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ジブリ最新作『君たちはどう生きるか』を観て、どう生きるか問われてしまった人の感想


※このnoteは7月に公開された映画、『君たちはどう生きるのか』のネタバレを含みます。


私は、9月の13日に観に行った。その時期は、私はちょうど異動が決まったタイミングだった。

それは前置きとしておいて、ジブリはすごい。話がわかるとか、感情がわかるとかそういう感覚でジブリに触れてこなかった。小さい時から気づいたらあったジブリ映画に対して、解釈や話の筋がどうとかいうようりも、心の底に訴えかける何かに心を奪われて来たように思う。ーー普遍的な「何か」をものすごく感じるが、それは決して言葉にならない「何か」。

新作映画は、「観る」という程度の言葉では表せない体験をさせてくれた。「観る」というよりも私はあの世界を「浴びた」。

荒波のシーンで、私は海そのもののような「何か」を感じた。それとほぼ同時に心の調整が悪い時によく見ていた津波の夢が心にやってきた。何か悪いことが起きるような気がして、私は怖くて上映中そのシーンで泣いた。

映画を見てから1,2ヶ月が過ぎてから、私は、学術雑誌である『現代思想』の「総特集ー宮崎駿『君たちはどう生きるか』をどう観たか」を少し読んだ。
真っ先に読んだのは、檜垣立哉「白日夢の構造『君たちはどう生きるか』と吉本隆明」。

今回のジブリ最新作の話の筋を簡単に説明すると、現実世界で母の死と、新しい家族を受け入れられない主人公が、異世界に行って帰ってくる話だ。

ジブリ新作『君たちはどう生きるか』は、異界譚だ。

異界譚は白日夢の一種であり、白日夢はこの世と向こう側の世界をつなぐ。子供たちが、夕暮れに経験する不思議な異空間への感覚を白日夢として、吉本隆明の記述を引用しながら檜垣は語る。(檜垣 2023 p174)

「個人の心性がギリギリの危うさに差し掛かる、まさに『薄暮れ』の場面を紡ぐ…『高度な白日夢』それは『醒める』ことを前提としない危険を備えている」(檜垣 2023 p175)。今回のジブリの最新作もそのような生死と密接なギリギリのところの白日夢を描いていると檜垣は評価している(檜垣 2023 p175)。

これは、全部前置きで、本当に私がドキッとしたのは、この先の檜垣の記述である。

このような世界の裏側の死と隣り合わせの異世界であるが、「そうした裏面が不意に析出してしまったとき、改めて問われるものは『君たちはどう生きるか』以外のなにものでもない。(檜垣 2023 p177)」と檜垣は述べる。
この記述を読んで私は、海の波のシーンで『どう生きるか』問われてしまったんだと思った。そして私は、その問いに頑張って答えようとした。9月の中盤から心身ともに疲れ果ててしまい、そんな中異動が決まり、恋人と別れ、どんどん追い詰められていた状況に対して私は必死に応えようとした。

あまりに体調が悪い日は仕事を休んだり、仕事を頑張れるときは数字を意識しながらモチベーション高く働いたり、気を紛らわせようとマッチングアプリをしてみたり、退職して美術を本格的に学び始めようと意気込んでいたり、私は生きようとしていた。だけど、『どう生きるか』、突然析出してしまった大問題に、私は答えきれず、その威力に圧倒されてしまい、結果入院することになった。

今は退院しているが、これからのんびりゆっくり、『どう生きるか』答えを作っていこうと思う。

数ヶ月に渡って、『君たちはどう生きるか』について考え、感じた感想は、こんなへんてこりんに終わろうと思う。読者の皆様も、どう生きますか。


参考文献

檜垣立哉「白日夢の構造『君たちはどう生きるか』と吉本隆明」『現代思想』10月臨時創刊号:総特集ーーー宮崎駿『君たちはどう生きるか』をどう観たか、青土社、2023年10月、p173-177

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