UXデザイナーにクリエイティビティは必要か?
三瓶:UXデザイナーって「デザイナー」って入ってるじゃないですか。これって日本だと色々誤解の種であることが多い気がするんですけど。
土屋:そうですね。誤解されます。
三瓶:UXデザイナーって役割が幅広いですし、それこそ僕と土屋さんの間では「チーム内のコミュニケーター=通訳的な存在」みたいな会話もしましたけど。
何かもう少しUXデザイナーの仕事を表すいい言葉はないだろうか?とか考えることもあったりするんですけど、最近一周して、「デザイナー」でもいい気がしてきてるんですよね。
土屋:ほほう。それはなぜ?
三瓶:チーム内での通訳みたいな役割とか、コミュケーター的な役割を担うには、デザイナーって適しているよな、と。いわゆる国内での「デザイナー」のビジュアルデザインなりUIデザインなりのスキルセットって、いわゆる「可視化」スキルなので、開発チーム内で出たアイデアやロジックを誰もがわかる形にできるポテンシャルを持っていると思います。
企画職だのエンジニアだのをいろいろ巻き込んでいくにあたって、「それってこういうことですよね」ってさらっと目に見える形にする人であるべきだなと。
土屋:確かにそうだね。プロトタイピングとかまさに。
三瓶:自分たちのアイデアを可視化する能力ってすごいコミュニケーションスキルなんですよね。でもUIデザイナーみたいな人ってUIを作るのが好きだと思うんですけど、これが「コミュニケーションスキルだ」と強く認識してやっている人ってめちゃくちゃ多くはないと思っていて。どちらかというと、デザイナーってあまりそういうのをやりたがらないし、苦手と思っている方も多い印象があります。少なくともちょっと前までは。
土屋:うん、そういう印象。
三瓶:長谷川恭久さんと前に話したときに話題に上がったんですが、アメリカの大学とかではデザインの専攻でもファシリテーションの授業があるらしいです。
土屋:でかいね、それは。
三瓶:そうなんですよ。だからもう向こうではデザイナーって絵を描く人だけではなくて、コミュニケーターとしてのデザイナーなんですね。
そこの文脈だと確かにUXをやる人って、UX「デザイナー」というのはそういう意味があるんだな、ってちょっと思ったところはあって。UX系で活躍されている方を見渡しても、やっぱりデザイナースキル持っている方多いのは、たまたまそういう経路というのもあるかもですが、なくても成り立たなかったのではないかなと。
土屋:私、三瓶さんの言っていることにほぼ同意ではあるものの、一方で少し違うことを思っていて。
デザイナーとかエンジニアの人って、表現者だったり、クリエイター的な要素が強くて、形にするというところにこだわりがあったり、インプットに対して自分でアウトプットのコントロールが利くというところで強みを発揮する人が多い気がするんですよ、私の中では。
三瓶:なるほど、確かにそういうイメージはありますね。
土屋:そうしたときに、ファシリテーターとかコミュニケーターみたいな人って、結局相手次第な部分があったり、相手に合わせて自分がやることを変えないといけないことも多くあります。それってクリエイター的にはそれなりにストレスなんじゃないかな、と思うんですよね。
UXデザイナーが、おっしゃる通り、ビジュアライズという強い能力を持っているのは武器になるんだけど、もしかしたらコミュニケーターとかファシリテーターみたいなことを生業にしているPdM(プロダクトマネージャー)とか、企画界隈の人たちがそのビジュアライズ能力を持つことのほうが、近道なんじゃないかと思ったりするんですよね。そういう意味で、UX「デザイナー」なのかな?と違和感を感じたりもします。
三瓶:確かに、それでいうと、現場ではそうなっているケースも多くあると思います。今僕が話したデザイナー、UXデザイナーというのはどちらかというと海外の話なのかもしれませんね。
土屋:そう、私もそれはわかる。
三瓶:デザイナーってそもそも向こうだと設計する人という意味も結構強くて、日本で言うと、それはデザイナーというより、どちらかというとデザインもできるPdMみたいなイメージに近いのかもしれないと思っていて。
今土屋さんがおっしゃったとおり、PdMとかディレクターとか企画職みたいな人たちこそ「UXデザイナー」の要件に近いのでは?という話は僕もそもそも思っていたことではありました。それが一周して、「あれ、でもデザイナーでもいいかも…」とも考えてみた、というのが今回の冒頭でした(笑)。
