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砂の惑星を歩いた。

「DUNE/砂の惑星」に足音つけさしてもらった時の歩記。

響かない足音を響かせろ。

今回の「デューン/砂の惑星」は、「ブレードランナー2049」の時と監督も同じ、サウンドチームも同じ。要求、審査は前回同様かなり厳しく、チャレンジに湧いたりボツって凹んだり。最初に音響監督から入念なコンセプトの説明があり、やり過ぎくらいテストの繰り返し。砂は綺麗に聴かせるのがとても難しいからなあ。

砂はサラサラ、シャラメはキラキラ。

完全に乾ききった砂漠の砂は踏み固まらない、サラサラとどこまでも流れる、のだそうで。この感じをどう出そう?普通の砂だと音量、形もちょっと足りないし、どうしても踏み固まっちゃう。スタジオの床にシーツを広げ、砂を敷いて一週間乾燥させたりもしてみましたが、やはりジャッ、ジャッ、みたいなヘビー感。なので量り売りの粉屋さんからいろんな顆粒、穀物類、粉末を買い付け、サンドブラスターに使う研磨用の粉塵も取り寄せました。社長の暖炉からかき集めた灰も使いました。新築のスタジオは次第に砂丘と化していきました、、。(スタジオ増設記については他項ご参照下さい。https://note.com/foleygoroppo/n/n726399dabff5)

使用した米は100kg。

砂、米、鳥のエサ、粟、片栗粉、小麦粉、アズキ、胡麻、チアシード(南米原産の果実の種)、灰、研磨剤。組み合わせ色々、音も色々。

あれこれ試して、シーンごとにいくつかのコンビネーションが出来上がってきました。

砂と米のミックス

砂と灰のミックス

砂と研磨剤のミックス

砂と片栗粉のミックス

丸めたベッドシーツに砂ふりかけ

大量の鳥のエサと米

砂と鳥のエサのミックス

大量の鳥のエサの上に砂

砂とチアシードのミックス

灰とチアシードのミックス

米の上にチアシード

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つぶつぶを踏みしめて。

砂の深さを出すには米をベースにすることに決定。(お米さんには足を乗せる前に「ごめんなさい」)米だと踏み固まりはしないのですが、表面のサラサラ感が足りない。そこで米の山を作り、その上に違うテクスチャを足して鳴らすパターンを多用しました。上から足す、というのは米の山の上に一枚シーツを敷いて、その上に違う素材を乗せるという方式。ぐぐっと少し沈む感じは米から、靴底が直接触れる、靴の周りに盛り上がる感じは上の素材から、という足音が可能になります。買い足して使用した米は100kgを超えました。

重なるテストの結果、一番素敵な音をくれたのは米の上にチアシードを置く組み合わせ。チアシードは決して踏み固まらないし、細かいけれど一粒一粒がしっかりしているのでサラサラという音もちゃんと聴かせてくれました。お値段はちょっと張りましたが(2万円くらい買ったかな、、)、その成果あって、結果は上々、コメと組み合わせた足音では、足の周りの砂が盛り上がったり、蹴られて散ったりするところもちゃんと表現できました。ちゃパシャりーん、みたいな。

大抵の砂漠のシーンでサラウンドスピーカーからアンビエンスとしてにずっと聞こえている

シャララーーーーーーーーーーー、

ていう音、あれはベッドシーツの上でチアシードを延々とシャラシャラやったやつです。宇宙船や着ている物、テントなどに常に砂が当たっている音も延々とやりました。

あっちもこっちも砂、砂、砂。

砂漠のシーンだけではなく、屋内の床面にも砂、砂、もっかい砂。砂という「生き物」が少しずつ侵食する感じ、がだんだん面白くなってくる。丁寧にふるいにかけた砂と粉を全ての物に薄く敷いて踏む、掴む、転がす、。石が敷き詰められた床の上では、灰を多用。

不穏な音たち。

この作品中、木の床が登場するのはワンシーンだけ。修道女集団ベネ・ゲセリットのシーン。黒ずんだ床の板と箱が不穏な雰囲気を醸す場面。暖かいはずの木がこの場面では殺意の冷たさ。現実と予知夢の狭間をギシ、ギシ、。

ハーコネンがその傍若無人さを発揮するシーンで、なんか食ってる。グロい生物の煮付けみたいなやつをジュルジュル言わせて、喘ぎながらとにかく不快に。ピザのスライスをびしょびしょに水に浸してかぶりつきました。そりゃあ食うの不快でしたよ。

こんなに砂場遊びを必死でやったのはいつ以来かな。耳の穴から砂出ました。続編もできるそうで、楽しみです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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