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【詩】スクラッチアート 作:結花(ゆいか)

目の前にある 真っ黒なキャンバス

何ものにも染まらない黒
まるで夜の闇のよう

普通 キャンバスと言ったら白
真っさらなところに
色とりどりの点や線を足して
絵を描いていく

黒いキャンバスに
いったい何を足して描いていけばいいの

するとその時

偶然かすれて
削られた黒いキャンバス

現れた小さな一つの点

あっ
一番星見つけた

色がついてキラキラしている

さあ
次は何だろう

ドキドキ
ワクワク

あっ
また星

と思ったら
今度はシュッと放射線状に線が流れてゆく

流れ星だ

さあ
次は

ドキドキ
ワクワク

あっ

いや流れ星

次は

ドキドキ
ワクワク

また流れ星

しばらく流れ星が続く

ふと
キャンバスの全体を見てみる

すると
そこに描かれていたのは

なんと
大輪の花をたくさん咲かせ
夜空を彩る花火だった

その後も点や線が次々に削られていく

ドキドキ
ワクワク

現れたのは
私たちの住む街や自然

人はこの世に生まれ
彩り豊かな毎日を過ごし
自分の描く未来に向かって歩んでいく

明るい色のような
楽しい 嬉しい経験もあれば
茶色や灰色 黒のような
辛く苦しい経験 悲しい経験もする

いろいろな経験をして
たくさんの色がぐちゃぐちゃに混ざり合う

気づいたら
いつの間にか
黒に染まってしまっていた
なんてことがある

また
美しい彩りのキャンバスが
ある日突然
一瞬にして真っ黒に染まってしまうこともある

まるでハケで殴りがきをされたり
塗料のバケツを誤ってこぼしてしまったかのように

真っ黒なキャンバスのようになってしまった心

何をすればいいのか分からない
どこにも進めない

そんな時は休もう

思いっきり
この暗闇を感じて味わっていい

味わい尽くしたら
きっと何かが見えてくる
偶然でも 偶然じゃなくても

真っ黒な心の中から
自分の好きなこと
得意なこと
大切なもの
掘り起こしてみない

最初はたった一つの小さな点かもしれない
でも集まれば
線にも 面にもなる

黒いキャンバスにだって
絵を描くことは出来るんだ

新しく足していくだけが人生ではない

時には削って
引いて
必要のないものは思い切って捨てる

そして残った
あなたにとってかけがえのないものを
大切にしながら生きるのだって人生だ

今は真っ黒な暗闇でもいい

必ず一番星が現れる

焦らず
ゆっくり
無理をしない

あなたの心にある
ドキドキ
ワクワク
を思い出してみよう

これらの気持ちでいっぱいにすれば
キラキラと輝く 彩り豊かな人生になっていく

真っ黒な部分は少し残ってしまうかもしれない
でもだからこそ浮かび上がる美しい絵

今日も私は目の前の黒いキャンバスを
少しずつ静かに削っていく

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【解説】
サムネイルのスクラッチアートはマイケルさんからご提供いただきました。
マイケルさん、ご快諾いただき、ありがとうございます😊

※初版は全て句読点がついていました(現在は2版)。

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