紹介します。


海外における多様なフリーフロム食品の具体例


1 トランスファットフリー


トランスファットフリーとは、油脂を精製、加工する際にできるトランス脂肪酸を使用していない食品のことです。トランス脂肪酸は、摂りすぎると心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクを増大させる可能性があり、肥満やアレルギー性疾患との関連が認められているという研究結果が発表されていますWHO (世界保健機関)は、心血管系疾患リスクを低減し、健康を増進するための勧告(目標)基準として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。日本人の大多数はトランス脂肪酸の摂取量が基準値未満のため、あまりトランスファットフリーの商品は多くありません。

2 カゼインフリー


カゼインフリーはカゼインという乳製品に含まれるタンパク質を使用していない食品のことです。カゼインから生じるカソモルフィンという成分が、言語や聴覚を司る側頭葉に影響を与える可能性があると指摘されており、発達障害の治療ではグルテンフリー食品とカゼインフリー食品を使った食事(GFCF)が提供されています。海外では、牛乳の代替品に豆乳、アーモンドミルクやココナッツミルク、オーツミルクやライスミルク、またそれらを使用したチーズやヨーグルト、バターが販売されています。

3 ラクトースフリー


ラクトースフリー食品は、ラクトースと呼ばれる乳製品に含まれる糖分(乳糖)を使用していない食品のことです。ラクトースを分解できず下痢や腹痛などの症状を引き起こす乳糖不耐症の人でも、安心して摂取することができる乳製品の代替品です。

4 GMOフリー


GMOとは、遺伝子組み換えを表す英語「Genetically Modified Organism」の頭文字をとった略称で、遺伝子組み換え作物を使用していない食品のことです。遺伝子組み換え作物とは、作物から取り出した有用な性質を持つ遺伝子を、別の作物の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせる技術を用いて開発された作物です。遺伝子組み換えによって作物のもつ弱点が解消されるため、増産や労働力の削減といったメリットがあります。その一方で安全性の未確立や生態系の破壊、健康被害につながる可能性といった問題も指摘されています。
1999年にイタリアのスローフード発祥の地として有名なトスカーナ地方のワイン農家によって「GMOフリーゾーン(遺伝子組み換え作物を拒否する地域)運動」が始まりました。

さらに広範囲におよぶフリーフロムフード


1 アニマルフリー


アニマルフリーは原材料に動物製品を一切使用しない食品のことです。こちらは食品だけではなくファッションや医薬品など他の分野でも動物愛護や環境保全という観点から選択する人々が増えています。食品そのものに限らず、その食品の製造、販売、再利用に至るまでの道徳的配慮を行う“エシカル消費”への需要の高まりと共に増えています。

2 ギルトフリー


ギルトフリーとは、「罪悪感がない」「罪悪感からの開放」という意味を持つ食品に使われる言葉です。一般的には、低カロリー・低糖質のスイーツやグルテンフリー、シュガーフリー、無添加の食品など体に優しい食品を指します。さらに、フェアトレード製品など環境保護や人権問題の観点からも、罪悪感なく安心して食べられる食品もギルトフリーに含まれるようです。2010年代にオーストラリアで生まれたギルトフリーの考えは、日本でも注目され始め、認知度が高まっています。

フリーフロム食品の種類の広がり

今回は代表的な海外におけるフリーフロム食品の具体例を紹介しました。海外においては宗教による多様な食文化やヴィーガン、ベジタリアンなど様々な考え方を取り入れた食事法など「自身の食事」に対して個人の価値観が大きく作用しやすい文化的背景があります。食品に関しても「取捨選択」することで自身の考え方や価値観に沿った食事を実践する人が徐々に増えています。その人々に浸透しつつある考え方の1つがフリーフロム、つまり「自分に必要のないものは要らない、取り込まない」という「取捨選択」の「捨」の部分にあたる考え方なのです。



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