土屋:なるほど。私、最近PdMの本とかも遅ればせながら読んでいるんですけど、その中でも基礎スキルとしてUXデザインが書いてあるんですね。それ、すごく腑に落ちて、プロダクトとかプロジェクトマネジメントをしていた人にUXデザインみたいな力をインストールできるのが一番の近道なんじゃないかなと。それこそ、チーム内の通訳として。
三瓶:そうですよね。元からそういう役割ですもんね。つなぎとめる役割だから。
土屋:つなぎとめる役割だし、自分1人では何もできないということをPdMって許容しているわけじゃないですか。作るのはエンジニアだし、最終のデザインを作るのはデザイナーだし、っていう中で、どう取りまとめていくかみたいなことに苦労していた人が、UXデザインというコミュニケーションフレームワークを手に入れると、使い勝手がよくて、なんなら絵が下手でも、そういう人が叩きを作るのは流れとしてとても自然でいいなと、いう。
三瓶:そうですね。それはそうだと思います。実際絵が描けなくてもやれる、みたいなので、そういうキャリアを選択する人は増えていっているような気がしますしね。
土屋:ちなみにこの流れでもう一つ疑問に思っていることがあるんですが、UXデザイナーにクリエイティビティって必要だと思います?もしUXデザイナーがコミュニケーターやファシリテーター的な役割だとすると、本人自身のクリエイティビティを発揮しなくても、それをチームとして促すということでもいいのかなとも思うんですが、可視化する能力以上に創造性を持つことについてはどう思われます?
三瓶:それで言うと、今回の話でUXデザイナー=ファシリテーターとは思ってないですね。というのは、ユーザー体験をよくすることを考えたとき、コミュニケーションなりファシリテーションなりを工夫して、そこにあるものを潤滑にしていくだけでは絶対よくなっていかないと思っているんですよね。
たとえばユーザーはこういうことを言っていて、観察したらこういうことありました、だけでは何も生まれないと思っていて。ユーザーに聞いたり、ユーザーを観察したりする前後には必ずこうじゃないかな?何でこうなんだろう?という仮説立てや問いがすごく大事だと思っていて。
結局、ユーザーって答えを持ってないじゃないですか。ユーザーが思いもしなかった解を導き出すのが理想なわけで。だからこそ、自分の人生経験や、日々の観察とか、見聞きしたものを組み合わせて、きっとこうじゃないかな?とか、こうしたらどうだろうか?とか、仮説やアイデアを生み出す必要があると思います。それを基にUXリサーチとかして、はじめてユーザーが思いもよらなかった良い体験を提供できる、と思っているので、それってクリエイティビティ以外の何者でもないな、と思ってます。
土屋:実は私もこれという答えを持っていて質問したわけじゃないんですけど、三瓶さんの意見を聞いてみて本当にそう思います。UXデザイナーもだし、PdMもそうだと思っていて、何かを生み出すのを恐れてはいけないなと思います。純粋にプロジェクトの管理だけをして、上手くゴールに向かわせようとするだけのすごく狭義なプロダクトマネジメントでは良いものは作れないなって。
三瓶:純粋にプロジェクトの管理をする人ってどちらかというとPjM(プロジェクトマネージャー)ですよね。「PM」として一緒くたにされがちですけど、PdMはプロダクトの責任者としてプロダクトの本当の価値提供を考えるのが本筋なのかなと思います。そういう意味ではUXデザイナーと変わらない印象もありますが、多くの場合、PdMのほうがよりビジネス要件が絡んでくるんでしょうね。
土屋:そうですね。たとえばマネージメントまでやるかどうかの差とか。
三瓶:まあどんな職種であれ、クリエイティブに楽しく仕事したいもんですね。雑ですけど(笑)。
土屋:雑だね!(笑)
👥 話していた人
土屋:フライング・ペンギンズ CCO / UXイノベーター
三瓶:フライング・ペンギンズ 新規事業担当 / コンテンツストラテジスト
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フライング・ペンギンズでは答えのない問いやとりとめのない対話を積極的にしていくことが、デザインの質を高めると考えています。今後も社内外問わず、UXデザインや開発にまつわる話をざっくばらんにしていきたいと考えていますので、ご一緒いただける方いましたら是非ご一報ください。
🐧 Flying Penguins Inc.
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