〈○○フリー深堀シリーズ3〉そもそもミートフリーって何だろう?

1 ミートフリーとは

ミートフリーとは動物の肉及び肉加工品を使用していない食品のことです。近年、「代替肉」や「プラントベースミート」「大豆肉」という言葉をよく目にすることが多くなりました。いずれも肉を使用せずに肉のような食感や風味を持つ食品のことで、その多くは大豆やエンドウ豆などの植物性たんぱく質を原料に作られています。

2 ミートフリーが広まった背景

疾患や病気等により安全に肉を食べることが難しい、ヴィーガンやベジタリアンのように動物性食品を避ける思想を持つ人々や宗教上肉食禁忌がある人々のように完全に肉食を避けている人々だけがミートフリーを掲げているわけではありません。年々、注目が増している持続可能な地球環境への配慮や動物愛護の観点から少しでも環境保全に努めたいと考える人々の方法の1つとしてミートフリー食品を手に取る人々が出てきています。

そもそも、なぜミートフリーの選択が地球環境に関わるのでしょうか。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの1つにメタンガスがあります。メタンガスが発生する要因の中で大きな割合を占めるのが牛などの家畜が出すげっぷやおなら、またその排せつ物です。牛には何の罪もありませんが、人口増加による畜産業への需要拡大が飼育頭数およびメタンガスの増加を招いています。また、畜産物の生産や輸送の過程で森林破壊や水の大量消費、大気汚染などの環境への影響の可能性も示唆されています。

そこで、ミートフリー食品を取り入れることで、今より少しだけ食肉の消費を減らして少しでも環境負荷を減らそうという動きが出てきているのです。菜食中心の食事に完全に移行するのは難しくても、普段は菜食中心で、時には肉や魚を食べるといった柔軟なベジタリアンスタイルを取り入れる人は、「フレキシタリアン」や「ゆるベジタリアン」とも呼ばれ、その人数も増えてきています。


3 ミートフリーのメリット・デメリット

(メリット)

1 環境保護に貢献できる

“FAOによると、肉の過剰消費国は摂取量を制限するよう勧告される。一方、肉の摂取不足で栄養問題が深刻化する発展途上国では畜産の改善が必要だという。農場から食卓に至る食料システムは、世界の温室効果ガス排出量の約3分の1を占めており、その多くはメタンや森林破壊、生物多様性の損失の主な要因となっている畜産に関連している。”

(『富裕国に肉の摂取量削減を勧告へ、食料面から温暖化対策を後押し 原題:Rich World Told to Eat Less Meat in Food’s First Climate Plan』より抜粋 2023年11月27日 14:53 JST https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-24/S65DF1DWX2PS00)(閲覧日2023年12月20日)

FAO(国連食糧機関)からの勧告にもあるように、食肉の消費量の減少で地球温暖化の対策に貢献するとされています。肉の代わりにミートフリー食品を取り入れることで、わずかでも消費量を減らすことができ、結果としてこれらの環境保全や動物保護の助けになるといえます。


2 植物性たんぱく質の新たな供給源

ミートフリー食品を活用することで、動物性食品の代わりに植物性食品を取り入れ、食事の中での植物性食品の消費量が増えます。例えば、肉に似せたプラントベース食品は豆、小麦や米の穀物などの植物性たんぱく質から製品が作られています。一口に「たんぱく質」といっても、そのたんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、その種類や数、構成する形によって様々です。食材によって含まれるアミノ酸が異なるため、アミノ酸をバランスよく取り入れるためにも動物性と植物性のたんぱく質を摂取する必要があります。プラントベース食品を取り入れることで肉や魚のように植物性たんぱく質を摂取できるため、料理への活用の幅も広がり、より取り入れやすくなります。特に子供を中心に豆、豆製品を苦手とする人には肉や魚のような感覚で食べることができるミートフリー食品は比較的食べやすい食品と言えるでしょう。また、肉製品と比較して脂質の量が少ないため、健康的な食事を意識している人やダイエット中の人に向いている食品です。


(デメリット)

1 ミートフリー食品の価格帯や食味、安全面への不安感

ミートフリー食品はまだ新しい分野の食品であり、価格帯がほかのフリーフロム食品と比べて手頃とはいえないこと、食べ馴染みがない加工製品への味覚や安全性への技術的不信が人々の購買意欲を思いとどまらせる要因の一端となっています。植物ベースの食品を多く含む食事が健康を改善し、腸内細菌叢の組成の変化を誘発することを示唆する研究結果が報告されています。(※1)また、シンガポール食品庁(SFA)やアメリカのFDAおよびUSDAが企業の販売するミートフリー食品について安全性に関する懸念事項がないことを理由に販売を許可したことが公表されています。(※2,3)


※1

Bushra Safdar,1,2 Haochun Zhou,2 He Li,1,* JinnuoCao,2 Tianyu Zhang,1 Zhiwei Ying,2 and Xinqi Liu1,2 Jose Angel Perez-Alvarez, Academic Editor .『プラントベースミートの見通し 現在の状況、消費者の認識およびトレンドの変化』原題:Prospects for Plant-Based Meat: Current Standing, Consumer Perceptions, and Shifting Trends. Foods. 2022 Dec; 11(23): 3770.Published online 2022 Nov 23. doi: 10.3390/foods11233770(閲覧日:2023年12月20日)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9739557/


※2内閣府食品安全委員会 シンガポール食品庁(SFA)、代替タンパク質の安全性に関する情報を公表(2020年12月10日)(閲覧日:2023年12月20日)

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05520480399


※3『歴史が作られた:UPSIDE FoodsがUSDA規制の最終段階を完了し、米国での培養肉の販売を承認』原題:History Made: UPSIDE Foods Is Approved to Sell Cultivated Meat in the U.S. Following Completion of Final USDA Regulatory Step. SOURCE UPSIDE Foods.

https://www.prnewswire.com/news-releases/history-made-upside-foods-is-approved-to-sell-cultivated-meat-in-the-us-following-completion-of-final-usda-regulatory-step-301857015.html


4 日本での広がり

日本では大豆から作られる「大豆ミート」を中心に徐々にスーパーやコンビニでもミートフリー食品が手に入りやすくなりました。また、代替肉を使用した加工品も販売されています。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降はミートフリー食品の中には乾燥状態で長く保存できる食品も多いことから、ストック食品としての需要が高まりつつあります。また、インバウンド需要の高まりからヴィーガンやベジタリアン向けの食事としてミートフリー食品を使用した料理を提供する飲食店も徐々に増えてきました。また、豆製品や麩などを取り扱う企業では“肉に代わるたんぱく質源”として商品展開を行う企業も増えています。

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