〈〇〇フリー深堀シリーズ6〉そもそもファットフリーって何だろう?

1 ファットフリーとは


 ファットフリーとはファット、つまり脂肪が含まれていない、脂肪を使用していない食品のことです。日本では「ファットフリー」という言葉よりも「脂質0」や「無脂肪」という言葉の方が聞き馴染みがあると思います。しかし、ここで注意しなければならないのが栄養成分を対象とした食品表示では、「脂質0」や「無脂肪」が必ずしも脂質の含有量が0.00%を示しているわけではないという点です。日本の食品表示では「100gもしくは100mlあたり0.5g未満の脂質」については「脂質0」「無脂肪」と表記することができます。(※1)つまり、ファットフリーと呼ばれる食品には100gもしくは100mlあたり0~0.5g未満の脂質は含有されているという認識は必要です。

※1消費者庁「栄養成分表示及び栄養強調表示とは」掲載日:2022年5月31日(閲覧日:2024年1月25日);
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/nutrient_declearation/assets/food_labeling_cms206_20220531_02.pdf

2 ファットフリーが広まった背景


 ファットフリーが広まった背景には生活習慣病が健康課題として社会問題となったことが挙げられます。2023年7月にWHOが発表した「脂質及び炭水化物に関するガイドライン」では不健康な体重増加、糖尿病などいわゆる生活習慣病のリスク低減のために脂質の摂取量を成人で総エネルギー摂取量の30%以下にする必要性を再確認しています。(※2)ファットフリーが広がっているアメリカでは様々な食品にファットフリーがあります。例えば牛乳、チーズなどの乳製品、シリアル、調味料、飲料、スナックなど脂質の含有量が多い食品を中心に、脂質の摂取量を減らし、生活習慣病のリスクを低減させるための解決策の1つとしてファットフリー食品が広く普及しているのです。
 また、健康志向に関連してボディーメイクやダイエットにおける食事管理方法の1つとしても活用されています。海外のボディーメイク向け、ダイエッター向けのレシピを検索すると、ファットフリー食品に置き換えて食事の満足感をそのままに、高タンパク・低脂質な料理のアイディアが多く紹介されています。

※2 食品安全委員会 世界保健機関(WHO)、脂質及び炭水化物に関するガイドラインの公表 掲載日2023年7月17日(閲覧日2024年1月25日);
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu06100880294

3 ファットフリーのメリット・デメリット


(メリット)


①    脂質の摂取量を管理する一助となる
栄養素におけるフリーフロム食品の目的は完全な除去ではなく、摂取量の調整および摂取量を減らすことで、摂取過多に起因する疾患のリスク低減を助けることにあります。脂質は身体を形作り、正常に機能するために欠かせない栄養素です。したがって、脂質の摂取量を正常な範囲内にする、体に取り入れる脂質をより良質なものにするという2点が健康な食生活を送る上でのポイントになってきます。この2点のポイントのうち摂取量に関して、ファットフリー食品は食品に含まれる脂質の量が通常よりも少ない食品になるため、いつもの食事の中で置き換えることで脂質の摂取量を容易に抑えることを可能にします。置き換えをするだけでいつもの食事とほとんど変わらないことから、脂質の摂取量を減らす上でのハードルを下げ、生活習慣病のリスク低減につながります。

(デメリット)


①    脂質0を理由にした摂取量の増大
 商品の宣伝文句やパッケージの表現から「無脂肪」または「低脂肪」という表記を「脂質が ない/少ない から無制限に摂取できる」と誤って捉え、ファットフリー食品を含む低脂質食品を逆に食べ過ぎてしまう事態が発生しやすいという点です。(※3)一般食品、フリーフロム食品に関わらず適正量以上を食べることは栄養分の過剰摂取につながり、健康を損なう要因になります。ファットフリーであっても脂質以外の栄養素は通常またはそれ以上に含まれていることに留意する必要があります。

※3 Science Direct “Fat-Free-Food”, J.M. Jones, S.S. Jonnalagadda, in Improving the Fat Content of Foods, 2006” The use of fat replacers for weight loss and control”(閲覧日:2024年1月25日);
https://www.sciencedirect.com/topics/food-science/fat-free-food

4 日本での広がり


 日本でも2015年以降、メタボリックシンドロームやそれに伴う特定検診の普及により、生活習慣病がクローズアップされると脂質に注目した食品が販売されるようになり、脂肪0や無脂肪を特徴とする食品も増えてきました。
 日本ではお酒や牛乳など脂肪分が比較的多い飲料や油脂性食品、スナック菓子などのし好品を中心にファットフリー食品が展開されています。日本は欧米と比較して国民の肥満度の割合が少ないという結果もあるように、脂質に注目したファットフリー食品の展開は諸外国ほど多くないようです。これは日本人が日常的に食べる和食自体が脂質の低い食事であることも理由の1つといえます。しかし、近年ではコロナ禍以降、健康志向の人やボディーメイク、ダイエット需要の拡大により、「高たんぱく低脂質」というワードとともにファットフリー食品を含む低脂質食品への関心が高まっています。

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